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俺に告白してきたのは元カノの娘でした  作者: 三折 佐天
最終章 嘘であって……
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第77話 もう見れないよ……?



「……」



京と白瀬は会社へ一緒に通勤した。始業時間まで15分。まだそれほど人は集まりきってはいなかった



自販機で購入した缶コーヒーを開けて飲み始める京。顔色が悪く、少し眠そうにしていた



「また眠れていないんですか?」

「……まあな」



ここ二日程ちゃんとした眠りにつけていない京。理由は簡単で、芹との事に悩み、眠れなくなっていた



「芹は香織のとこに戻ったんだよな?」

「置き手紙にはそう書かれていましたけど……」



京は、ほっ……と息をついた。二人の仲が戻ってくれて良かったと心底安心した



机に突っ伏す京。少し目を閉じていると、机の上がガンっ、と音を鳴らしながら少し揺れた



目を開けると、そこには先程飲んでいた缶コーヒーが中身が戻った状態で開かれていた



「どうしました?寝不足ですか?」



京の目は一気に覚めた



「芹……」

「はい。芹ですよ」



隣に立っていたのは、スーツ姿の芹だった



「おはようございます。()()()



芹の京の呼び方は今まで通りだった



「……おはよう」



だが、京は目を合わせようとしない



「……香奈宮先輩もおはようございます」

「うん。おはよう芹ちゃん」

「あ、泊めていただいてありがとうございました」

「ううん。香織さんと仲直り出来たみたいで良かった」



白瀬は芹と普段通り会話を展開していたが、京はまだぎこちなかった



「……京さん」

「ど、どうした?」

「お昼休み、時間頂いてもいいですか?少しお話ししたくて……」

「あ、ああ……分かった」

「……ありがとうございます!」



芹はそのまま、自分の席へと戻った



「……あー。さすがにお昼は二人きりにしますね」



気を利かせた白瀬が京にそう告げた



「……そうしてくれ」



京は不安になりながらも、白瀬にそう答えた



ーーお昼休み。結局仕事が始まってからは芹が京に対して話しかけることはなかった。仕事が始まる前に、しばらく休みが増えていたことを社長、部長、社員達に謝罪していた



「……京さん。屋上でご飯食べませんか?」



お弁当を二つ見せて、屋上に誘う芹



「……わかった」



二人は屋上に足を運んだ



ーー屋上には人がおらず、二人きりだった。元々常時解放している場所なのだが、なぜかめったに人が足を踏み入れない場所だ



「はいどうぞ。京さんの分です」

「……ありがとう」



芹から渡されたお弁当を受け取る京。包みを取ると、2段重ねのお弁当が姿を現した



中には唐揚げや卵焼き。ザ・お弁当といったおかずがぎっしりと詰まっていた



「いただきます」



お箸を持ち、淡々と食べ進める京



「……美味しいですか?」

「……美味い」



芹が問いかけ、京が一言返事を返すだけ……初めて会った時よりも会話の数が少ない



「……私ね。決めたんです」



と、芹が唐突に本題を切り出した



「今まで通り、京さんの隣で歩んでいくために努力するって」



芹の言葉に京が反応を示さなかった



「……それは娘としてか?」

「違うよ。娘じゃなくて、一人の女として」



京の眉がピクッと動いた



「……ダメだ」



京は小さな声で言った



「……どうしてです?」

「単純だ。俺達が親子だからだ」



京は食べ終わっていないお弁当の蓋を閉め、手に持っていた箸をお弁当の上に置いた



「親子では結婚出来ない。それぐらいわかるだろ?」

「どうしても結婚しないといけないんですか?」



芹は物怖じせずに京の言葉に対して返答する



「そういうわけじゃないが……」

「愛し合った二人のゴールが、結婚じゃないとダメなんですか?」

「……」



芹の言葉に言葉を失う京



「子供が欲しいって言われたらどうにも出来ないですけど……それでも、京さんと一緒に居られるならなんだってしますから!」



俯く京に芹は訴えかけた。芹の今の覚悟を京に全てぶつけた



「……俺はもう、お前を一人の女の子としては見れないよ」

「……っ⁉︎」



京の答えは、芹にとっては残酷だった



「……そう……ですか……」



そう言われてしまうのではないかと、覚悟していた部分はあった。だが、それでも……



ーー芹の心が壊れるのは容易かった……



芹は自身のお弁当箱に蓋をし、包みに入れた



そして自分のお弁当箱だけ持って、その場を去った……



「……あーあ……泣かせちゃったなぁ……」



芹の去り際の涙を京は見てしまった



「……でもこれが、芹にとって一番だよな……」



京は置いていたお弁当を再度食べ始めた……



「……しょっぱいなぁ……ご飯に塩なんて入れなくていいのに……」



止まらない涙と共に、ご飯を食べ進めた京だった……

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