第48話 もう一度……?
「待つしかない……か……」
現在夜中の12時を少し回ったところ。京は部屋の電気を消し、ベッドに入って寝る体勢になっていた
瑠奈から待つことしか出来ないと言われたが、果たして本当にそうだろうか……?何かできることはないだろうか……?と、暗くなった部屋で天井を見上げながら考えていた
すると……ピンポーンと家のチャイムが鳴った
「こんな夜中に……誰だ?」
ベッドから抜け出し、ドアスコープを覗いた
「……芹?」
まだ秋手前ぐらいの時期だが、それでも夜は少し肌寒い。そんな時に芹は外にパジャマ姿で待っていた
「……どうした?眠れないのか?」
「京さん……えっと……恥ずかしながら……」
どうやら指摘した通り、眠れないらしい
「とりあえず肌寒いだろ?入りなよ」
「……お邪魔します……」
京は一度部屋の電気を付けようとするが、芹がそれを止めた
「……つけなくていいです。……京さん……隣で寝てもいいですか?」
甘えた声……ではなく、少し怯えているような声でお願いする芹。一人が怖いのか、香織が心配だからなのか、それとも両方なのか……芹の心境は分からない。ただ、何かにすがらないと不安で仕方がない……そんな感じがした
「……いいよ」
「……本当ですか⁉︎……断られると思ってました……」
「なんで?」
「だって……京さん、女の子が苦手みたいだし……」
確かにそうだ。かなりマシになってきたとはいえ、苦手なことに変わりはない。……だが
「……苦手だよ。でも……今の芹をほっとけないし……芹相手なら多分大丈夫……だと思う」
確信はどこにもない。でも……きっと大丈夫……
そう心の中で呟き、京はベッドに入った
「ほらっ。入りな」
「……」コクッ
芹は軽く頷き、京のベッドに入った
しばらくの間、二人の間に沈黙が続いた。そしてその沈黙を破ったのは芹だった
「一緒に住んでた時でも……同じベッドで寝たことなんてなかった……でも今は……」
「逆にあの時一緒に寝てたほうが問題だろ」
「……それもそうですね」
出会って間もない二倍近くの年の差がある女の子と一緒に寝るなんて京でなくともしないだろう
「まあでも、まさか香織の娘だとはなぁ……」
「私も……まさかお母さんの元カレだなんてびっくりしましたよ」
「本当だよな。すごい偶然だよ」
約20年近く前に別れたきり一度も香織とは会ったことがなかった。だが、今ではお隣さん……確かにすごい偶然だ
「……お母さんの娘って聞いてどう思いました?」
「……どうって?」
「話を聞いた限りだと、お母さんは京さんに酷いことをしたじゃないですか?だから嫌悪感とかあるんじゃないのかなって……」
芹は少しだけ身体を震わせていた。京の返答に少し怯えているのだろう。嫌だった……と言われてしまうかもしれないから……
「うーん……あ、あの時の子供か‼︎ってなったぐらいかな?」
「えっ……それだけですか?」
「うん。芹に関してはそれだけかな。まあ久しぶりに香織を見た時はさすがに昔の記憶が蘇って過呼吸になりかけたけどね」
芹の心配は無意味だったようだ
「……過呼吸になるくらい女の子が苦手なのに……一緒にベッド入ったりして大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないよ」
「えっ……すぐどきます!」
布団から出ようとする芹を京は芹のお腹に両腕を巻いて引き戻した
「きゃっ!きょ、京さん⁉︎」
「……大丈夫じゃないけど、いいんだよ。今はこれで……」
京は芹のお腹から手を解かず、抱きしめたままだ
「……本当に大丈夫なんですよね?無理してないですよね?」
「してないよ」
「……なら良かったです」
安心した芹は京に身を預けた
「……京さん」
「……ん?」
「お母さんが戻ってくるまで、また一緒に住んでもいいですか?」
京の答えは決まっていた
「……いいよ」
「……ありがとう……ござい……ま……すぅ……すぅ」
安心したおかげか芹は眠りについた
「……俺が今出来ること……あったよ」
少し身体を起こし、寝ている芹の頭を撫でた
「香織が帰ってくるまで……芹を不安にさせないように頑張るから」




