第42話 3つの選択肢……?
「……は?」
京は手に持った箸を落とした。そして固まったまま、白瀬の方をずっと見ていた
「……誰に?何のために?」
「……高耶くんです。……理由は明らかではないですが……おそらく……誰かに頼まれた……からかと」
京の声はいつもの声とは違い、怒りが籠っていた
京はポケットから携帯を取り出し、電話をかけた
「ーーーー出ない……」
そしてもう一度電話をかけた
「ーーーーこっちも出ないか……」
どうやら芹と尋に電話をかけたようだ
京は携帯をポケットにしまい、椅子から立ち上がり、オフィスを出ようとした
「まっ、待って下さい‼︎どこに行くつもりですか‼︎」
「どこって……探しにいくに決まってるだろ」
淡々と答える京。こみ上げる怒りを必死に抑えているのは誰の目から見ても明らかだった
「……私も行きます。ただ探す場所は私の言う通りに動いて下さい」
白瀬には芹を見つけ出す自信があった
「……理由はあるのか?」
「……高耶くんに命令した人物に私は心当たりがあります。確定ではないですけどね」
白瀬自身、今回の首謀者が何かしらのアクションを起こすことは分かっていた。そして、アクションを起こす場所もあらかじめ目星をつけておいたのだ
「……分かった」
そう一言返し、京と白瀬は急いで京のいるマンションへと急いだ
ーーーーマンションまで走る二人。息を切らしてはいるが、そんなことは御構い無し。疲れなどどうでもよくなっていた
マンションに着き、二人は階段を駆け上がった
「白瀬、お前は香織を呼び出してくれ」
「分かりました!」
京は自室へと入り、白瀬は栁内家のチャイムを鳴らした
ピンポーン
「……出ない」
部屋から音が聞こえない……どうやら不在のようだ
「香織はいないのか?」
用事の済んだ京が自室の鍵を閉めながら白瀬に問いかけた
「家を空けてるみたいです……今日は一日家に居るはずなんだけど……」
今や京だけでなく、ライバルに当たる芹と香織の動向もある程度理解している白瀬。今日はパートも休みなはずで、家に居るはずなのだが……どこかに出かけてしまったのだろうか
「……仕方ない。二人で行くぞ」
「はい!」
マンションの階段を下る二人。そして駐車場に止まる黒い軽自動車に乗り込んだ
「……京先輩が車に乗るところなんて久しぶりに見ますね」
「まあな。最後に乗ったのは2年前ぐらいか」
京は運転するのが怖いだけで、一応車は持っている。車検にも出しているので、エンジンはスムーズにかかった
そして二人の乗る車は走り出した
「まずは……ここです」
カーナビで白瀬が位置を示した。そこはとあるアパートだった
「場所はどれぐらい絞れてる?」
「ここを合わせて3つです。でも、ここの3つの中に間違いなく居ると思います」
白瀬の調査力の高さはずっとストーカーされてきた京からすれば、信頼出来るものだ
「……京先輩、ごめんなさい」
「……?謝られることなんて何もないと思うが……」
「……実はーーーー」
白瀬は今の自治体内の状況。今回、芹が誘拐された理由。そして、昨日の香織との会話の内容。そして、この事を京に内緒にするつもりだった事を全て京に明かした
「ーーーーという事なんです……本当にごめんなさい‼︎」
元々、芹にも被害が及ぶこともなく白瀬自身だけでこの問題は解決するつもりでいた。その為、無駄な心配をさせないように京には黙っていた……だが、それが完全に裏目に出てしまった
京にこの事を報告していれば、尋が呼び出したとしても、芹一人で行かせることはなかった
「……そうだな。確かに俺には言っておいて欲しかった。芹がそんな危険な状態になってたことをな」
「……はい」
「一人でなんとかしようとするのはやめろ。それはお前の悪いところだし、弱点でもある。ましてや今回はお前じゃなくて芹に被害が出てるんだ」
「……はい」
京の言葉は重く突き刺さった。確かに独りよがりだった……今までは被害を受けるのは自分だった……でも今回は違う。自分の独りよがりな考えで、芹を危険に晒してしまった
そう思うと、勝手に涙が溢れた……
「……でも、お前のおかげで芹は見つかるかもしれない」
「……えっ……?」
「お前がいなかったら芹は見つけられないと思う。闇雲に探し回って、でも見つけられなくて……そのまま会えなくなってたかもしれない」
「……」
「お前がちゃんと調査してくれたおかげで、芹を見つけ出せる確率が飛躍的に上がってるんだ。……ありがとう」
……感謝されるいわれなんてない。私のせいなのだから……ただ今は、その言葉を受け入れておこう……
「その言葉は芹ちゃんが見つけてから聞きたかったですね」
「……大丈夫さ。必ずいる。白瀬がそう言ったんだから」
私は京先輩からこんなに信頼されてたんだ……こんな時だけど……嬉しい……
「必ず……見つけ出しますよ」
「……当たり前だ‼︎」




