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番外編 毎年恒例のバレンタイン……?



ピンポーン



と家のベルが鳴り響いた



「んっ……なんだこんな時間に……」



真っ暗な部屋で携帯画面で時間を確認する。時間は0:32と表示されていた



すでに眠りについていた京は少し不機嫌になりながら玄関へと向かう



「……はい」

「やあ赤坂さん。夜分遅くに申し訳無いね」



と、訪問者はマンションの管理人のおじさんだった



「いえ……それでこんな時間に何の御用です?」

「ああ……それなんだがね」



管理人は目線を右に向けた。京もその目線を追うと……



「うわっ‼︎な、なんですかこれ!」

そこには大量のラッピングされたチョコレートが山積みに置かれていた



「あれじゃろ?バレンタインとかいうやつの……」



京はバレンタインの事をすっかり忘れていた



「あー……」

「たくさん貰うのは結構じゃが、道を塞ぐのはやめてもらえんかの?」



積まれた大量のチョコは扉前の道を塞いでいた



「わ、分かりました。全部家の中になおしておきます……」

「……毎年毎年大変じゃの」



そう言い残し、管理人は去っていった



「……片付けるか」



と、積まれたチョコを家に放り込む作業に移った



男とは例外なくバレンタインでチョコを貰えることは嬉しい事だ。学生の頃は貰ったチョコの数で競った人も少なくないはずだ



だが、貰い過ぎれば、嬉しいを通り越してうっとうしいのだ



ましてや最近40を迎えた京は板チョコ一枚完食するのも辛くなってきている。そんな中道を塞ぐほどの無数のチョコ。とてもじゃないが食べきれない



「……今年もお裾分けだな」



食べきれない……かといって捨てるのはもったいないし、くれた人に失礼だ。なので、京は貰ったチョコを親戚一同に毎年贈るのだ



老夫婦の家には少なめ、子供の多い家庭には多めに贈るのが、毎年の恒例行事になっている



「あ!やっぱり今年もこうなってましたか!」



チョコをなおす京の元に白瀬がやってきた



「また手伝いに来てくれたのか?」

「まあこうなる事は前から分かってたので。あ、差し入れです」



と、言いながら棒状のチョコのお菓子を渡す白瀬



「おいチョコはもういらないって‼︎」

「冗談ですよ。はいっ。どうぞ」



もう片方の手に持っていた方の袋を渡す。中身は目を覚まさせてくれる栄養ドリンクが入っていた



「長い戦いになりますし、ちゃんと飲んでください」

「……助かるよ」



蓋を開け、一気に飲み干した



「よしっ!じゃあ白瀬!よろしく頼む」

「あいあいさー!」



白瀬と共にチョコの山を片付けていく



「あ、見てください!」



白瀬が何やら見つけたようだ



「これ凄いですよ‼︎京先輩の顔にそっくり!」

「うわっ……すげー似てるな……でも、自分の顔なんか食いたくないんだけど……」

「まあ確かに……あ!ならこれはどうですか?」



白瀬の持つチョコレートは何やら卑猥な形をしていた



「紙が入ってますね。……ふんふん……「私のお○ぱいを再現しました。むさぼりつくように食べて下さい……」ですって」

「いや……なんでチョコでそんなの再現したんだよ……」



などなど個性的……では済まされない程の作品のチョコを見ながらどんどんと家に放り込む。そして……



「あー……やっどおわ゛っ゛だぁ‼︎」



作業開始から一時間半。ようやく道を塞いでいたチョコを家に移し終える事が出来た



「お疲れ様でした。今年も大変でしたね」

「ああ……手伝ってくれてありがとうな」

「いえいえ、別に良いんですよ」



部屋はチョコいっぱいになり、居住スペースの半分をチョコが占めていた



「では、私からもチョコをプレゼントです!」



白瀬から手渡されるチョコレート。至って普通の大きさのチョコだ



「意外だな……前までバカなの?って言いたくなるぐらい大きなの作ってきてたのに……」

「そんな事思ってたんですか⁉︎」



一昨年の白瀬のチョコは身長を軽々超える程のブロック状のチョコを。そして去年は趣向を凝らして、あえてチョコレートファウンテンをどこかのお店から借りてきて、仕事終わりに会社の一室を借りてデザートバイキングがもてなされた



だが、今年は普通の大きさのチョコ。でも今までのこだわりようから見て、普通でないのは確か……



「……今回のコンセプトは?」

「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました!実はですね……このチョコは私が自分でカカオ豆から作ったんです!『〜 お手製チョコレート。カカオ豆から作って 〜』です!



チョコに加工される前の状態から作り上げたという白瀬のチョコレート。コンセプトの表現がフランスの高級料理店のようなことにはあえて触れないでおこう……



「結構カカオ豆買ったと思ったんですけどこれだけの量にならなくて……もっと買っておけばよかったなぁ」

「いや、ちょうどいいから。このサイズが普通だから」



渡されたチョコの封を開け、チョコを口に運んだ京



「……うん美味い。さすが手作りだけあるな」

「本当ですか⁉︎よ、良かったぁ……」



心底安心した様子の白瀬。なんだかんだでカカオから作ったチョコに不安を感じていたんだろう



「ちゃんと私の食べきってくださいね!他の子のやつは食べなくてもいいですから!」

「……まあ全部は食べきれないけど、何個かは食べるよ」

「本当、京先輩が糖尿病にならないか心配ですよ……」

「ははっ……確かにな」



少し会話をした後、白瀬は置いていたカバンを持ち上げた



「さて、私もそろそろ帰ります。仕事もありますからね」

「ああ。またな」

「はい。ではまた明日……あ、いや……また今日‼︎」



そう言い残し、白瀬は去っていった……



「……あいつ砂糖入れ忘れてるな……にっが……」



と、文句を垂らしつつも食べ進める京だった……





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