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俺に告白してきたのは元カノの娘でした  作者: 三折 佐天
第六章 過去の出来事
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第29話 妹とデート……?



「兄さん。これどう思う?」

「んー……俺には良いかどうか分からん……」



京は妹の菜由を連れて、アウトレットモールに来ていた



芹の入社式用のスーツを渡してくれたお礼として、全額自腹で菜由にご奉仕していた



「もうっ……良いか分からないじゃなくて兄さん的に見てどうか聞いてるんだよ」

「俺的にか?……まあ良いと思うけど……」

「そう?なら買おっと!」



恋人同士のような会話をしているが、実の兄弟だ。やましいことは全くない。そして菜由はスーツを借りにいった時より柔らかい雰囲気を漂わせでいた



普段の菜由は冷たくあしらうような人間ではなく、深夜近くになると不機嫌になるのだ。特に好きなテレビを見ている時に邪魔をすると、ゴミを見るような目で冷たくされるのだ

そして今は奢りということで、上機嫌だ



「じゃあお会計よろしく!」

「はいはい……」



京は買い物カゴを手にレジに向かった



「お預かりしっ……⁉︎……ますね」



店員の女性が宏斗を見て、一瞬焦った態度を取った。これはいつもの風景で、京に気づいているが、気づかないフリをこの街の女性達はするのだ



なぜなら、一方的に知っているとおかしく思われてしまうから。白瀬、香織、瑠奈以外の自治体メンバーは京が自分の自治体があることを知っていることを知らない。その為、バレないようにと隠している



6着分の服の会計をする京。だが、店員は明らかに動揺していた

京が女の子の服を買っているのだ。彼女が出来たのか⁉︎と焦っているのだ



だが、そんな店員の不安も……



「あ、追加でこれもお願い!」

「まだ買うのかよ⁉︎」



菜由の登場で一蹴された



自治体メンバーは、京の為に作られたものだが、保護対象は京だけではない。京と血縁関係を持つ者全てが保護対象となっている



妹、父親、母親はもちろん。叔母や叔父、従兄弟達も保護対象に入っている。その為、京との血縁関係を持つ者全ての人達の顔を自治体メンバーは覚えているのだ



京が買った服は妹である菜由にあげるため……店員はそう理解し、安堵した



「----ありがとうございましたー!またお越し下さいませ!」



店員の元気な声を聞き届け、店を出た



「さてと……次はどこ行くんだ?」

「んー……いや、もういいかな。これだけ買えれば十分だし」



3袋分の服を買ってご満悦な様子の菜由



「そうか……飯はどうする?」

「んー……兄さんの家で私がなんか作ってあげるよ。鷹斗も今日は帰ってくるの遅いし」

「おっ!ならカレーにしてもらおうかな」



夕食を京の自宅で済ませることに決まり、二人は帰路についた



「----ねえ兄さん」

「ん?どうした?」



薄暗くなった夜道を歩く二人。等間隔に光る街灯の電気が明るく照らしていた



「いい女の人いないの?」



菜由は40歳になって未だに独身の京を本気で心配していた。この歳でも独身の人はたくさんいる。別に独身が悪いわけではない。ただ菜由的には早く京には幸せになってほしいと切に願っていた



「……いないな」

「前、スーツ借した女の子は?」

「相手は18歳だぞ?ダメに決まってるだろ」



前にスーツを貸した子とは芹のことである。入社式の日に着ていくスーツがなく、菜由のスーツを貸したのだ



「……何がダメなの?」

「いや……年の差があり過ぎるし……」

「……ふーん」



やけに引っかかる反応をする菜由



「な、なんだよ」

「いや、年の差ないならいいんだーって思ってさ」



今までの京ならば〈女の子が苦手だから〉と否定していたところだったが、芹に関しては〈年の差があるから〉と否定した



芹は京の中で特別であることは間違いなかった



「……まあいずれは出来ればいいな」

「とか言ってて15年ぐらい経つんだけど?」

「うっ……それは……」



痛いところを突かれる京



「……まだ()()()のこと引きずってるんだね……」



京に聞こえないよう小声で呟いた菜由。少し暗い顔になったが、すぐに表情を切り替え、話も変えた



「そういえばカレーのルーはあるの?」

「あっ……忘れてた」

「どーやってカレー作らせる気だったのさ……まあいいや。途中のコンビニで買えばいいし」

「だな」



----帰宅途中にあるコンビニに寄り、ルーを購入し、京のマンションに到着した



「えっと鍵は……」

「家の鍵ぐらい分けてつけときなよ……」



何十本とある鍵を一つに纏めて持っている京は家の鍵を見つけるのに手間取っていた



鍵探しに手間取っていると、隣の部屋がガチャっと開く音がした



「あ、京ちゃん!」

「香織?こんな時間に出かけるのか?」



左腕に小さな鞄をぶら下げて外に出てきた香織



「うん。ちょっと買い出しをね……ってあら?もしかして後ろの子……菜由ちゃん?」



香織は菜由のことに気がついた



「久しぶりだねー!元気だった?」



香織は菜由に話しかけた



「……なんで……なんであなたがここにいるのよ‼︎」



菜由は街中に響く程の声で香織に怒号を飛ばした



「な、菜由ちゃん?」



香織は菜由の怒りに慌てていた



「お母さん?すごい声が聞こえてきたけど何かあったの?」



外から聞こえた菜由の声につられて芹も部屋の外へと出てきた



「兄さんを……兄さんを捨てたあなたがっ‼︎どの面下げて兄さんと会ってるんですか‼︎」



激怒する菜由の言葉に香織は言葉を失った。芹は何を言っているのかさっぱりわからなかった



「……ごめん……なさい」



ただただ謝ることしか出来ない香織



「なぜ……なぜ兄さんを捨てたんですか‼︎あなたのせいで兄さんはっ‼︎」



菜由は「女の子が怖くなってしまった」と言いそうになったが、なんとか踏みとどまった。菜由は京がその事を内緒にしている事を知っているからだ



「……ごめん……なさい」

「……っ!もういいですっ‼︎」



菜由は香織の横を走って通り過ぎた。涙を流しながら通りすぎる菜由の顔に香織は心を痛めた



「おっおい菜由⁉︎」



京は買った服が入った袋を持ったまま、階段を駆け下りる菜由を追いかけた



香織はその場で足に力が入らなくなったかのように座り込んだ



「……ごめんなさぃ……菜由ちゃん……うぅっ……」



地面に香織の涙が落ち、濡れていた



「……お母さん。買い物は私が行くから……でも、後で話聞かせてね」



芹は香織の鞄から財布だけ取ってコンビニに向かった……



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