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第2話 あいつに似てる……?


「……お邪魔します」



夜中に外で座り込んでいた女の子を家にあげた京はスーツを脱いでハンガーにかけた



「お風呂沸いたら先に入りな。服はないだろうから俺のジャージで良ければ貸すけど?」



京は善意で女の子に提案する



「私の残り湯を楽しむ気ですか?私が着た後に洗わずに着て私を感じるつもりですか?」



だが女の子からは悪意に捉えられてしまった



「栁内さんが入り終わったら湯を抜くところと着たジャージを洗濯機で洗うところを見せてやるよ」



決してそういった意思のないことを表明する京。事実する気もおきないのだから



「冗談ですよ。そんな心配してませんから」



そこは女の子として心配しとくべきではあると京は思った。意外と警戒心がないようだ



「衣類は洗濯機に入れて洗っといてもいいぞ。乾燥も出来るタイプのやつだから」

「そんなこと言って私の下着の匂----」

「----嗅がないから安心しろ」



そんなやりとりを繰り返すうちにお風呂が沸いたようだ



「ほら。沸いたみたいだから早く入れ」

「……絶対に覗か----」

「----ないから安心しろ」



なぜか少しだけ不満そうな顔をして女の子は風呂場のドアをゆっくりと閉めた



「……飯作るか」



風呂に入っている間に京は料理を作り始めた。一人暮らしを始めて約20年近く。手際の良さは主婦並みだった



「それにしてもあいつ……他の女達とは反応が違うな……」



京に話しかける女の子達は大抵、アピールしてくるのだ



顔を近づけてくる。ボディタッチをする。好かれようと褒める。自分のチャームポイントを教えるなどなど京は色んなタイプの女の子が色目を使って近づいてきた



だが女の子もとい栁内からはそれがなかった。色目を使うどころか自分を女として見てほしいという意識を栁内からは感じ取れなかった



本当に京に対して興味がないようだった



「これで2()()()だな……」



京は自分に興味を示さない女の子が()()()()現れた事に喜んでいた



----料理を作り始めて約10分。ここで風呂場のドアが開く音が聞こえた



「……お先です」



栁内は長い黒髪から湯気がホワホワと出ていた。しっかりと温まったのだろう



「出たか。料理作ったから手伝っ……!」

「……?どうかしましたか?」



京は風呂から上がってきた栁内を見てさっきまで全くなかった女の子に対しての恐怖心が湧き出ていた。しかも他の女の子から感じる恐怖心の何倍にもなっていた



(なんでっ……!なんで()()がここにっ!)



汗が止まらない。息が荒くなる。心臓の鼓動も早くなる。意識が遠のいていく……



「----さん!おじさん!大丈夫?しっかりして!」



身体を揺さぶられ、失いかけた意識がはっきりした。

意識が戻ると栁内の腕を無意識にサッと払いのけた



「……痛っ!」

「……っごめん!大丈夫か?」

「大丈夫……それよりおじさんの方が大丈夫なの?苦しそうにしてたけど……」



今も内心恐怖心で押し倒されそうだったが平然を装っていた



「……大丈夫だ。心配かけてすまない。……すまんがトイレに行くからその間にこの料理取り分けといてくれるか?」

「……わかった」



フライパンから手を離し、持っていた菜箸を置いて京はトイレへと入った



「クソッ!なんで……()()()にそっくりなんだ!」



フードを深く被って顔を見えにくくしていた時には気づかなかったが

栁内は()()()()にそっくりだった



「落ち着け俺!心配かけるわけにはいかない。平然を装って接しろ!」



自分に言い聞かせ、頬を手のひらで叩き、トイレから出た



「あっ準備し終わりましたよ」

「あ、ああ……ありがとう」



少々ぎこちなくも受け答えをする京だが心臓のバクバクが止まらない



「そっ……そういえば栁内さんはなぜこっちに引っ越してきたんだ?」



話題を振って少しでも和らげようと試みた



「……さん付けっておかしくないですか?」

「えっ?」



話題と内容が違う返答が栁内から返ってきた。見た目的にも京の方が年上なのは明らかであり、さん付けは確かにおかしくはあった



「しかも普通にタメ口で喋るのに呼び方だけ敬語みたいなのもおかしいですよ?」

「うっ……確かに」



若い女の子から正論を言われる40歳の男。こんな姿、母親が見たら滑稽だと笑われてしまう



「なので、私のことは(せり)と呼んでください」



栁内 芹。これが隣に越してきた女の子の名前だった



「これからはお隣さん同士ですし、なにかと話す機会もあるでしょうから。名前は知ってもらっておいた方が楽かと」

「……わかった。えっと……芹」



名前を言っただけで鼓動が早くなり汗もさらに噴き出した。だがそれでも京は平然を装った



「おじさんは?」

「え?」

「おじさんの名前だよ。赤坂さんなのは表札見たから分かるけど下の名前聞いてないし」



名前を教えろと強要される京。名前を教えろと女の子から迫られることは今まで何回もあったが教えたことは一度もなかった

だが今回ばかりはお隣さんということもあり、教える事にした



「赤坂 京。字は京都の京だ」



漢字まで丁寧に教えた



「京さんね……じゃあこれからよろしくお願いします。京さん」



栁内もとい芹はニコッと笑った



「ああ。よろしく」



最初からそれぐらいの可愛げを見せとけっての……



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