第47話 朗報よりも……?
「ーーーーそれで、なにしにきたの?」
暴れていた白瀬をなんとか慰め、4人で机を囲んだ
「美穂さんの居場所を知りたいんです!教えて頂けませんか?」
白瀬の問いに瑠奈は困った顔をした
「……私にもどこにいるのかわからないの」
瑠奈の答えは3人の希望を打ち砕く非情な通知だった
「れ、連絡は取れませんか⁉︎」
「残念だけど……私も拒否されてるのよ」
「る、瑠奈さんの電話まで……」
注意深く、用心深い……妹の電話にも出ないということは、徹底的に身を隠すつもりなのだろう
「家も引き払ってた。多分……もうこの街……いや、この県にはいないと思う」
瑠奈からの答えに朗報など一つもなかった。それどころか凶報ばかりだ
「そんな……お母さん……」
芹は俯いてしまった……
「……芹」
手がかりなし。連絡を取る方法もなし。県外へ逃亡の可能性あり……絶望的な状況だった
「ただ、希望はまだあります」
「……希望?何かいい方法が?」
「お姉ちゃんの狙いは、最終的には赤坂さんになります」
この言葉に3人ははっとなった
「香織さんが誘拐されたのは、お姉ちゃんが赤坂さんに自分を選んでもらうため、一番の脅威を排除するために行ったこと……なので香織さんを誘拐すること自体はあくまで準備なんです」
続けて瑠奈は話す
「お姉ちゃんがどうやって赤坂さんと結ばれようと考えているかは分かりませんが、しばらくすれば、何かしらの方法で、赤坂さんの方にお姉ちゃんからアプローチがあるはずです」
「つまり……あっちからのアプローチがない限り出来ることはない……ってことか?」
「そうですね……白瀬が一週間かけて集めても情報がほとんどないってことは、多分もう有益な事は得られないかなと。白瀬は情報収集能力だけはピカイチですから……情報収集能力だけね」
「ちょっと!他にも良いところあるでしょ⁉︎」
もう出来ることはない……待つことしか出来ない。理解は出来るが、歯痒さが残る……
「美穂さんの方からアプローチがなかったら?」
「それはありえません。さっきも言いましたが、最終的な狙いは貴方との婚約……なのでアプローチがないのはありえません。そしてお姉ちゃんは結構せっかちです。予想ですが、少なくともこの一週間の間にはアプローチがあるかと。……ただ」
「……ただ?」
「これだけのことをしておいて婚約出来ると思っているのか……と私は疑問に思ってるんです。赤坂さんはお姉ちゃんに婚約を申し込まれたらどうするつもりですか?」
「そりゃ断るさ。俺は美穂さんのことをほとんど知らないし、何より人を誘拐し、危険に貶める人とは結婚出来ない」
「……ですよね。だから疑問なんです。これだけのことをすれば赤坂さんが断ることなんて目に見えてるはずなのに、それでも実行した……おかしな話ですよね?」
「た、確かに……」
言われてみればそうだ。誘拐したのが自分だとバレていないのならば、問題ないが、美穂の場合、わざわざ自分が誘拐したと公言したようなものだった
「何かあるかも……気をつけておいてください」
「わ、分かった」
瑠奈は京に忠告した
「……私が伝えられるのはこれぐらいです。何か進展があったら伝えますね」
「……助かるよ」
「いえいえ、私も今回の件はやり過ぎだと思ってましたから。多分そのせいで私のことも着信拒否にしたんでしょうけどね……」
瑠奈は少し寂しそうな顔をした
「ということで、もういいですか?私もそろそろ出かける用事があるので」
「そうだったんですか……時間を取って頂いてありがとうございました。瑠奈さん」
「大丈夫だよ。ただ、白瀬ちゃん?今から出かける用事に白瀬ちゃんも付いてきて下さいね」
「えっ?そ、それはどういう……」
瑠奈は白瀬に向かって指をさし、そしてその指を右や左に振って、白瀬の視線を誘導した
「暴れて壊した物……全部今から弁償してもらいますからね」
「……あっ」
コップにお皿。電子機器に椅子。そしてなぜかトイレの蓋まで破壊した白瀬。芹に手を出したと勘違いしていた際、暴れて壊した物だ
「えっと……いくらぐらいします?」
「んー……まあでも50万ぐらい持ってれば安泰かな?」
「ご、ごじゅうまんっ⁉︎」
「そりゃするよ。カメラだったりトイレも換えないといけないし、盗聴ゲフンゲフン‼︎……まあ電子機器を買え換えないと……」
今盗聴器って言いかけたがなんとか堪えた
「盗聴器だけは買い足さなくていいからな」
残念ながら聞こえていたようだ
「そういうことだから白瀬ちゃんもらってくね」
「きょ、京さん助けて!」
「しっかり弁償するんだぞ」
白瀬を冷たく放す京
「せ、芹ちゃーん……」
「話を聞かずに暴れるからですよ……器物破損で警察に届けられないようにしっかり弁償してきてください」
「うわーん‼︎二人とも冷たすぎるよぉ!」
二人は白瀬を置いて、瑠奈の部屋を後にした……




