第14話 悪質な張り紙……?
「……遅くないですか?」
芹の告白を受けてから5分ほど経過していた。が、荷物を置きにいった香織がまだ戻ってこないのだ
待っている時間は10分を超えていた。上り下りには2分ほど要するがそれでももう戻ってきていてもおかしくなかった
「何してるんですかね……京さん?」
「……」
「京さん?おーい!」
「……あ!ああ……ごめん。ぼーっとしてた……」
心ここにあらずという言葉があるが、まさにその状態だった
「もしかして……さっきの告白のこと……意識してくれてます?」
いたずらに成功した子供のような顔で芹は京を煽った
「……まぁな」
「そうですかそうですか。意識してくれてますか。うんうん!」
こっちは気が気でないのに芹は呑気なことで。なぜ告白した後なのに平然としていられるのか……
「でも意識してくれてるところ悪いんですが、ちょっと様子見に行きませんか?」
「ああ……まあ確かに遅いな……見に行くか」
マンションの階段を上り、京達の住む階層に着くと、なにやら香織は扉の前で何かを剥がしていた
「どうした……ってこれは?」
香織の足元には大量の紙が置いてあった
「なにこれ……酷い」
〈卑怯者〉や〈出て行け〉などの趣旨の言葉が書かれた紙が50枚近く落ちていた
「これは酷いな……なにか思い当たる節はないか?」
「わからない……昨日来たばかりで挨拶も出来てないから……」
こんな張り紙をされる覚えはないようだ
「……その原因。私知ってますよ?」
「うわっ⁉︎」
京の背後にいつのまにか白瀬が立っていた
「香奈宮先輩!驚かさないで下さいよ!」
「ごめんねー。驚かせたつもりはなかったんだけどね」
「いや、いきなり背後にいれば驚くだろ……てかなんでいるんだ?」
「え?今日ずっといましたよ?」
芹と京はさらっと言われた恐ろしい言葉に背筋を凍らせた。てことは服の買い物をしてたところも見られていたようだ
「えっと……こちらの方は?」
「あ、お母さんは初めてだっけ……えっとこちらは香奈宮 白瀬先輩。私の会社の先輩です」
香織に懇切丁寧に白瀬を紹介した
「まあ!いつも芹がお世話になっております!」
「いえいえ!よく出来た娘さんで仕事覚えが早くてこちらも助かっております!」
お互い礼儀のある挨拶だ。香織の白瀬への第一印象は完璧だろう
「あ、私自身が私の挨拶してませんでしたね」
言うか?言うのか?言ってしまうのか?
「私は香奈宮 白瀬と言います。芹ちゃんの先輩で京先輩のストーカーです!」
「……ん?」
おかしな点に気づく香織。反応も芹そっくりである
「えっと……え?ストーカーさん?」
「はい!京先輩のハードストーカーです!」
ハードストーカーって……白瀬に出会わなければ聞いたことのない単語だろう
「京ちゃん⁉︎この人おかしいよ!」
この反応も芹そっくりだ
「まあまあ……仕事では頼りになるし……実害ないからセーフってことで」
「……まあ京ちゃんがそういうならいいけど……」
あれ?折れるのは早いんだ……ここは芹とは違うところだ
「そんなことよりも、この張り紙の原因と犯人を知りたいんですよね?」
白瀬はなぜこのような事態になったのか本当に知っているようだ
「まさかお前が……」
「いやいや!さすがに私じゃないですって!」
じーっと白瀬を見つめる京
「な……なんです?そ……そんなに見つめられたら……暴走しちゃいますよ?」
京はすぐさま目をそらした。暴走されるとなにされるかわかったものではない
「香奈宮先輩……原因がわかるのでしたら教えてくれませんか?」
芹は丁寧な口調で白瀬に頼んだ
「元々そのつもりだから大丈夫!さすがにこれは私でもやりすぎだと思うし」
ストーカーも十分やりすぎな行為だと思うが……
「とりあえず立ち話もなんですし……京先輩の部屋でお話ししましょうか」
「おい!なに勝手に決めてんだ!」
「まあまあいいじゃないですか!減るものではないですし」
ニヤニヤする白瀬。京の家に上がるための口実が出来たからだろう
「……何も盗むなよ?」
「盗みませんって。安心してください」
安心出来るわけないだろ……
ブックマーク500件突破ありがとうございます!
皆さまありがとうございます!
そしてご報告。
8月現在から20日までにかけて少しリアルが忙しく、今現在、二日に一回ペースですが、少し頻度が落ちるかも知れませんのでご了承下さいませ




