第55話 広まった噂……?
「あのさ……やっぱり不自然すぎたんだって……」
「仕方ないじゃないですか。アレぐらいしないと見抜かれるんですから」
現在夕方の5時。まだ空は夕陽のおかげで明るい
借金を返済し、無事に自分達の住む街に帰ってきた四人。行きの反省を活かして、京には雑貨屋で買った歪な仮面を被せ、新幹線に乗せた
途中駅員に止められたりしたが、行きの騒動の対応をした駅員に事情を話し、なんとか仮面を外すことなく帰ることが出来た
「色んな人から「なんだアイツ……」みたいな目で見られてたよな⁉︎」
「まあまあ……京さんの言うこともごもっともだけど、騒動にならないだけマシだったじゃないですか」
「それはそうだけど……」
文句を垂れる京。だが、そのおかげで騒動がなかったのは間違いない。……あと、オーラを見る女子がいなかったことも幸いした
「あ、もうすぐ私達の家に着きますよ?」
「白瀬は違うだろ」
「やだなぁ!京さんの家は私の家でもあるんですから!」
「いや……違うから……ん?なんだアレ?」
赤坂家と栁内家のあるマンションの前に大勢の人が集まっていた
「……なんか京ちゃんの家の前にいっぱい集まってるけど……」
「えっ……俺なんかしたかな?」
「んー……女性だけでなく男性の姿もありますね。てことは……どういうことだろう……?」
白瀬も理由が分からないでいた。女性だけ集まってるなら大方察しがつくのだが、男性もいる理由が分からなかった
「……あそこに集まってる人……カメラとかマイク持ってませんか?」
芹の指摘通り、集まっている人達はマイクや高そうなカメラを構えていた
「あ、いたっ‼︎やっと見つけた‼︎」
と、後ろから男の声が聞こえてきた
「……鷹斗くんか。どうしたんだ?そんなに慌てて……」
息を切らし、膝に手を当てる鷹斗
「この人って……市役所にいた人ですよね?」
「そうそう。で、何の用なんだ?」
息がまだ整っていないが、鷹斗は焦った様子で……
「理由は後で話すので……はぁはぁ……とりあえず全員ついてきてください!」
鷹斗は家の反対側へと歩き出した
「……あの人は?」
「あぁ……芹以外知らないんだったか。アイツは妹の夫の中畑鷹斗だ」
「菜由ちゃんの?」
「そうだ。……とりあえずついていくか」
鷹斗の後ろについていく四人。案内された場所は、鷹斗と菜由の住む一軒家だった
「とりあえず上がって下さい」
「おいおい勝手に上げて大丈夫なのか?菜由が怒るんじゃ……」
「大丈夫です。これは菜由の命令ですから」
「お前……菜由の尻に敷かれてんな……」
「逆らうと怖いですから……」
四人をリビングへと案内した鷹斗。そこには既に菜由が座っていた
「あ、兄さんいらっしゃ……なんで四人も連れてきたのよ……」
「あ、あれ?もしかして京さんだけで良かったの?」
「そうよ。……まあ連れて帰ってきたなら仕方ない……皆さんどうぞ座って下さい。お茶をお出ししますね」
菜由はそういうと、鷹斗に睨みを利かせた。鷹斗は察したようにキッチンへと向かった。自分で入れるのではなく、鷹斗にお茶を入れさせた
「……で、なんで俺を家に招いたんだ?」
「家の前の状況を見てない?」
「ああ……あれは何だ?」
家の前の状況について菜由に問いかける京
「あれはテレビ関係者だよ」
「テレビ?」
「そう。なんでも、ここに住む赤坂京という男が『超絶怒涛のビューティフルイケメンフェイスの男』が住んでいる……という噂を聞いたらしいです」
「長ったらしいし、まとまりのない名前だな……」
どうやらテレビ関係者がその噂を聞いて、すぐに来たという
「でも、変な話です。今まで何ともなかったのに急に兄さんのことが広まるなんて……」
「あー……あのすいません……」
ここで今まで言葉を発しなかった白瀬が会話に割って入ってきた
「なんですか?」
「京先輩のことが広まったのは……多分、駅と新幹線内の騒動と交通麻痺を起こさせたからかと……」
菜由は白瀬の言葉を聞き、京に詰め寄った
「……あれほど遠出する際は顔バレしないようにして。と言ってたはずだよね」
「……はい」
「自覚症状がないだけで、兄さんの顔は世界レベルのイケメンだからって言ったよね?」
「いや……冗談かと思ってました……はい」
やはり菜由は怖い……静かな怒りほど怖いものはない
「はぁ……起きてしまったことは仕方ないです。とりあえずほとぼりが冷めるまで、兄さんは私の家で暮らして下さい」
「……はい」
ここで変に逆らうと後々怖いので言われた通りにすることにした……




