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俺に告白してきたのは元カノの娘でした  作者: 三折 佐天
第五章 変わった日常生活
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第27話 第692回赤坂京保護会議……?



「えー、では第692回、赤坂京保護会議を執り行いたいと思います」



毎週、年末年始の日曜日以外に行われるこの会議。1年は52週間と1日、うるう年でも52週間と2日しかなく、692回となると約14年間分会議をしていることになる。



街の中にある大きめの公民館内で会議は行われていた



「今日は皆様にご紹介したい方が来ております。すいませんがご挨拶お願い出来ますか?」



進行を務める白瀬はマイクを渡した。そのマイクを渡した相手が……



「えー。皆さんこんにちは。最近引っ越してきました、栁内 香織と言います。よろしくお願いします」



頭を下げる香織。集まった女性たちは疎らながらも拍手を送る



「……少し言わせてもらいたいことがあります」



香織は息を軽く吸ってから話し始めた



「引っ越した次の日、私の家の扉に嫌がらせと思われる貼り紙がたくさん貼られていました。理由は白瀬さんから聞きましたが、赤坂……いいえ、京ちゃんの隣に越してきたことだと」



会場内に集まる女性達はざわめきだした。それは貼り紙で嫌がらせを受けたことについてではない。香織が京のことを京ちゃんと呼んだことにある



現状、京のことを名前で呼べているのは芹と白瀬だけであると認識していた女性達。実は自治体内ルールで京のことを名前で呼ぶには京との親密度、会話数、貢献度という三つの項目を達成しなければならない



・京に敬語を使われずに喋る



これが親密度の達成条件である。京は女性と話す時は相手の年齢関係なく敬語を使うので、これが達成条件になっている



・京と1日に30回以上やり取りする日を50日分達成する



京は女性との話をすぐに終わらせようとする為、これが達成条件となっている



・京に気付かれずに京の役に立つことを100回以上する



なぜこれが達成条件なのかというと、京へのアピール目的で良いことをする人は多い。だが、京が気付かなければアピールにはならない



だが、それでも京の約に立ちたい!という京への思いを測る為のものだ



以上の三つを達成しないと下の名前で呼ぶことは許されない。もし達成していないのに、名前で呼んでいる所を目撃した場合、最悪この街からの永久追放が言い渡される。それほど重いものなのだ



芹は自治体のメンバーではないので他の女性達からは疎まれているが免除扱い。白瀬は同じ会社の後輩という立場を利用して達成していた



だが、香織は自治体に加入したことにより、この規約を達成しないと呼ぶことは許されない



そして女性達からの非難の声が上がった



「彼女はまだ条件を満たしていない!なのに呼んでいる!」

「これは永久追放するべきだ」

「ちゃん付けだなんて……羨ましい!」



非難の声が轟々と上がるが、香織は高らかに宣言した



「私は条件を達成しています。敬語使われないし、30どころか100回話した日でカウントしても余裕で50回を超えます。気付かれずに役に立つこと?そんなの数えきれないですね」



そしていつも優しい香織の瞳は見下す目つきに変わった



「だって……私は元カノですから」



そして公民館内から外に声が漏れるほどの悲鳴が上がった



「嘘……嘘よ!赤坂さんに彼女がいたなんて……」

「そんなの聞いたことがないわ!デマよデマ!」

「デートとかしたってこと⁉︎羨ましい!」



集まった女性達は混乱していた



「せ、静粛に!静粛にお願いします!」



白瀬の呼びかけも虚しく、どんどん荒れる会場内。涙を流す者、悲鳴をあげる者、あまりのショックに気絶する者などが続出し、会議どころの騒ぎではなかった



「どどどどうしましょう⁉︎瑠奈さん!」

「これは……まずいね」



統率が取れない状況の打破を考える瑠奈。だが、一人の女性の声で皆は正気に戻った



「全員騒ぐんじゃない!」



一人の女性がマイクを使わずに会場内全体に声が届く程の声で怒号をあげた



「……お姉ちゃん」



怒号をあげたのは瑠奈の姉。東我謝 美穂だった



瑠奈と年の離れた姉妹で、自治体を設立後の第3代目局長だった。多忙で中々会議に出席が出来ないということで、局長の座を瑠奈に渡していた



「確かに発狂したい気持ちが分からなくもない。私も赤坂さんは今まで誰とも付き合っていないと思っていた。だが、彼女は〈元彼女〉だ!条件は達成しているかもしれないが現状私達より有利な点は名前で呼べるところしかない!」



美穂の言葉に目が覚めたのか、女性達の目に再び光が通った



「ましてや別れたのだ!別れたということは上手くいかなかったということだ!そう考えれば私達の方が有利だ!」



香織から余裕の表情が消えた。……というより何かを抉られたのか、少し泣きそうになっていた



そして光を取り戻した女性達は立ち上がった。そして大半の女性達が何かしらのアクションを起こそうと公民館を後にした----



「----ってことなの」

「だからその日、あんなに話しかけられたのか……」



その日、京は芹と市役所に出かけた日で、芹が追い払っていたが、いつもの2割増しで話しかけられていた京



「……でも聞いてる限りもう問題はないように思えますが……まあ自分にとっては大問題ですが」

「実はそうでもない。確かに大半は復活したが、それでも意気消沈した奴は多い。このままだと自殺志願者だって出てもおかしくない」



事は思ったよりも深刻だった。というかこれで自殺志願者が出てしまうなら結婚すればどうなってしまうのかと考えてしまう



「だが、ここで香織さんを牽制出来れば、意気消沈したメンバーも少しは回復するかと思ってな」



瑠奈なりに頭を使った結果、その発想に至ったという。あまり変わる気はしないが、少しでも軽減されるならば……



てか、どんどん俺の生活が窮屈になってるような……












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