第82話 例外の二人……?
「「……ん?」」
白瀬の発言に二人は首を傾げた
「え?違うの?」
「違いますね」
「「んん?」」
二人はさらに首を傾げた
「だってでも……え?認めてましたよね?」
「ううん。認めてないよ」
「「んんん?」」
これ以上倒せないほど首を曲げる二人
「何かしらの方法で引き裂くって言ったじゃないですか⁉︎」
「ああ〜……うん。言ったね」
「手を借りるしかないってとも言ってましたよね⁉︎」
「ん〜……まあちょっと個人的な理由があって」
「個人的な理由?」
白瀬は頬をポリポリと掻きながら個人的な理由を話した
「実は、ちょっと物語の悪役みたいなのに憧れてて……こんなチャンスめったにないなぁって思って悪役を演じたんだ」
よく恋愛物のドラマや映画を観る白瀬。特に昼ドラなどでいるような悪役に憧れを抱いていたらしく
「でも……ちょっと調子に乗りすぎちゃった……」
と、申し訳なさそうに白瀬は言った
「な、なら辰馬の情報をすぐに集められたのはなぜだ?事前に知ってたからじゃないのか?」
「知ってましたよ。事前どころか、香織さんが自治体に加入する時にはもう知ってました」
その時点で知っていたということは、白瀬はその時から京と香織の関係を知っていたということだった
「何事も情報が大事です。なのですぐに調べさせてもらいましたよ。まあでも、二十年近く前の情報を得るのは一苦労でした。おかげで三日もかかりましたよ……」
二十年前の情報。しかも二十年前は今、住んでいる街ではなく、遠く離れた所だったのにも関わらず、三日で情報を集めきってしまう白瀬の情報収集能力
分かっていたことだが、白瀬のストーカーとしての能力は常軌を逸していた。ーー褒められる能力ではないが……
「なので、あの時点で知っていた情報を京先輩に提供した。ただそれだけです」
京があの人の正体が白瀬であるという考えに至らせた根拠は晴らされた
「ーーならあの人とは誰のことか……って考えてますね?」
「……ああ」
白瀬は京の思考を先読みし、そして京の疑問に答えを提示した
「簡単ですよ。美穂さんです」
白瀬の答えは、京が想定から排除した人物だった
「いや、それはありえなくないか?」
「どうしてですか?」
京は美穂ではないと仮定した理由を説明した
「ーーなるほどなるほど……確かに京先輩の言うことにも一理ありますね」
「そうだろ?だからーー」
「ーーでもですね。それはまず前提が間違ってるんです」
白瀬はコーヒーを一口すすった
「赤坂京保護自治体は全体が、京先輩に対して災事が降りかかるようなことは絶対にしない。なぜなら自治体メンバーは全員、京先輩のことが大好きで崇め奉る存在だからです」
もはや一部の人間からは神様扱いの京
「でも、例外が二人いるんです」
ここで、芹がはっと思い出した
「美穂さんと瑠奈さん‼︎」
芹は東我謝姉妹の名を挙げた
「そうそう。二人は別に京先輩の事を何とも思ってないんですよ」
同性愛者の二人は、京に対して好きという感情を抱いていなかった
「だからわざわざ京先輩を隠す理由がない。なのでこの二人のどちらかってなるんですが、瑠奈さんはそもそも、辰馬さんに情報を与えた所でメリットがない……ということで美穂さんってことになりますね」
「美穂さんが情報を売るメリットは?」
「うーん……あの人は何考えてるかさっぱりわからないですからね……何かしらの狙いがあるのか、それともただの嫌がらせなのか……私にも分かりかねますね」
白瀬でさえ、美穂は謎だらけの人物。問いただそうにも連絡先は既に違うものへと変えられ、今どこにいるかもわからない
「でも、あの人はメリットとか関係なしに行動を起こしたりする人なので、多分辰馬さんの言っていたあの人は美穂さんで間違いないと思いますよ」
あやふやな点もあるが、辰馬に情報を与えたのは美穂……これは確定で良さそうだ
「……分かりました。だけどーー」
芹が机を叩いて白瀬の肩を力一杯掴んだ
「紛らわしいことしないで下さいよ!」
芹は悪役のフリをした白瀬に怒っていた
「いだだだだっ‼︎で、でも!私が疑われた理由をちゃんと聞いて、それを弁明しないと、私が違う違う‼︎って言っても二人とも信じなかったでしょ?」
「うっ……」
芹の力が弱まった
「結果的に事実も知れたし、私も憧れてた悪役を演じれたしWIN-WIN的な?」
反省の色を見せない白瀬
「最低です‼︎私がどんな気持ちでいたかも知らずに‼︎」
「こ、こっちだって二人に疑われた気持ちを考えてよ‼︎意外と堪えたんだからね‼︎」
京は二人に落ち着くようにと促すが二人は止まらない
二人の文句合戦は約十分程続いたーー




