第54話 香織に課せられたもの……?
「……着きましたね」
「ああ……長かったな……」
ようやく香織がいる場所に到着した三人。当初の予定よりも1時間程到着が遅れてしまった
原因は言わずもがな、京にまとわりついた女性達のせいなのだが……
「芹ちゃん。この家に住んでるのはおじさんだけ?」
「そうですね。おじの両親も亡くなってますからおじ一人だと思います」
大きな屋敷の家が建っていた。内情は祖父の一人。他に人がいるとなると白瀬も立ち回り方を変えなければいけない
「なら裏からこっそり回るね。だから二人共任せたよ」
「ああ」
「分かりました」
白瀬は屋敷の裏側に向かっていった
「……芹。準備はいい?」
「……うん」
そして、二人は屋敷のチャイムを鳴らした
「ーー何用でしょう」
インターホン越しに掠れた声が聞こえた
「おじさん。私だよ」
「……芹か?」
「うん。そうだよ。お母さんを返しにもらいにきたの」
「…………」
芹の言葉に返答はなかったが、しばらくすると玄関の扉が開いた
出てきたのは白い髪が薄っすらと残り、衣服はゆるゆるの服を着た男が現れた
「芹……とお前は?」
「赤坂京です」
「赤坂京……あぁ……お前が……」
おじは京のことを知っている素ぶりだったが、そこは今は突っ込まないことにした
「単刀直入に言います。香織さんを返して頂きたい」
「いいよ」
思わぬ返事に驚く二人
「代わりに芹を置いていくならな」
「なっ……」
京は咄嗟におじから芹の姿が見えないように前に立った
「そんなこと出来るわけないでしょう?」
「なぜだ?芹は私の孫だ。私が芹をどうしようがお前には関係のない話だろう?」
「……あなたはなぜ、誘拐を依頼してまで香織を連れ戻したんですか?」
京はおじに香織を連れ戻した理由を聞いた
「簡単だ。金持ちの家に嫁がせるためだ」
理由は単純明解。ただ胸糞が悪い内容だった
「香織はあの年であの美貌だ。そこら辺の金持ちぐらいならすぐ捕まえられるだろう。だが芹が来てくれるなら話は別だ。若いし可愛い。これはかなりの大物も釣れるだろうからな」
「……なぜ、金持ちと結婚させるつもりなのですか?」
「俺の借金を返して貰うために決まってるだろ?」
「……ふざけるな‼︎」
京は怒鳴った。お腹の底から声が出るほど大きな声で……
「あんたは娘と孫をなんだと思ってるんだ⁉︎道具として見ているのか‼︎」
「そうだよ。この二人は道具。お金を稼いでくれる……俺にとってはATMだよ」
怒る京に対して動揺することもなくただ淡々と答えるおじ。それには感情すら感じなかった
「まあでも、芹は俺をある程度楽しませてもらってから稼ぎに出てもらおうかな?」
ニヤッと笑うおじ。だがその笑顔にさえ、感情は感じなかった……
「……お前ごときに芹はやらない。香織も返してもらう」
「……残念だが、取り返したところで、香織はもうま《・》ともな生活は送れないぞ?」
「……どういうことだ?」
おじは悪びれもなく香織の現状を話した
「アイツには俺の借金の連帯責任者になってもらった。これから借金取りは香織に対して取り立てを行うように言ってある」
「はぁ⁉︎そんなの通るはずがない‼︎」
芹は痺れを切らしたのかおじの言葉に返事を返した
「それが通るんだな。借金取りとしてはお金さえ返ってくれば良い。こんな老人からより、香織からの方がお金を取れる可能性は高い……だから借金取りもそれで良いって了承してくれたんだよ」
ということは、このまま香織を連れ戻した所で本当に助かったとは言えない……これから借金取りから追われる日々。ましてや芹にまで目をつけられてしまうかもしれない……
「だから今、コソコソと香織に接触してる人がいるみたいだけど……香織自体がそれを拒んでるだろうな」
白瀬が香織を探し出していることがバレていた。おじはもう香織を連れ戻して来た時点で本当はもう用済みだったのだ。それからプラスで金持ちに嫁がせ、利益を得られればと考えていたのだ
「俺は連れ帰らないのが一番だと思うがなぁ……」
更にニヤけるおじ。おじは香織を連れ出されないことに自信があるのだろう
あのなんでも器用に素早くこなす白瀬が未だに香織を連れ出して来ていないのがおじの自信が本物であることを証明していた
「……やっぱり最低だね。そんなんだから叔母さんに捨てられたんだよ」
「最低で結構。まあそんなに香織のこと救いたいならお前が代わりになればいいだろう?芹なら貰い手なんていっぱいあるだろうよ」
「……やらねえよ。芹はやらねぇ」
京は低いトーンで、内に怒りを秘めるような声で返した
「芹どころか香織さえやらねぇよ。お前なんかに」




