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第50話 白瀬の本題……?



「ご飯出来ましたよ」

「おお。ありがとう」



芹と同居を始めて1週間が経った。出会った頃の芹はどこか遠慮しているところがあったが、今はもう自分の家のように振舞っていた



ただ、一緒に住んでいるだけで、他には何もない。身体の関係はもちろん。裸だって以前、お風呂に入っていることを知らずに扉を開けてしまった時にチラッと見えてしまっただけ。至って健全な生活を送っていた



……そもそも付き合っていないのだから当たり前ではあるのだが……



「今日はですね……鯖の味噌煮と生姜焼きです!」

「おー!美味しそうだな!」



少しこの生活にも慣れてきた……本当は慣れる前になんとかしたかった……



未だに香織に関する情報はゼロ。会社を休むわけにはいかないので、退勤した後に情報収集をしていた



現在は、街の女性のほとんどが味方をしてくれている為、街中で見かければすぐに情報が回るはず……だが、情報がないということはもうこの街に香織と美穂はいないのだろう



希望があるとすれば、美穂からの着信のみ。美穂の最終目的は京との結婚。その京との接点を持たない訳がない



今はとにかく待つしかない……



「ん!美味い!前より料理の腕あげたんじゃないか?」

「そうですか⁉︎でも、喜んでくれてるなら嬉しいです!」



以前から芹の料理は美味しかったが、この数ヶ月でさらに磨きがかかっていた



「明日はハンバーグにしましょうか」

「もう明日の夜ごはんのことを考えてるのか?」

「こういうのは早いうちから決めといた方が良いんですよ!」



晩ごはんを食べながら明日の晩ごはんの話をする。……香織と同棲してた時もそんなことがあったことを思い出した



「そうだな。じゃあ明日は帰るときに買い物をしようか」

「はい!明日……明日……」



芹の様子が少し暗くなった



「……芹?」

「……明日も買い物して、ハンバーグを作って、京さんの家で食べて……てことはお母さんはまだ帰って来てなくて……」



芹は俯いてしまった……



「……帰ってくるよきっと……明日は香織も呼んで俺の家でハンバーグを食べる。その予定だけど?」

「……!そ、そうですよね!帰って来ますよね!」



なんとか元気を取り戻してくれたようだ



「一人忘れてますよ?」

「きゃぁぁぁぁ‼︎」



芹の椅子の横からスルッと蛇のように顔を出した白瀬。芹は驚きのあまり、座っていた椅子の上で少し飛び跳ねる仕草を見せた



「お前……どっから入ったんだよ……」

「え?窓からですけど?」

「さも当然かのように言うな。今日一回も窓の鍵開けてないのに」



今まで不法侵入まではされたことはなかったが、白瀬が鍵を開けることが容易いことなのは分かっていた。だからもう驚かなかった



「芹ちゃん‼︎」



白瀬は芹に威嚇するように顔を近づけた



「な、なんですか?」

「ズルイ……ズルイよ!芹ちゃんばっかり得しちゃってさ!京先輩と一緒に寝たり、京先輩と一緒に寝たり、京先輩と一緒に寝たりして‼︎」

「同じことしか言ってないぞ……」

「とにかくズルイです!なので今日は私も一緒に寝ます!」

「はぁ⁉︎」

「京先輩も!拒否権はあげません!」

「いや……俺の人権は?」

「そんなものは与えません!」



白瀬は芹ばかり美味しい思いをしていることに不満を抱いているようだった



「芹ちゃんと寝れるんですから私とも大丈夫ですよね?」

「……白瀬はまだちょっと怖いんだけど」

「芹ちゃんにも恐怖心抱いてるのに寝れるってことは私も大丈夫なはずですよ!」

「横暴な理論振りかざすな……」



確かに以前に比べれば、恐怖心は大幅に減少はしている。ただそれでも未だに話すだけでも少し抵抗があったりする



「でも確かに芹ちゃんと私の二人分はキツイかもですね……ということで芹ちゃんには床で寝てもらいましょうか」

「何がというわけですか!勝手に決めないでください!」

「たまには先輩にもいい思いさせてよ!」

「嫌ですー!香奈宮先輩はおとなしく遠くから爪を噛んで私達のことを見てればいいんですぅ!」

「い、言うようになったね……」

「もう京さんに関することで遠慮するのはやめたんですよ」



今まではなんだかんだで白瀬が芹を翻弄していたが、芹が逞しくなったのか、立場が逆転しつつあった



「だから譲りません!京さんの隣で寝るのは私です!」

「ぐぅぅ……はぁ……分かった分かった。今日は諦めるわ……」

「それでいいんです!」



芹の圧に負けたのか、白瀬は大人しく引き下がった



「……んで、本題はなんだ?こんなことする為にわざわざ不法侵入しに来たわけではないだろ?」

「……さすがに察しがいいですね。では本題を話しましょうか」



白瀬は先程の雰囲気とは違い、真剣な表情になった



「今日の22時。美穂さんから京さんの携帯に電話がかかってきます」

「本当か⁉︎」

「はい。わざわざ先に私の方に連絡を入れてきたので、間違いないと思います」



とうとう唯一の希望である、美穂から電話がかかってくる……



「出来るだけ話を長く持たせてください。場所の特定なんてことは出来ませんが、少しでもヒントを得るためにも」

「……ああ。分かった」

「芹ちゃんと私は声を出さずに一緒に会話の内容を聞かせてもらいます」

「わ、私もですか?」

「何がヒントになるかわからない今、人手は多くて損はないからね」

「わ、分かりました!」



白瀬は美穂からの電話時の行動を細かく指示した



「もしかしたら一回限りかもしれません。なので、一発勝負だと思ってください」



この電話で、何も分からなければどうすることも出来なくなってしまう。事実上の最終決戦だ



「分かりましたか?二人とも」

「ああ。分かった」

「分かりました」



二人も覚悟を決めたようだ



「まだ時間は少しあるので、今はその時が来るまでゆっくりしましょう……ということで、私も芹ちゃんのご飯を頂きましょうかね!」



白瀬は立ち上がり、キッチンに向かった



「あ、私と京さんの分しかないので余ってませんよ?」

「ウソ……でしょ?」



白瀬は膝から崩れ落ちた



「ふ、ふふふふふっ……いいもん!コンビニで買ってくるもん!」



白瀬は拗ねながら靴を履いた



「……あ、そうだ芹ちゃん」

「はい……なんですか?」



白瀬は一呼吸してから言った



「隠れてる時に見えちゃったんだけどさ、芹ちゃんって意外と際どいの履いてるんだね」

「……っ‼︎///」



顔が真っ赤になる芹



「あ、ごめーん!京先輩にいつ襲われてもいいように履いてるんだね!察しが悪くてごめんねー!」

「ば、ばかぁぁぁぁっ‼︎」



芹は近くにあったプラスチック製のコップを投げつけた



だが、白瀬はもう既に外に逃げた後だった……



「か、帰ってきたら殺してやるぅ……」

「ほ、ほどほどにしとけよ……」



白瀬を翻弄しはじめたかと思ったが……どうやらそれは勘違いだったようだ




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