第22話 飲み会……?
「飲み会……ですか?」
「そうそう!この後ウチの部署内の人全員誘ってやるんだけど、どう?」
お昼休み。芹と白瀬、京で集まり、お弁当を食べながら話していた
ゴールデンウィーク突入の前日。明日から長期休暇に入るということで今日はパーッと盛り上がろうということで飲み会が開かれることになったのだ
「まだ未成年だし、お酒はダメだけど、他の人達とも関われるチャンスだし来てほしいなって」
「うーん……」
芹は少し嫌そうな顔をしていた。行った方がいいのは確かなのだろう。だが芹には飲み会に行きたくない理由があった
「京先輩にお酌しないでいいの?」
「いや……俺行かねーよ?」
「あ、じゃあ私も行きません。京さんいないと行く意味ないですし」
二人は飲み会の参加拒否を宣言した
「なんで行かないんですか⁉︎あと芹ちゃん私達以外にその理由で休むだなんて言っちゃダメだからね⁉︎」
「言いませんよ。さすがにそれぐらい分かってます」
芹は告白してからほとんど京にくっついており、飲み会も京が参加するならば参加していただろう
「というか京先輩はなんで行かないんですか⁉︎」
「俺が酒がダメなの知ってるだろ?匂いだけでも酔うのに」
京はお酒が苦手だ。正確に言えば、簡単に酔ってしまうからダメなのだ
匂いを嗅げばフラフラ。少し飲めば気絶してしまうほどお酒に弱い
ただ匂いに関しては大量に嗅いでしまった場合であり、以前たっつーの店にて、隣で篤がビールを飲んでいたのだが、一人分の酒の匂いならば酔うことはない
だが今回は飲み会。社員の人もそうだが、他の客もたくさんお酒を飲みに来る場であればすぐに酔ってしまうのだ
「ていうか今回に限ったことじゃないだろ?いつも飲み会は断ってるんだし」
「えぇー!来てくださいよぉ〜!」
「無理なものは無理だ!諦めろって!」
頑なに断り続ける京
「……仕方ない。芹ちゃん、ちょっとこっちに」
「えっ……あ、はい……」
白瀬と芹は席を立ち、部屋の隅っこでヒソヒソと何かを話し始めた
少しすると二人は席に戻ってきた
「京さん。飲み会行きましょうか」
「何吹き込まれたんだ?」
先程まで飲み会拒否していた芹が一転して行こうと言い出した。白瀬が何か吹き込んだことは間違いなかった
「いやー、やっぱり私も新人ですし、行かないとこれからの評価にも関わってくるので行っておこうって思っただけですよ!」
「なら行けばいいと思うぞ。俺は行かんが」
「それはダメです!京さんも来てください!」
グイッと京に近づき、圧をかけた
「行ってくれないと私……無理なんです!」
無理とはどういうことだろうか。飲み会に参加するだけ。ならば何も無理なことはないだろうが……
「私、京さん以外と喋れません」
「はい?」
京はハッとなった。思い返してみると確かに芹は京と白瀬以外と喋っているところを見たことがなかった
「白瀬がいるから平気だろ?」
「嫌です。香奈宮先輩と二人はキツイです」
「なんで⁉︎」
完全に拒絶された白瀬
「ならいい機会だし、飲み会で他の人と話したらどうだ?」
「無理ですよ」
迷うことなく無理だと宣言する芹
「なんでだ?」
「この会社の女性はみんな私のこと嫌いなんですから」
入って一ヶ月が経とうとしていた今現在。そんな短い期間で会社の女性全員から嫌われるようなことがあっただろうか?
「わかりませんか?皆さんこの街の人達……ということは自治体メンバーの方々なんですよ。その自治体から要注意人物扱いされてる私ですよ?」
白瀬によると今、自治体会議で高らかに宣戦布告した香織と、京との意図的に起こすハプニングを阻止する芹、そして自治体のNO.4の役職を得ている女性の3人が自治体内では危険視されているらしい
「なら、男の人と話せばいいだろ?大学上がりの高耶君とは年齢は違えど同僚なんだし」
「それも無理なんです」
女の人がダメな理由はわかった。……正直意味わからないが……男の人もダメな理由がわからない
「だって私、男性恐怖症ですし」
「男性恐怖症……?芹が?」
「はい」
思い返してみると確かにその予兆はあった
篤が話しかけてきた時も京の後ろに隠れていたし、部長が仕事の話をしている時もずっと目を合わせようとしていなかった
「なのでダメです。無理です。京さんの同行を希望します」
「……はぁ。わかったよ……ただしあんまり長居は出来ないからな?」
「……本当ですか!ありがとうございます!」
京は仕方なく芹のワガママを聞くことにした
ただ一つだけ疑問が生まれた
男性恐怖症ならば、なぜ京は大丈夫だったのか




