第41話 さらわれた……?
手当たり次第に色々な部屋を確認する白瀬。どこに行ったか分からない以上、くまなく探すしかない
「油断した……!女にばっかり警戒してて忘れてたっ‼︎」
芹を排除しようとしているのは女達だが、手を下すのは女とは限らない。つまり、誰かが男に頼んで排除活動をしているとしたら……
「しかも同期の高耶君なら呼び出されても違和感がない……‼︎完全に失念だった‼︎」
白瀬は走った。扉を開けては閉め、開けては閉め……そして資料室の扉を開けようとするが……
「あれっ⁉︎なんで鍵なんて……」
いつもは施錠されていないはずの資料室に鍵がかかっていた
白瀬は確信した。ここに芹と尋がいることを
「芹ちゃん⁉︎返事して‼︎芹ちゃん‼︎」
……返事がない。口を塞がれている、または意識を失わされたのかもしれない……
「……待ってて‼︎すぐ助けるから‼︎」
白瀬は事務室へと走っていった
会社内の鍵は事務室にあり、各2本ずつ用意されている。片方は尋が使って持っていったとしても、あと一つ鍵がある。それを求めて、白瀬は三階にある資料室から一回の事務室まで全速力で走った
「はぁはぁ……あ、あのっ‼︎資料室の鍵を貸してもらえませんか‼︎」
息切れしながら要件を事務員に伝えた白瀬。だが、思わぬ返答が返ってきた
「すいません……今は二本とも貸し出し中でして……」
「……二本とも⁉︎」
もし仮に一人が同じ鍵を二本要求したとしても、二本鍵を渡すことはまずない。ということはもう一人誰かが持っているということになる
「すいませんが……はぁ……誰が持って行ったか分かりますか⁉︎」
「えっと……1人は若い男性の方で……」
若い男性……おそらく尋で間違いない
「あとは、部長さんですね」
「お父さんがっ⁉︎」
もう一本の鍵は白瀬の父親の手にあった
「……分かった‼︎ありがとう‼︎」
白瀬はまた三階にある資料室まで全速力で走った
「お父さん……なんで……」
資料室が開けられることのないように二つ分の鍵を二人で取りにいった可能性は考えていた。ただ、そのもう1人が自分の父親であったことに白瀬は動揺した
「……とにかく急がないと‼︎」
長年のストーカー行為で身についたスタミナで休むことなく三階の資料室まで走る白瀬。そして資料室に到着した。扉に手をかけるが、やはり閉まったまま。中からも音は聞こえなかった
「芹ちゃん……‼︎……どうする!どうすればいい‼︎」
頭をフル回転させ、案を振り絞る……
「扉は頑丈すぎて壊せない……ここで騒いで人を集めて逃げられなくする……?でもそれじゃあ芹ちゃんを助けたことにはならない……」
そして、一つの方法にたどり着いた
「ピッキングで開けるしかない……!」
白瀬は胸にポケットにあしらった二つのバッチの安全ピンを使い、鍵穴に差し込んだ
「……確かここをこうして……あー!こんなことならピッキングのやり方ちゃんと覚えればよかった‼︎」
普通使うことのない技術なので、覚える必要性はないのだが、ストーカーをする為には必須テクではあるのかもしれない
「……大丈夫。やり方は見たことある……思い出しながらやれば……」
ガチャガチャと音が鳴る。そして……
ガチャン
「……開いた‼︎」
差し込んだ安全ピンを抜き、扉を開けて電気を付けた
「芹ちゃん‼︎大じょ……」
だが、資料室の中には誰もいなかった……
「いない……なんで?」
隠れる場所はない。ということは最初から中にはいなかった?なら、芹ちゃんはどこに……?
部屋をくまなく探す白瀬。だが見当たらない。芹がいないことを確認した白瀬は資料室を出ようとするが……
「……開かない⁉︎」
資料室の扉が開かなくなっていた
「まさか……嵌められた⁉︎」
どうやら白瀬が入ったことを確認し、尋か父親である部長のどちらかが外から鍵をかけたようだ
中から鍵を閉められないようになっているこの扉。そして頑丈で壊れる気配もない……つまり白瀬は完全に閉じ込められてしまったのだ
「誰か‼︎誰か開けて‼︎」
白瀬は扉を叩きながら外に助けを呼んだ。ただ、そもそもこの会社は三階で仕事をしている人はおらず、必要品などが置かれる階層となっている。その為、人の出入りは多くなく、誰にも気づいてもらえない
「……このままじゃ……芹ちゃんが……」
涙がこみ上げてきた。昨日香織と約束したばかりだった。芹を守る……と
「後輩もロクに守れないなんて……私は……私は……‼︎」
ガチャン
「……っ‼︎」
「……あれ?こんな所で何しとるかお前は」
「お父さんっ……⁉︎」
資料室の扉を開けたのは部長である白瀬の父親だった
「なっ……なんでっ……」
「なんでって……資料室に用事があるから来ただけだが……お前はなんで泣いてるんだ?」
どうやら部長はただ単に資料室に用事があって鍵を借りただけ。尋に加担していた訳ではなかったようだ
「……っごめんお父さん‼︎理由は後で話すから‼︎」
白瀬は涙を拭い、オフィスに走った
「……やっぱり高耶くんはクロ……‼︎」
走りながら携帯である事を確認し、オフィスに急いだ
ガチャン
「京先輩‼︎」
オフィスの扉を開けたと同時に京に呼びかけた
「うん?どうしたそんなに疲れた顔して……」
走りっぱなしの白瀬。息も上がり、かなり疲労していた
「はぁはぁ……んっ……落ち着いて……聞いてください」
白瀬は一息つき、京に言った
「芹ちゃんが……さらわれました」




