第64話 これからのこと……?
「じゃあとりあえず、いくらか決めていきましょうか」
宴会騒ぎも終わり、今後について話し合う五人。鷹斗と時雨は二階に上がっていた
「まずは、京先輩の家からですね」
家……というのは、もし時間をおいてテレビ関係者が京の家に戻ってきた場合、今回のように対応出来るか分からない。少しでも見つかるリスクを下げるのならば、引っ越しは必須だった
「あの家気に入ってたんだけどなぁ」
「兄さん、十数年住んでたもんね」
実家と同じ時間過ごした部屋に愛着がないわけがなく、京はしみじみしていた
「私の方で新しいマンション候補を探してきました」
そういうと、2つの紙を並べた。そこには家の立地、駅からの時間、間取り、そして階層が書かれていた
「まずはこちらです!6階建ての4階で、間取りは今、京先輩が住んでる部屋とほとんど変わらないです!あと、使わないと思いますが、駅からも結構近いし、コンビニもそれなりに近いですね」
「ふむふむ……」
「おー。京さん。ここは結構いいんじゃないですか?」
「そうだなぁ……」
部屋数は違うものの、間取り図だけ見れば、今の部屋に似通った部分はある。違和感なく過ごすのならばこれだろうか……
「そしてもう一つはここです」
紙に書かれた内容を見ると、不自然な点がいくつもあった
「マンションじゃなくないか?」
「はい。一軒家です!」
「なんかもう既に車とかあるけど……」
「あ、それ私の親のやつですね!」
「……表札に香奈宮って書かれてるけど?」
「そりゃ私の家ですからね!これから京先輩は私の家に来て婿修業をーー」
「却下だ」
「なんでっ⁉︎」
心底驚いた様子の白瀬。逆になぜいけると思ったのか……
「あ!もしかしてお父さんのこと気にしてます?大丈夫ですよ!なんとか説得するので!」
「まだ話通してないのかよ!」
「ま、まあちょっと怖いですし……」
「ならやめとけ。どうせ却下だから」
「そんなぁ〜……」
いじける白瀬。とりあえず住むところは一つ目のやつに決めた
「じゃあ次は……芹ちゃんと香織さんね」
機嫌を戻し、次は栁内家のことについて話し合った
「とりあえず引っ越し……って言いたいところですが、あまりお金に負担かけらないですよね?」
「……そうね。あんまり余裕はないわね」
引っ越してきてから約4ヶ月程。今現在の収入源は芹のお給料のみの栁内家
以前から貯めていた分に余裕はある。香織も京に借金を返すため、少なめだが、収入源が増える。だが、それでも痛い出費に変わりはない
「私の考えですが、栁内家は引っ越さなくても良い……とは思ってるんです。もし仮に香織さんや芹ちゃんが見つかっても、「最近引っ越してきた」といえば、ごまかせるので」
見ただけで噂の男性と理解される京と違って、『母娘で暮らしている娘の方が噂の男性の彼女』という情報しかないため、ごまかしが効く範疇のものではあるため、わざわざ引っ越す必要はないと白瀬は考えていた
「もちろん、安全面を考慮するなら、引っ越した方がいいです」
「……そうよね」
「私はお母さんの決めた方に従うよ」
香織は少し悩んだ様子を見せた。そして、少しの間があき、結論を出した
「……私達は引っ越さないことにするわ。お金も貯めないといけないし」
と、栁内家は現状維持で決定した
「……そうですか。では、次の議題に移りましょうか」
あっさりと次に進む話。だが、京は理由は分からないが、何故か少し心の中でモヤモヤしていた……
ーー話し合いは進んだ。これからのテレビ関係者への対策や、赤坂京保護自治体の今後の京への接触についての方針など、色々話し合った
「……決めることはこれぐらいでしょうか」
話し合いを始めて30分。仕切る白瀬がしっかりしているおかげでスムーズに終わった
「あ、社長からの命令で、京先輩は来週の月曜日まで休みとのことです」
「えっ?なんで?」
「「たまにはゆっくり休め」って言ってました」
今は水曜日。土日は元々会社全体で休みだが、合計して約四日間の休みを頂いた
「休みならもうたくさんもらったが……」
「「ずっと気を張った状態を休みとは言わん」とも言ってましたね」
「うぐっ……」
確かに暇で寝転がってテレビを見たりしていたが、どこか見つからないだろうか……見られていないだろうか……と気を張っていた。社長にはお見通しだったようだ
「……と、いうことで私も木曜日と金曜日は休み取りました‼︎」
と、高らかに白瀬は宣言した
「は、はぁ⁉︎」
「ふっふっふ……芹ちゃんごめんね。貴方が仕事で頑張っている間、私と京先輩はイチャイチャ遊んじゃって……」
「か、香奈宮先輩……自分だけ京さんが休みになる事を知って……!」
「ふふん!いいでしょう?羨ましいでしょ?」
と、芹を煽る白瀬。芹は「ぐぬぬっ……」と、口にしながら悔しそうにしていた
「え……出かける前提なの?」
「え……もしかして出かけてくれないんですか?私今回結構身体張ったのになぁ……京先輩のために頑張ったんだけどなぁ……お礼ぐらい欲しいなぁ」
「うっ……分かったよ……」
「やった‼︎」
と、嬉しそうにはしゃぐ白瀬
「それじゃあ明日!一時に京先輩のマンション前で!」
それだけ言い残し、白瀬は鞄を持ってルンルン気分で帰っていった……




