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俺に告白してきたのは元カノの娘でした  作者: 三折 佐天
最終章 嘘であって……
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第76話 電源つけないで何してるの……?



「……はぁ」



香織は洗濯物を洗濯機に放り込み、大きなため息を一つついた



精神が参っていた香織は、今日仕事に入ってなくて良かったと心の底から思った。こんな状態では、まともに仕事など出来ない所だった



「……はぁ」



今度は掃除機をかけ始めた。だが……心ここに在らず状態の香織は、掃除機に電源が入っていない事に気づかずにかけているので当然ゴミが吸われるはずもない



洗濯機も、スタートボタンを押していないので、洗濯されているはずもなく……



いつもしている家事が不備だらけになっていた



機能の果たしていない掃除機をかけ続ける香織



ーーそこに、部屋の鍵が開く音がした



鍵の音が聞こえた香織は扉の方を見ると、そこには芹が立っていた



「……電源つけないで何してるの?」



香織の奇行に戸惑う芹



「……芹‼︎芹ぃー‼︎」



香織は大きな声をあげながら、芹に抱きついた



「おわっとと……危ないよぉ」



香織に抱きつかれ、体勢が崩れたが、なんとか持ちこたえた



「芹ぃ……芹ぃ‼︎」

「……とりあえず座ろ?話したいことがあるの」



香織をなだめながら、いつも食事をするテーブルに腰かけた。座る場所もいつもと同じ場所だ



「……ごめんなさい。昨日は帰ってこなくて心配かけちゃって……」

「そんなこといいのよ!私こそごめんなさい……」



芹と香織はまず謝罪から入った



「お母さんが謝ることないよ。だって知らなかったんでしょ?私が京さんの子供だって」

「……うん。でも、私がちゃんとそこら辺の知識さえあれば……こんな事にはならなかった……」



知識というのは、血液型の話だ。香織は血液相性で生まれる子供の血液型が決まることを知らなかった



「だから大丈夫。私も知らなかったし。むしろ、あのヤンキーの人が、そんなこと知ってることの方が驚きだったし」



と、芹は香織を責めることはなかった



「それより聞いてほしいことがあるの」



少し笑っていた顔を引き締め、真剣な表情の芹



「私ね……お父さんのこと……ううん。京さんとのこと、諦めるつもりはないの」



芹の言葉に香織は驚く素ぶりは見せなかった



「……血が繋がってる。その意味は分かってるよね?」

「もちろん分かってる」

「結婚も出来ないし、子供も産めないのよ?」

「……うん」

「世間の目もある……それでもいいの?」

「……覚悟してる」



香織の言葉をしっかりと受け止めている様子の芹



「……そう。なら頑張りなさい」



香織の答えに、芹は驚いた様子を見せた



「……いいの?」

「止めてもやめないでしょ?芹が頑固なのは私が一番分かってるから」



香織は呆れた顔をしているわけではなく、優しい母の顔をしていた



「ありがとう……お母さん!」



芹はガバッと香織に抱きついた



「もう……まだまだ子供ね……」

「こんな姿を見せるのはお母さんの前だけだよぉ」



芹と香織は、久しぶりに親子の時間を楽しんだ。たわいもない話を延々と続けるだけの大事な時間を……



「ーーもうこんな時間……」



と、芹は席を立った



「どこか行くの?」

「うん。香奈宮先輩の家」

「……そう」



香織は少し寂しげな表情を浮かべた



「じゃあお母さん。()()()()!」



芹の言葉に香織は寂しげな表情から一転、笑顔になった



「……ええ。ご飯を作って待ってるわね」

「はーい!」



芹は家を後にし、白瀬の家へ向かった



「ーーまだ帰ってないか……」



渡された鍵で家に入った芹。家の中は暗いまま。白瀬はまだ帰ってきていないことを意味していた



自分の荷物を纏める芹。といってもほとんど手ぶらで白瀬の家に転がり込んだので、ポケットに全部収まった



「置き手紙だけして…….よし!」



芹は感謝の言葉と、自身の家に帰ることを書いた紙を机に置いて部屋を出た。鍵はポストに入れておこうかとも考えたが、万が一のことが無いように、明日返すことにした



ーーエレベーターでマンションを下りる芹。芹の乗るエレベーターは一階に到着した



扉が開くと、そこには……



「あ……」



仕事終わりの京がエレベーターを待っていた



「あ、仕事終わったんですか?」

「え?あ、ああ……」



京は少したどたどしい口調になっていた



「そうですか!じゃあ私はお母さんが待ってるので帰りますね!あ、明日はちゃんと出勤します!迷惑かけた分、頑張ります!」

「そ、そうか……頑張ろうな」

「はい!じゃあ京さん!また明日!」

「お、おう……」



芹は家に向かって駆け足で走っていった……



「ーー京先輩!置いてくなんてひどいですよぉ〜……ってあれ?どうかしましたか?」

「えっ?あ、いやなんでもないんだ。気にしないでくれ」

「……?」



「ーー明日からも頑張るぞぉ……京さんは誰にも渡さないから!」




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