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中ボス2

 そうなるとこの魔物、無敵じゃないのか?

 魔法・物理攻撃が一定以上の威力になれば反射を貫通するとかあるのか?


 ……いや、ここは『ダンジョン』だ。何かしらちゃんとした攻略方法があるはずだ。

 こんな遊び心しかない概念(ダンジョン)で、完全に攻略不可能な魔物を出すはずがないし、火力で貫通が答えのナンセンスなギミックは作らないだろう。


 一つ、とっかかりになりそうな、気になることとしてあるのが接触の光。

 あの魔物は反射を行うたびに、意味深な、色付きの光を放っていた。

 これまでの反射は全部で3回。確か青、赤、青と今まで光っている。


 「うぉっと、こっち来んのかよ!」


 思考している僕をよそ目に、青銅鎧の魔物はレオンに狙いを定め、大剣でつぶしにかかる。

 レオンは反撃を行うことはできず、避けるか、魔防壁によって攻撃をしのいでいる。


 ……今がチャンスだ。


 僕は崩落によって地面に散らばっている瓦礫の破片を拾う。

 そしてそれを、青銅鎧の魔物に向かって思いっきり投げつけた。


 事前に『身体強化魔術(フィジカル・ブースト)』で強化済みの肉体から投擲されたそれは、『物理攻撃』に成りうる。


 瓦礫の破片は青銅鎧の魔物の背中に接触、赤い光が放たれ反射される。


 ……検証終了。サンプルは計4回で断定はできないが、魔物は今のところ、物理攻撃に対しては赤い光、魔法攻撃に対しては青い光を放つことで反射を行っている。

 つまり、攻撃の種類によって反射の方法が違う。

 わざわざ方法を分けるということは、赤い光を放つ方法では魔法攻撃は反射できず、青い光を放つ方法では物理攻撃を反射できないと考えるのが自然だ。


 となると、攻略方法は物理攻撃・魔法攻撃を同時にあてること。

 それで、どちらか一方の攻撃は通るのではないか。


「ローラさん! もう一度ギガンテスで、あの魔物に攻撃することはできるかい?」


 クリスを信頼しているのだろう、ローラは疑問を持つことなく僕の呼びかけに応じ、即座に詠唱する。


「ギガ君、もう一度頑張って! 『治癒魔術(ヒーリング)』!」


 吹っ飛ばされ、壁に打ち付けられていたギガンテスは治癒魔術により、復活する。

 そして再び、青銅鎧の魔物に立ち向かう。


 ここからはタイミングが大事だ。ギガンテスの打撃と同タイミングで僕の魔術が当たるように計らなければならない。


 さっき放った火球生成魔術の発射速度から考えると、詠唱のタイミングはギガンテスが打撃直前で足を踏み込むタイミング……今だ……!


「『火球生成魔術(コロナ・ジャベル)』!」


 魔物に向け火球が発射される。

 ギガンテスの拳と大剣が接触し、そこから赤い光が放たれるのとまさに同時に、火球が魔物の腹部に着弾する。


 よし……!成功した!


 と思ったのもつかの間、腹部との接触部からも青い光が同時に放たれ、拳も火球も反射される。


 ギガンテスは先ほど同様の形になり戦闘不能。

 僕はなんとか自らの火球を回避した。


 どうやら部位ごとで反射の方法を変え、それを同時に行うことも可能らしい。

 よく考えたら光は接触部から発生していたし、僕とミスティアの魔術の同時攻撃(今よりはタイミングにずれはあったが)にも、それぞれで反射を行えていた。接触部ごとに反射は発生し、同時に行える数の制限も、物理・魔法の制限もないのだろう。


 う~ん。いよいよこの魔物最強か?

 全攻撃反射、制限なしってチートすぎるだろ。

 中ボスでこれって、最終層のボスはどんな強さなんだ?


 いや、能力の割には魔防壁や回避でそこまで苦労なく攻撃をしのげるあたり、やはりギミックボス臭い。

 この広間のどこかに隠しスイッチがあって、それを押すと反射が解除されるとか?

 ただ、この広間には壁と床しかない。見る限り怪しそうな場所はないし、壁や床を全部触って探すのか?それだったらクソゲーだな。


「なるほどな。そういうことか! クリス!」


 ここまで様子を見て、息をひそめていたレオンが何か確証を得たかのように動き出す。


「『武器生成魔術(クリエイト)』」


 彼が詠唱すると、かざしていた杖が多層の魔法陣に囲まれながら、銃の姿に形を変える。

 遠目からだが、銃の形状としてはリボルバーに似ている。

 確かノアが使っていた魔術と同じだ。ノアは杖を刀に変形させていたが、レオンは銃のようだ。


 そして彼は懐から、()()()()()()6つを取り出し、銃に装填した。


「まあこれも確証はないが、クリス(お前)みたいに一つ一つ試していくしかないよな!」


 彼は銃に手をかざし、再び詠唱する。


「『6属性付与魔術(エンチャント・シックス)』」


 詠唱後銃がぼんやりと光り、発光色を6回変え、次第におさまる。


 「くらえ!」


 レオンは銃を魔物に向け、発砲する。


 発砲された弾丸は炎を纏っていた。そして、弾丸のスピードは魔術が放たれる速度よりもかなり速い。

 その速さもあり、魔物は大剣でそれを防ぐことはできず、弾丸は胸部に到達する。


 発砲の瞬間、この弾丸が反射されたらレオンは避けられるのだろうか……と心配したが、なんと、弾丸の反射は起こらず、初めて魔物をひるませる。


「…………!?」


「おっ。俺が正解を引いたようだな。でも、火属性は効きが悪いか?」


 立て続けにレオンは冷気を纏った弾丸、雷を纏った弾丸を発砲する。

 2発とも命中し、雷を纏った弾丸が特に効いたのか、魔物は膝をつく。


「雷が弱点か。ちゃあんと俺の辞書にインプットしとくぜ!まあ次会うかは分からねえがな!『雷属性付与魔術(チェンジエンチャント・サンダー)』!」

 

 再び銃が発光する。今回は黄色の単色だ。


 レオンは雷を纏った残り3発の弾丸を撃ち込む。


「…………!」


 それを食らった青銅鎧の魔物は金属的な音を出しながら崩壊していく。最終的に各部分が飛び散り、無惨な残骸として広間に散乱した。討伐成功だ。



 ……なるほど。恐らくだが、今回レオンの弾丸が反射されなかった理由は、弾丸が2つの性質を持っていたからだ。彼が装填していた実弾、これは紛れもない物理攻撃だ。彼はそれに魔術を付与し、魔法攻撃も同時に兼ね備えた。物理と魔法、両方の性質を持つ弾丸が着弾したことで、物理か魔法かを判定して行う反射の仕組みがバグを起こし、攻撃が効いた。これが青銅鎧の魔物攻略の回答なのだろう。


 物理攻撃と魔法攻撃両方、そして付与魔術により複数の属性を扱うことができる魔術師。

 あらゆる魔物が出現する『ダンジョン』において、これはかなりのアドバンテージだ。

 レオンもまた、ダンジョン攻略に適した魔術師と言えるだろう。

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