第30話 京と香織の過去……?
「ただいま。あ、京さん戻ってたんですね」
芹は香織が行くはずだった買い物を済ませ、家に帰ってきた。京が机の前で座って待っていた
「えっと……お母さんとさっきの人は?」
「あー。あれは妹だ。ちゃんと見つけて家まで送ったから心配しなくていい。香織は泣き疲れたのか寝てしまってな」
あの後、菜由に追いついた京は、荒ぶった菜由を落ち着かせ、家に送り届けた。あとは鷹斗に任せることにした
香織は京が戻ってきてからもまだ泣いていて、なんとか京が慰めて落ち着きを取り戻したが、疲れたのかウトウトしているうちに寝てしまっていた
「……芹。香織が話すって言ったらしいが、俺が話すよ。香織が話そうとしていたことを」
京の表情が真剣なものへと変わった
「……分かった。本当はお母さんから聞きたかったけど……また泣かれるのは嫌だしね」
香織が話している間にまた感情が高ぶって泣いてしまう……それを考慮して芹は京が代わりに話すことを了承した
「……俺と香織はな、大学生の頃に知り合ったんだ。----」
♢ ♢ ♢
----1年の頃の俺は本当にクソガキだった。毎日のように女をはべらかして、でも1日経ったらまた違う子に手を出す……最低野郎だった
自慢みたいになるが、何もしなくても、なぜか女の方から俺に寄ってくる……そんな状況を利用して取っ替え引っ替えにしてた。女に困らなかった
何しても女は俺を許してくれた。急に身体を触っても怒らない。お金をせびれば財布が空になるまで渡してくれる。冗談で「殴るぞ」と言っても「良いよ。京ちゃんになら」と返される。本当になんでもアリな状況だったんだ
……だから俺は……調子に乗りすぎた
彼氏がヤクザの息子の女に、手を出してしまったんだ
迫ってきたのは女の方だった。いつものように一夜だけ関係を持って、それが彼氏にバレたらしい
大学から帰る途中にヤクザの人間を何人か連れて、俺をボコボコにした。「テメェ!自分の女に手を出しやがって!」って叫びながら俺を容赦なく殴ってた。
終わる……死ぬ……。このまま殴られ続けて俺は死ぬんだ……そう覚悟してた。これは、今まで調子に乗りすぎてた罰なんだと……
でも、俺は助かった。香織に助けられた
急に現れたと思ったら、無言で携帯の画面をヤクザ達に見せてな
「もしもし。人が殴られてます」
って通報したんだよ。ヤクザ達は慌てて逃げていったよ
「大丈夫?」
「大丈夫だけど……ヤクザの目の前で通報って……報復とかされるかも知れないぞ?」
そこで香織はにっこり笑って俺にこう言ったんだ
「じゃあその時はあなたが私を助けて。今回は私が助けたから次はあなたが私が困っていたら助けてくれたらいいから」
ボコボコにされて傷だらけの顔を笑いもせずに香織はそう言った
「……それは彼氏になれってこと?」
「あれ?そう聞こえた?別にそんな意図は無かったんだけど……まあ良いよ。そこまで言うなら付き合ってあげる!」
今まで俺は「付き合って下さい」と頼まれたことしかなかった。でも香織は「付き合ってあげる!」と仕方なさそうに言った。そんな些細なことだけど、俺にとっては新鮮で、そして嬉しかった
香織なら、俺と平等な関係を築けると思ったから
そんな変な出会い方をした香織と付き合い始めて俺は変わった。他の女に迫られても断ったし、今まで貢がせた女達にも謝った。時間はかかったけど、バイトで貯めたお金でちゃんと返済していった
そして、半年かけて全部の返済を済ませて、大学2年生になる時に香織と同棲を始めたんだ
大学から近い所に小さいアパートを借りて、2人で過ごしてた。ちょっとの騒音で隣から壁をドンドンされるような場所だったけど、香織といれば楽しかった
映画を見に行ったり、ご飯食べたり、旅行にも行った。あと、喧嘩もした……でもすぐに元の仲良しに戻って……
そんな生活が2年経った時……大きな変化が起きた
「妊娠3ヶ月目ですよ。おめでとうございます!」
香織の妊娠が発覚したんだ
♢ ♢ ♢
「えっ……ちょっと待って下さい!そのお腹の子供って……」
「……芹のことだ」
芹は動揺していた
「てことは京さんは……私の父親……?」
動揺の理由は京が父親であると思ったからだ。今まで聞いた話が本当ならば、京は芹の父親である事に……香織と京の子供という事になる
「……まだ続きがあるんだ」
京は過去話の続きを話し始めた