第66話 菜由の中で……?
「これとかどうだ?」
「あ、これいいかもです!」
インテリアショップに訪れた三人。白瀬のお目当ての物は、置くタイプの小型の照明器具だ
「じゃあこれに--」
「ちょっと待って!」
と、京の選んだ物を手にした白瀬に、菜由が待ったをかけた
「それよりこっちの方が良いと思うの」
菜由が選んだのは、縦長の大きめのライトだった。対して、京のはスタンド型のライトだ
「こっちの方が明るく照らせるし、値段もさほど変わらないみたいだし……どう?」
「うーん……確かにオシャレで値段もそんなに……よし!こっちにします!」
「……え?あれ?」
菜由のイメージでは、京が勧めたものを買い、他の人の案など聞かないイメージがあったが、あっさりと菜由の選んだ方をレジに持っていった……
「ま、まぁ兄さんが選んだ方を選んでないし、邪魔は出来たの……かな?」
もはや妨害といっていいのか怪しいが、とりあえず菜由の企みは成功した
「お待たせしましたー!じゃあ次行きましょうか!」
「おう。あ、ほら」
「……?手なんて出してどうしました?……あっ!まさか私と手を繋いで--」
「重たいだろうから持ってやるよ」
「はい。そうですよね分かってました」
あからさまにがっかりする白瀬から強引に買い物袋を取りあげ、右手で持った京
「下着の方は自分で持っとけよ」
「……優しいなぁ。やっぱり京先輩は優しいですよ。荷物を持ってくれるなんて」
「いや……誰でもやってることだと思うが……」
「京先輩〜‼︎」
と、白瀬は京の腕に抱きつこうとするが、京は華麗にかわした
「なぜ避けた⁉︎」
「身体が勝手に動いた」
「もはや本能レベルで⁉︎」
こんなやり取りは日常茶飯事。だが菜由には、京と白瀬がカップルのように見えた
おてんばな女と、クールな男のカップル。菜由の目にはそう映っていた
「次はここです!」
次は香水専門店の店にやってきた
「どんな匂いの物が欲しいの?」
「二種類欲しくて……甘ーい匂いの物と、爽やかな感じの匂いの物を」
甘ーい匂いとなると、バニラやキャラメルのような匂いの物。爽やかな匂いは柑橘系の匂いだろう
「いつも使ってるやつは買わないのか?」
「……私がいつも同じ香水使ってるって知ってたんですか?」
「ん?そりゃあまあ……嗅ぎ慣れてるしなぁ……」
「やっぱり京先輩ったら私のこと大好きですね!女の子の匂い覚えてるなんてぇ!」
「あー、もう帰ろ。この電気も道中に捨てよっと」
「ごめんなさい嘘です。そうですよね嗅ぎ慣れてますもんねそりゃあわかりますよね」
早口で謝罪する白瀬
「……で、いつものは買わないのか?」
「実は、その香水が販売終了しちゃいまして……新しいのを探してるんです」
白瀬が今まだ使っていた香水は、優しくふんわりとした匂いだった
「そうなのか?いい匂いだと思ってたんだが……」
「あ、嗅ぎます?実は今日付けてきたので最後なんですよ」
「うーん……じゃあ嗅いでいいか?」
「どうぞー。ここにかけ過ぎたので、ここなら結構匂いすると思いますよ」
と、白瀬は京に手を出した
「手首辺り、結構匂いしません?」
「あ、確かにするな」
白瀬の手に、鼻を近づけて、匂いを嗅ぐ京。その姿はまさにカップルだった
「……あれ?意外とお似合い……ってダメダメ!私は芹ちゃんを応援するって決めたでしょ!」
白瀬と京の関係を見て、決心の揺らぐ菜由。自分が思っていたよりも、白瀬は魅力的で、そして京自身も毛嫌いしている様子もない
女性を苦手になった時の反応を知っているからこそ、自然体で話している京を見て、白瀬は兄さんに相応しいのでは?と思い始めたのだ
「菜由ー。お前のオススメは?」
「ふぇっ!」
「ふぇって……どうした菜由?」
「あ、いやなんでもないの!で、どうしたって?」
考え事に集中しすぎて、変な反応をしてしまった……
「いや、俺と白瀬は香水に詳しくないからさ……良いのがあったら教えてやって欲しいんだ」
「前使ってたやつは、友達のオススメだったやつを使ってただけで私も詳しくなくて……」
「あ、ああ……なるほどね」
コホンと咳払いをし、菜由はオススメの香水を教えた
「甘い匂いならバニラエッセンスみたいな匂いのこれかな。ちょっと値は張るけど、匂いの持続性もあるからオススメ。爽やかな匂いならこっちのライムの香りのするやつがオススメかな。値段も安いし、気持ちもフレッシュになれるよ」
と、詳しく解説する菜由。若かりし頃の菜由は香水を買い漁るほど、香水好きで、詳しく解説する事が出来るレベルになっていた
「……あ、良い匂い!」
「俺も結構好きだな。この匂い」
菜由のオススメした香水を嗅ぐ二人。そして……
「決めました!菜由さんオススメのやつにします!」
と、即決した白瀬は香水を手に、レジへと向かった……
「……あの子、私が選んだやつしか買ってないんだけど」
「菜由のセンスが良いからじゃないか?」
「私もまだ若い子と同じ感性を持ってるって事だね」
「まだ30ちょいだろ。若い若い」
今回の事で、菜由の中で、白瀬へのイメージが良い方向へと傾いたのは、言うまでもない……




