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Sランクダンジョン

 ダンジョンはエリムの町から北へ進んだ先、海に面した岩壁のすぐ近くにひっそりと存在していた。


 晴天。さざなみの音が聞こえ、潮の香りがする。


 ダンジョン近くでは数名の帝国騎士が待機していて、僕が魔導車から降りると一人が駆け寄ってくる。


「お待ちしておりました、先進魔術学科御一行様」


「どうも、こんにちは」


 僕は軽く会釈し、挨拶する。

 そして顔を上げると、帝国騎士の困惑の表情が見えた。


「……おや。そちらのお嬢さん、体調がすぐれないようですが大丈夫でしょうか」


 ミスティアが顔面蒼白、死にそうな顔をしながら魔導車から降りてくる。


「し……死ぬ……」


「大丈夫〜?よしよ〜し」


 死にそうなミスティアの背中をローラがさする。


 無理もない。ここまで乗っていた魔導車はお世辞にも乗り心地が良いとは言えなかった。道中舗装されてない道が多く、学院近くや町の中を走るのと雲泥の差だった。酔い止めもあまり効果はなさそうだ。


「……おや、お一人足りないようで。確か4人で攻略される予定とお聞きしていましたが」


「……え?」


 振り返ると確かに1人足りない。


 僕は魔導車に再度乗り込んだ。


「ぐぅ〜〜」


「……」


 さっき、降りる時起こしたはずなのだがまた寝ている。


 レオンは昨日夜、遊び尽くしたらしく、宿に戻ったのは午前4時ごろだったらしい。ちなみに出発は午前7時だ。


「レオン君起きて!」


 僕が肩を揺さぶると、レオンは目を覚ます。


「うぉお!クリス。すまんすまん」


 彼は目覚め、降車準備を再開する。


 再び魔導車を降り、帝国騎士の方を向くと顔が引きつっていた。


「すみません……ちょっと休憩させてください」


 ♦︎


 帝国騎士にテントを設営してもらい、そこにミスティアとレオンを寝かしつけた。


「ローラさん、僕は先に準備してくるよ」


「あいあい〜」


 ダンジョンの入り口は下に下る階段になっている。

 まだ入りはしないが、階段前から行えるクリスの役割があるのだ。


 僕は階段前に立ち、出力特化魔道具(リゾナンスロッド)をかざす。


 この杖は初めて触った、スクールバックの中に雑に入っていた杖と大きく形が異なる。初めて触った杖は長さ30cmほどの細い棒切れだった。だがこの杖は長さ80cmほどの頑丈な作りで、先端に魔導結晶が付いている。

 魔導結晶は結晶内で魔力を共振させ出力を高める役割を持っていて、より高度で高出力な魔術が使えるようになるのだ。


 クリスの出力特化魔道具には、最初の杖には無かった魔術が大量にインストールされていた。


 そしてそのラインナップから、クリスが本当に得意としている魔術……

 それが『時間』と『空間』の魔術であることが判明していた。


「『地図生成(マップ・リアージュ)』」


 呪文を唱えると杖が階段内を照らし出し、しばらくして、ダンジョン内の構造が目の前に投影される。


 投影された情報は記録され、いつでも映し出すことが可能になる。


 ダンジョンの地図生成。

 おそらくそれがダンジョン攻略においての、クリスの最初の役割である。


 ♦︎


 到着から30分ほど経過し、ミスティアの酔いが治ってきたところでダンジョン攻略を開始した。


 数名の帝国騎士に敬礼と共に見送られながら、僕たちはダンジョンに続く階段を降りていく。


 僕はダンジョンマップを投影しながら、先行する。


「クリス、今回のダンジョンはどのくらいのボリュームだ?」


「階層は全部で10階層。ボスフロアは5階層と最終層の2つだね」


「なるほどな。じゃあボリュームはそこまでないな」


 ダンジョンの階層数は様々で5階層以下のものもあれば、50階層以上に達するものもあるらしい。


 今回は比較的階層数が少なめだが、難易度としては『Sランク』。これは、出現するモンスターが相当強いだろうことが予想できる。


「てことは魔力の温存はあんまりしなくてもよさそうだね〜」


 階段を降り遺跡内第一階層に到達すると、ローラが杖を掲げ詠唱を始める。


「『魔導生命体白狼召喚(サモン・フェンリル)』」


 地面に浮かび上がった魔法陣から、白く輝く巨大な狼、フェンリルが現れる。人が乗れそうなくらい大きく、神々しい見た目をしている。


「おいおい、そいつを召喚されたんじゃあ俺らの出番は無くなっちまうな」


「そだね〜。中ボスまでは大体この子に任せていいと思うよ」


 フェンリルは僕の前に立ち、警戒しながら進んでいく。


 なるほど。雑魚の殲滅に加えて、罠があった時に先んじて受ける、あるいは回避する役割もあるのか。

 初見殺しの罠を人間が踏んでしまっては一発アウトだけど、魔導生命体であれば潰しが効く。


 となると、サモナー系魔術師(と判明した)のローラはダンジョン攻略に確かに適任だ。


「あ!魔物だ!」


 遺跡の曲がり角から、体長70cmほどの蝙蝠のような魔物が5匹飛び出してきた。


 僕が声を上げたと同時、いやそれよりも先にフェンリルは魔物の方へ俊敏に駆け出し、魔物達を爪で割く、あるいは牙で噛み殺した。


 ダンジョン初戦闘はフェンリル1匹により一瞬で片付けられた。


「うお。すごいなぁ。本当に何もしなくても大丈夫そうだね」


 僕は感嘆する。

 前回のドラゴン退治クエスト同様何もしなくて済むんじゃなかろうか。僕の役割が地図生成だけで終わってくれるとありがたい。


「ローラ、もう1匹出して私を乗っけさせてくれないですか」


「さすがに魔力が勿体ないからダメだよ〜。それにミスティが乗ったらまた酔っちゃうでしょ」


「……確かに。そうかもです」



 その後、ダンジョンの構造を把握し最短距離で進んでいることもあり、少ない接敵回数で2階層目の半ば当たりまで到達する。


「本当に何もしないで行けちまってるな。これじゃただ涼しいだけの洞窟だぜ」


 レオンがフラグを立てた数秒後、先行していたフェンリルが突然立ち止まる。


「うーーーばうっ!」


「っ!?危ない!みんな下がって!」


 フェンリルの咆哮の直後、地面が激しく揺れ、崩れ落ちていく。


 僕の掛け声により咄嗟に全員後ろに下がり、落下を逃れたが、崩落の中心にいたフェンリルは奈落の底に落ちてしまった。


 最終的に50mほどの大穴になってしまい、先に進めなくなってしまった。


「クリス、他のルートはあるか?」


「いや、3階層への階段に進めるルートはここだけだね。他のルートで今みたいなトラップが作動して、ダンジョンの構造自体が変わることがあれば別だけど……」


 ここで、前世で培ったゲームの知識を思い出す。

 こういう時は大抵どこかに隠しスイッチがあってスイッチを押すと橋が生成されたり、あるいは透明の床があってそこを渡って進んだりするんだ。もちろん上で言ったようなケースもあるけど。


 一先ず透明な床がある説を確かめるため、僕は砂埃を振り撒く魔術を使う。

 するとビンゴ。大穴の何もない空間の空中に砂が乗っかり留まる。


「みんな!どうやらここは、透明な床を渡って進めるようになっている。この床を慎重に渡れば−–」


「『氷結晶場生成魔術フリーズ・ステージ)』」


 得意げに話す僕の言葉を遮るようにミスティアは詠唱する。


 詠唱後、ミスティアの前方に魔法陣が発生し、そこから氷の塊が吹き出してくる。そして氷の塊はこちらと50m先の道を繋ぐ氷の橋を生成した。


「クリス、何言ってるんですか?そんな怖いこと出来ませんよ!落ちたらどうするんですか!」


 僕の透明の床を慎重に進む案に、ミスティアは怒りながら反論する。


「……そうだね。ごめんよ。冗談だよ」


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