第8話 白瀬による会社案内……?
「おはよう。芹ちゃん!」
「……おはようございます」
明るく挨拶する白瀬に明らかに毛嫌いしている様子の芹。芹にとって2日目の社会人生活を迎えていた
京達のオフィスの前の廊下で3人は話し合っていた
「えっと……今日からここの仕事に関して色々と教えていくから頑張って覚えるように」
「……分かった」
「昨日の約束忘れてないか?」
「うっ……そうだった……えーっと……わかりました」
昨日の夜。京と芹は二人で話し合い、決まりごとを作った
それを紙に書いて部屋の壁に貼った
・料理は芹の担当
・買い出しと掃除は京の担当
・生活資金は京が全て負担すること
・お互い帰る時間を報告すること
・会社ではちゃんと敬語を使うこと
・同居していることは内緒にすること
・京の性処理はしないこと ←これ厳守!
と、内容はこういったものだ。芹の母が来るまでの短い間だけの同居生活だが、ルールはあった方がいいだろう
まあ性処理しなくていいというルールにはすごく反対されたが……
「とりあえず今日一日は白瀬がお前につきっきりで教えてくれるから頑張れよ」
「よろしくね!」
「え゛っ⁉︎」
いつもの声とは違い芹から野太い声があがる
「い、嫌です!京さんが教えてくれればいいじゃないですか!」
「いや……俺はもう一人の男の新入社員の方教えることになってるしなぁ」
「ならせめて他の人で!香奈宮先輩だけは嫌です!」
二日間同居して、芹はわがままは言わず、言われたことはちゃんと聞き入れ、なおかつ遠慮がちな性格だということは京は把握していた
そんな性格の芹がこれだけ嫌々言うのだ。相当嫌なのだろう
「……社会人なんだから我慢することも必要だ。これから嫌な場面なんていっぱいあるぞ?それを全部嫌って言って回避するのか?」
「そ、それは……でも……確かにそうですね……わがままを言いすぎました……ごめんなさい」
反省した様子の芹。非を認め謝ることが出来る。これも社会人にとっては大事なことだ
「まあなんだ……白瀬は仕事になればしっかり丁寧に教えてくれるから大丈夫だ……多分」
保険として多分と言っておいた
「じゃあ俺は自分の担当の子の所行ってくるからしっかり教えてもらうんだぞ」
「……はい」
京は芹の元から離れ、オフィスの中に入っていった。そして白瀬と芹。廊下には二人だけだった
「さてと……芹ちゃん?」
「は、はい……」
「とりあえず会社を見て回りましょうか!」
「えっ……は、はい!」
私に対しての脅しとか罵倒とか、さっきの一連の話についての文句など言われるのかと思っていた芹だったが、白瀬は意に介していないようだった
「入社式の時はオフィスと休憩場所以外何も見てないでしょ?だから私が会社の案内をしてあげます!」
白瀬の会社案内が始まった
「ここが食堂!最安値はざるうどんの280円!最高値はフカヒレスープの5600円!」
「高っ!」
「----ここが男子トイレ!女子は入っちゃいけません!」
「なんで紹介したんですか……」
「----ここが喫煙ルーム!未成年の芹ちゃんは入ってはいけません!」
「だからなんで入れない所紹介するんですか!」
「----ここは社長室!中では機密事項とかいっぱいで重要な仕事をしてる……と思いきや社長が秘書さんといかがわしいことをする為の部屋です!」
「そんなこと言わなくていいですから!」
「あ、でもある意味機密事項の仕事はしてるね!性こ----」
「もういいですから!早く戻りましょう!」
オフィス前の廊下に戻ってきた。白瀬の会社案内はスリリングであまり参考にならないものだった
「どうだった?会社の内装はこれでよくわかったんじゃないかな?」
「もうちょっと使うような場所の案内をして欲しかったです……」
「まだ見てない所はまた今度ね。とりあえず会社案内も終わったし、そろそろ仕事の内容とか教えるね!」
白瀬はオフィスに入り、芹もそれに続いて入った
「とりあえず芹ちゃんの席はここよ」
三列に並んだ机の左列の1番奥の席に案内された芹。オフィス内を見渡すと、右列の1番手前の席で京が芹と同じ新入社員に仕事を教えていた。どうやら京の席は芹の真反対側にあるようだ
京と離れてしまったことに少しがっくりとしていると
「コラ!白瀬!」
と後ろから低音の怒声が聞こえた
「京に近づきたいからって自分の席を勝手に変えようとするんじゃない!」
怒っていたのは部長だった。どうやら白瀬は自分の席を芹の席にし、芹の本当の席を自分の場所にしようとしたらしい
「すいません部長!でもそろそろ席替えを……」
「学校じゃないんだから席替えなどない!ちゃんと栁内の席に案内しろ!」
部長のお叱りを受けて、渋々芹を案内する白瀬
「ここが芹ちゃんの席ね……くっそぅ……」
芹の席は京の前だった。お互い机の仕切り越しに顔を見合う場所だった
「はぁ……作戦失敗か……」
白瀬が小さい声で呟いた。どうやら芹には嘘をつくことはあるようだ
「とりあえず仕事用の資料取ってくるからリラックスして待ってて!」
白瀬は自分の席に資料用の紙を取りに戻った
「あの人本当に仕事はちゃんと教えてくれるんですか?」
向かい側にいる京に芹は疑問を呈した
「……多分」
京はまた保険をかけたのだった
読んでくださっている皆様。突然ですがありがとうございます!
第6話を更新してからブックマークが「二桁乗ったー!」と喜んでいたらいつのまにか三桁に……驚きを隠せないでいます笑
私的には短めの話を複数話投稿するという形になると思うのでこれからもよろしくお願い致します!