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第5話 可愛い後輩……?


「じゃあ先に出るから。鍵だけ頼むな」



激闘から一夜明け、革靴を履き、会社に向かおうとしていた



「待って……何時ぐらいに帰ってくるの?」

「今日は入社式以外にすることはないから6時までには帰ると思うが……なんでだ?」

「ううん……聞いただけ」

「そうか。……じゃあいってくるわ」

「うん……いってらっしゃい」



家を出て、階段を下る京



「さっきのやり取り……夫婦みたいだったな……」



と思うと途端に恥ずかしくなったらしく顔を赤らめた



「ないない!ただでさえ他の女より怖いのにあり得るかって!」



本当に夫婦に……そんなことはあり得ないと京は顔を横に振る



「でも……なんかほっとけないんだよな……」



そんなことを考えながら階段を降りるとそこにはスーツ姿の女性がマンションの入り口の柵にもたれかかっていた



「あっ先輩!おはようございます!」

「あ……ああ。おはよう。香奈宮」



朝一から元気な挨拶をする女の子。名前は香奈宮(かなみや) 白瀬(しらせ)。会社の後輩だ

ポニーテールに纏めた長い髪に淡い灰色の目に出るとこは出て、引っ込むところはしっかりと引き締まった大人びた女性で、会社人気もかなり高い。そしてこの子の人気の高い一番の理由は……



「今日もカッコいいですね!」

「……ありがとう」



ストレートに真っ直ぐな言葉を伝える所だ。相手が上司であっても偽ることはなく、自分自身を晒け出す所が男子からも女子からも人気の理由だった



ただ……()()べきものまで晒けだしてしまうのだが……



「今年はどんな子達が入ってきますかね?」

「今年は6人だっけ?」

「そうですよ!聞いた話だと男子3人女子3人らしいです!」



京が勤める会社はいわゆる中小企業で毎年入ってくる社員は少なめだ



「そのうち大卒の子が5人。高卒が1人みたいですね」

「高卒か……まだ10代か……年齢2倍にしても俺より年下だもんな……」



改めて自分が歳をとったことを認識した



「もう私達も若い子達にバカにされちゃう年齢になったんですね」

「いや……香奈宮はまだ26だろ……」



白瀬は大卒の社員で今年で4年目を迎えた。まだ20代半ば。40を迎えたおっさんと同じような扱いはされないだろう



「大丈夫ですよ!男はともかく女が京さんをバカにすることなんてないですよ!」

「出来れば男の方にバカにされたくないんだけどな」



たわいもない話をしながら歩く二人。そして二人は会社に到着した



「じゃあ俺は入社式の会場の手伝いに行くから」

「分かりました!あっ!かばん机に置いておきましょうか?」



普通なら躊躇なく頼むところだが、京は少し躊躇った。また()()()()()かもしれないからだ



「か……かばんに必要な物入ってるから大丈夫だ」

「そうなんですか?そういうことなら分かりました!それでは先輩!またあとで!」



ちょうど到着したエレベーターに乗り込んだ白瀬。ドアが閉まるギリギリまで京に手を振り続けていた



「はぁ……緊張した……」



約3年ほど家の方向が一緒という理由だけで共に通勤しているにもかかわらず未だに恐怖心が消えない



「……会場行くか」



ーーーー入社式会場に到着した。といっても会社の会議室を使って開かれる小規模なもので会社からは出ていない



「やっと来たか」

「やっと来たかって……まだ始業の10分前なんだが……」

「とりあえず椅子並べと壁に装飾するんだとよ」



京に指示するこの男は京の同僚で、名前は橋本(はしもと) (あつし)。少しだけ薄れかかった髪に少しお腹がたるんでおり、年相応の見た目をしている



「てか準備俺らだけかよ?」

「まあ小さいしすぐセッティング出来るからな」



入社式に使われる会議室内には京と篤しかいなかった



「お前ダイエットがてら全部セットしていいぞ」

「なに楽しようとしてんだ!お前も手伝うんだよ!」



部屋の端に寄せられた長机と椅子を協力して運ぶ2人



「そういえば昼飯のお弁当あるじゃん?」

「あー。毎年入社式に食べる海苔弁当か?」

「そうそう。それが今年から幕の内弁当にグレードアップするんだってよ」

「マジか!あそこの幕の内弁当めっちゃ高いんだろ?」



などとどうでもいい会話をしながら作業する二人は20分ほどかけて机のセッティング。壁の装飾を終わらせた



「40越えのおっさんらに肉体労働させんなよな」

「全くだな」



----セッティングを終えた京は一度自分のオフィスに戻り、入社式の時間まで仕事を進めた



「----京さん!もう始まってますよ!」

「えっ?……てやばっ!集中しすぎた!今行く!」



----会議室に行くと既に社長の挨拶が終わり、新入社員の挨拶が始まろうとしていた



「遅いぞ京!」

「悪い集中しすぎた」



篤の隣に立ち、呼びに来てくれた白瀬がその隣に立った



「みんな若いなー」

「そうですね!」



感慨深そうに見守る白瀬と篤。だが京は心底どうでも良さそうにしていた



なぜなら京にとっては今までの生活と何の変化も起こらないのだから



「えー……では新入社員の皆さんは自己紹介をお願いします」



「----ここでの仕事に早く慣れるように頑張ります!」



パチパチパチ



「----教えられたことはすぐに取り組めるよう頑張ります!」



パチパチパチ



新しい人達との関係が増えたところで、仕事をして、家に帰って、一人で飯を食べて、一人でテレビを見る。

そんな退屈な人生に変わりはない



----はずだった



「えー……では次の人。挨拶をお願いします」



そんな退屈な人生を送ってるのは自分のせいだ。結婚でもすれば多少は変わるはずの人生。だが、それを自分自身で拒んでるのだから変わらない原因は自分にある



「は、はい……えーっと……」



でも……そんな退屈な人生を一日だけ変えてくれた子が……



栁内(やない) (せり)です……よろしくお願いします……」



----さらに俺の生活を変えるなんて、想像しなかった












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