表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/90

第40話 白瀬の油断……?



「手料理食べさせるなんてズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい」



呪文を唱えているかのような早口で喋る白瀬。前回も芹がお弁当を持ってきた際にこの状態に陥っていた。それほどまでに手料理に何か怨念でもあるのだろうか



「ひぃぃ!やっぱり怖いぃ!あの状態の香奈宮先輩は異常ですよ‼︎」

「……目が据わってるもんな」



京のスーツの裾を引っ張り、怖がる芹



「触るなぁぁぁ‼︎」

「ひぃぃぃぃぃっ‼︎」



この状態の時に京に触ると異常な程怒るのだ



「きょきょきょ京さん‼︎ななななんで手料理振る舞うだけで香奈宮先輩はあんなに怒るんですか⁉︎」

「あー……あいつ料理下手なんだよ」



なんでもそつなくこなすイメージの強い白瀬だが、料理だけは下手なのだ



「入社して半年ぐらいの時に弁当を持ってきてくれたことがあってな。それを食べようとしたら部長に「お前は死ぬ気か⁉︎」って忠告されたんだが、食べたんだよ。そしたらその後、気づかないうちに病院のベッドに運ばれてて、2日も日にちが経ってたよ」

「そ、そんなにマズイんですか……」



あまりのマズさに京は倒れ、意識を失っていたらしい。気絶させるほどの料理とはどれほどのものなのだろうか



しかしヤンデル状態になる理由は分かった。自身が苦手な為、出来ないことを芹はやっている。それに劣等感を抱いているからなのだと



「ふふふふふ!芹……貴方私に自分は料理出来ますアピールしてそんなに楽しいのぉ?」

「た、楽しんでるわけじゃ……」



呼称も芹ちゃんから芹と呼び捨てになっていた



「いいわよね料理が出来て私は出来ないですよはいそうですよ京先輩を一度病院送りにするほどマズイ料理しか作れませんよだから私は京先輩の身体を案じて作らないのに芹はそんな私を見下すかのように京先輩に料理を振る舞うんだねそんなんだね」



スラスラと句読点も息切れさえもなく言いきる白瀬



「ま、まあ美味しく作れない香奈宮先輩も悪いと思いますけど……」



と、口に出して言えれば良かったのだが……



「す……すいません」



と、自身は理不尽な怒りを向けられている事に気が付きつつもあまりの怖さに謝ることしか出来なかった



「わかればいふわはっ!」



急に取り乱した様子の白瀬。白瀬の頭には京の手があり、頭を撫でていた



「はいはい落ち着け。ほら深呼吸深呼吸」

「は、はいぃっ‼︎……すーっ……ぶはぁっ‼︎」



息を吐いたのではなく、血を吐いた白瀬。京に頭を撫でられ、興奮しすぎた故の流血だった



その場でバタッと倒れる白瀬



「かっ、香奈宮先輩ー!」



自身の吐いた血の上で倒れる白瀬の手を握った



「せ……芹ちゃん……私はもう……ダメみたい……」

「そんなっ⁉︎香奈宮先輩‼︎しっかりして下さい‼︎香奈宮先輩ー‼︎」

「……今まで……ありがとう」



白瀬の手から力が抜け、地面に落ちた……



「かっ、香奈宮先輩ー‼︎」



芹は俯き、泣いていた



「……恥ずかしいからやめてもらっていい?」



茶番劇を一部始終見せられ、他の人達からの視線も痛い



「すいません。つい熱中しちゃいました」

「あー。スーツが血まみれだよー……」



先程までの事は何もなかったように振る舞う二人。ただ血は本物なので、白瀬が血にまみれた事だけは本当の出来事だ



「着替えはあるのか?」

「一応あります。いつでも血にまみれてもいいように」

「いや、そんな状況に陥らないでほしいし、それを想定するのもやめてほしいんだが……」



カバンに入った着替えの入った袋を取り出す白瀬。ただ一つ心配事があった。着替えている間、芹から目を離してしまうことだ



「……まあ京先輩とご飯食べてるし……大丈夫だよね」



お弁当の中身もまだ半分以上残っている。着替えてすぐ戻れば食べ終わる前には戻ってこれるだろう



「ということで、私は着替えてきますね。あ、京先輩。決して覗かないでくださいね」

「ああ。覗かない覗かない。だから安心して着替えてこい」



冷たくあしらわれた……最近私への扱いに慣れてきている気がする……



----近くの女子トイレに入った白瀬。個室に入り、血にまみれたスーツを脱ぎ、持ってきた代わりのスーツに着替え始めた



(……今のところ、誰も手を出す様子はなし……でも、それは京先輩が見てるからだよね……)



朝の仕事中に何か不審な動きをとった女性社員は見当たらなかった



(家の中も手を出せないだろうし……一番警戒するべきは外に出てる時かな)



京達が勤務する会社はデスクワークの仕事。芹はまだ新人なので、外での仕事はない。そのため、外に出る機会があるとすれば、会社への行き来、そしてプライベートでの外出となる



(行き来は京先輩が一緒だから、プライベートで出かける時が一番危ない……あと何よりも……田野瀬(たのせ)さんが怖いなぁ……)



田野瀬(たのせ) 京子(きょうこ)。赤坂京保護自治体の創立期からのメンバーで、独身の51歳だ



(田野瀬さんは京先輩のことになったら何するかわからないからなぁ……この前も「私にも〈京〉という文字が名前に入ってるから結ばれるのは運命」なんて言ってたしなぁ……怖いなぁ……)



白瀬は田野瀬を一番の要注意人物と定めていた



「……よし!着替え終わったし、早く戻ろっと!」



着替えを終えた白瀬は血まみれになったスーツを袋に入れ、オフィスに戻った



「----ただいま戻りました!」

「ああ。早かったな」

「着替えの早さには自信が……ってあれ?」



京の隣でご飯を食べていた芹の姿が見当たらない



「せ、芹ちゃんは⁉︎どこに行ったんですか⁉︎」

「芹なら尋に呼ばれて出て行ったけど……」ガタッ



白瀬はオフィスを飛びだした



「……どうしたんだ。あいつ?」





















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ