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第37話 監視……?



「ねえ…….暑いんだけど」

「我慢してよ。これも兄さんを守る為なんだから!」




平日のお昼。とあるマンションの屋上に二人の影があった。菜由とその夫の鷹斗だ



「よしっ。ここなら見えるかな……うん。大丈夫そうだね」



双眼鏡を覗き込む菜由。見ていた先は、栁内家だった



芹、香織、京の住むマンションの近くにある同じぐらいの高さのマンションの屋上から栁内家を監視していた



「でもさ……よくあんな嘘で了解もらえたよね」



菜由がこのマンションの屋上を使う許可を得る為、管理人には……



「私の下着が風で飛んでいっちゃって……高いところから探したいので屋上を使わせて欲しいんです」



というと、管理人乃のおじいさんは若干鼻の下を伸ばしながらも貸すことを了承してくれたのだ



「そうね。私もいけると思わなかった」

「思ってなかったんかい⁉︎」



関西風のツッコミを入れる鷹斗。だが、それに目もくれず、双眼鏡を覗き込見続ける菜由だったが、屋上に繋がる唯一の扉のドアノブが握られる音が聞こえた



「見つかりましたかな?」



管理人のおじさんが、様子を見にきたようだ



「……まだ見当たらないですね。もう少し貸して頂きますね」



実際飛ばされていないのだから見つかるわけもない



「わかりました……ところで……その下着は何色ですかな?」

「……はい?」



管理人のおじさんは飛ばされた下着に関して探りを入れ始めた。もしかしたら……嘘だとバレているのかもしれない



「……赤ですが……それが何か?」

「無地ですか?レースなどの装飾物は付いてないですか?」

「……無地です」



適当にごまかす菜由。実際、赤の無地の下着なんて持っていない



「そうですかそうですか!見つかると良いですね。それでは私はこれで……」



下に降りていく管理人のおじさん。明らかに鼻の下が伸びていた為、下着の内容を聞きたかっただけだろう



「……あれ。セクハラで訴えても勝てるんじゃないかしら」

「まあまあ……実害はないんだから……」



邪魔者は去ったところで監視を続ける。菜由のいる位置は栁内家、赤坂家より少し高めの位置で、玄関の反対側、ベランダと大きな窓が設置されている場所で、寝室はカーテンが閉まっている為見えないが、リビングはばっちり見えていた



「……何が狙いなの……佐原香織……‼︎」



菜由が監視している理由は、香織が何かを企んでいると思ったからだ。京の前にまた現れた……絶対に何かあるはずだと菜由は睨んでいた



「あーあ……せっかくの休日なのに……何してんだろ俺……」



鷹斗は今日、有給休暇を取っていた。特に予定とか立てていたわけではなく、なんとなく取っただけの休暇だったが、まさかこんな日差しが直撃するところで、知り合いでもない人間の監視なんてしているんだろう……と後悔した



ちなみに4歳の息子は今は保育園だ



「うーん……姿が見えないな……」



少しでも何か情報が得られないかと監視しているが、そもそもの話、菜由は勘違いしている



香織が京の前に現れたのは本当にただの偶然なのだから



何もかもが偶然で、芹が京と同じ会社に勤めている事、

家が隣である事、今現在、独身であること……これら全ては香織が仕組んだわけではない。本当にただの偶然だ



つまり、菜由の監視は無意味なのだ



そうとは知らずに監視を続ける。未だ香織の姿は確認出来ない



「くぅ……出かけてるのか……?」



諦めて監視を終えようとしたその時、玄関の扉が開いた



「……お、帰ってきたのかも!」



双眼鏡を覗き直してみると、角度的に足しか見えなかったが、どうやら香織だけでなく、もう一人いるようだ



「……あれ誰だろ……ねえ鷹斗。あれもう一人は性別どっちだと思う?」



片方は細い白い足が見えたので、香織で間違いない。ただもう一人は黒い長ズボンを履いているので、足だけでは男女の判別が出来ない



「んー……男な気がするけどな……」



鷹斗は男だと判定した。ということは香織は娘や京が仕事に行っている間に男と遊んでいるということになる



「……あの女……‼︎兄さんの他にも男をたぶらかしてるなんて……許さない!」



菜由は双眼鏡を覗き込むのをやめ、マンションの屋上から降りていった



「おや?下着は見つかりましたかな?」



鼻の下を伸ばす管理人のおじさん。もはや隠す気もないようだ



「赤の無地下着なんて持ってないわよ‼︎」



と捨てゼリフを吐いてマンションを出た



「す……すいませんでしたぁ……」



それを追うように鷹斗が申し訳なさそうに出ていった



「……赤の無地……履いておらんのか……」



おじいさんの鼻の下は正常に戻った……



足早に京達の住むマンションへ到着し、エレベーターに乗り込んだ……一人で



「ちょっ……ちょっと待っゔぇふ!」



鷹斗も乗り込もうとしたが、扉はギリギリのところで閉まってしまい、顔を扉に打ちつけた



二階に着いた菜由は止まることなく一直線に栁内家の扉を開けた



「佐原香織‼︎お前よく……も?」



香織ともう一人はお互いリビングに座ってお茶を飲んで談笑していた。菜由は誰か存じ上げないが、そのもう一人とは香奈宮 白瀬だった



「……菜由ちゃん?」



香織は突然の菜由の訪問に驚いていた



「……ま」

「「……ま?」」

「紛らわしいことすんな!バカァ‼︎」



と、勢い良く玄関のドアを閉めた



「あ、菜由。俺を置いて……って菜由?」



栁内家から飛び出した菜由はエレベーターに向かって走った



「あっ!今度こそ待って‼︎菜由ブフェ!」



またも菜由が乗り込むエレベーターに間に合わなかった鷹斗……



「……次は絶対証拠掴んでやる……」



と、エレベーターで決意を新たにする菜由だった……



♢ ♢ ♢



「……白瀬いないと静かだな」

「本当にそうですね。もうこのまま永遠に有給休暇取り続けて欲しいぐらいです」

「相変わらず辛辣だな……」



















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