そんな冒険は望んでいない
――異世界から現れし勇者が魔王を討伐し、300年の月日が流れた。
大学時代をご存知だろうか。
艱難辛苦の受験戦争に打ち勝った学生のみが手にできる、人生で最も自由な期間のことである。
高校生の頃は学校、塾、自宅の3箇所を往復するだけの生活から一転、親元を離れひとり暮らしを開始する。アルバイトを禁止するような無粋な校則も存在せず、授業の出席日数を確保しつつ、日本国の法律さえ守っておけば、彼女を作ろうがバーベキューしようが旅行しようが何をしても自由な時間のことだ。ついでに言えば、春と夏の休みが馬鹿みたいに長い。2ヶ月とか休みがある。キング オブ フリーダム。それこそが大学時代なのだ。
大学の入学式を目前に控えた春休みを満喫する18歳の日本男児、カナデ・アオイも、例に漏れずこの夢の大学時代に思いを馳せていた。
高校時代は色々あった。ぶっちゃけ危うく留年もしかけた。しかし、なんとか切り抜けて大学合格を得た。大学生になれた。
大学の合格祝いに親に新しいスマホを買ってもらった。始まるぜひとり暮らしアパート暮らし。部屋も大学から程よく遠めのきれいめワンルームを確保した。貯めていたお年玉を奮発して購入した脚付きマットレスベッドは、もちろんセミダブルサイズだ。隣で寝てくれる人、絶賛募集中である。
「ワクワクが止まらないぜ」
最近伸ばし始めた髪の毛をかき上げる。アシンメトリーの前髪が最近目に入り始めた。チクチクする。
さようなら受験戦争。待たせたな大学時代。
「さぁ、大冒険の始まりだっ!」
カナデは高々と拳を真上に突き上げた――――――
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目の前の景色が一転する。オシャレなワンルーム カナデオリジナルから、ひんやりと重たい空気が漂う西洋の牢獄みたいなレンガ造りの建物の中へと切り替わった。
目の前には三つ指をついた少女が深々と頭を下げている。
「勇者様、どうかわたし達の世界をお救いください」
何か思っていたのとは違う冒険が始まってしまった。
初投稿です。よろしくおねがいします!
なろうのシステムがよく分かってないんで、何か無作法があったら教えてやって下さい。






