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小説家になろう!  作者: ひとひら
1/9

小説家になろう!始

「小説家だー!」

 部屋にて両手を握りしめ、叫ぶ。

「なによ? 急に。」

「?、 よー。」

振り向くと、お幼馴染の千尋が、ドアを開けたところだった。

「よー。」

千尋は、ツカツカと入って来て、オレを通り越し、本棚の漫画に手を伸ばす。

「小説家、良くない?」

目だけで千尋を追いかけつつ、訊いてみる。

「良いって・・・何が?」

ロングの黒髪が『またか』と、なびく。

すでに劣勢と悟ったが、怯むな、オレ。。。!

「楽して金が入る!」

握った拳は崩さない!

「売れたらでしょ?」

澄んだ瞳でチラリ・・・痛い(泣)。

「売れるようなの書けばいいんだろ!?」

必死の抵抗。

「だいたいあんた、まともな文章書けるの?

あたしとのLINEでさえ、意味不明の日本語じゃない。

幼馴染だからわかるようなもんでしょ?」

「今時と言え。」

「共通の言語になってない。」

ぅぐっ・・・。

「それに、この間はなんだっけ?」

お目当ての漫画が決まる。

部屋の主がどっちかわからん・・・長年だから仕方ない、と、そこは諦める。

「漫画家・・・。」

「何日続いた?」

追討ちをかけるチラリ・・・刺さる(汗)。

「・・・一日ぐらい…。」

「半日持たなかったでしょ!? はい、おしまい♪」

(オレの!)ベットにうつ伏せになり、足をパタパタ読み始める。

幼少の頃よりつちかったその態度は天晴そのもの。

「アレは仕方ないだろ!?あんなに難しいなんて思わなかったんだから!」

寝転んでる相手へ、必死に訴えかける。

「で、その前はなんだっけ?」

ぐっ!?

「その前の前は?」

連打のボディーブロー!・・・ダ、ダメージがっ!!

千尋はページをめくりつつ、

「小説家だって、結局おんなじこと言って終わるんだろね~。」

気の抜けた話し声だが、漫画を読む表情は真剣そのもの。

『おい(汗)・・・。』

数々の前科のため、心の中にその言葉はしまっておこう・・・。

「小説だったらオレでも書ける!」

あ、スカートに唾飛んだ・・・黙っとこ(^^;)。

「ちょっと! ツバ飛ばさないでよ!」

なんて視界の広さだ(汗)。

「わっ、わりィ。 ・・・今回はできそうな気がするんだよ!」

「そもそも動悸が不純なのよ。小説家が、楽なわけないでしょ?

ずーっと考えて文字にして、一日中、机とくっついてるようなもんなんじゃないの?

それで売れなかったらショックでしょ?

ヒロにそれを受け入れるだけの根性あるわけないじゃん。」

その通り!・・・は!? いかんっ! 納得してはいかん!!

もう高校2年生。

ここはなんとか男の意地を見せねば。

「いやっ! あ・・『なんちゅう目で見るのだ(汗)』・・る・・・とはいわないが!、これからつけてく!

動悸が不純でも原動力には変わらん!」

千尋は少し興味を持ったようで、漫画から目を外し、意地悪そうに、

「ふーん。じゃあ、どんな小説書くのよ?」と、オレの顔を見た。

「ん~、長編スペクタクル異世界ファンタジーなんてどうだ?

それとも歴史物か?

いやいや、恋愛小説なんかも捨てがたい♪」

虹とキラキラいっぱい、輝きに満ちた表情で答えてみせる。

千尋は先ほどと打って変わった、固まってしまった表情をスーッと元に戻すと、

異世界に舞い戻って行こうとした。

今回は言うぞ。

「おい・・・(汗)。」

「スペクタクルの意味は?」

「!?。。。」

「歴史、得意だったっけ?」


「いや、まぁ、追々勉強すれば・・・。」

「ましてや、恋愛小説なんて絶対無理に決まってるでしょ?」

「・・・なんで断言できるんだ?」

「あんた、恋愛ってわかってんの?」


「・・・、ま~あれだ、・・・そのー・・・(汗)。」

「中学の時、クラス一緒だったことのある美咲ちゃん覚えてる?」

「? ん~・・・。」

「黒縁メガネの。」

「あー! 黒縁、覚えてる。」

「小島美咲ちゃんね(^^;)・・・話した事あるよね?」

「ん~…たぶん。何回か話したような気がする・・・それが?」

千尋は、オレの表情を観察した後、

「やっぱムリね。」

そう言った。

『は?意味わからん。』

「話の脈絡、無さ過ぎねーか?(汗)。」

千尋は、右手で軽く【あっちに行け。】、という仕草と共に、

「もういい。」

と言って、態勢を整え、異世界に舞い戻ろうとする。

「!意味分からんが、そこまで言うんだったら、恋愛小説書いてやろうじゃねーかっ!」

「はいはい。」

「絶対だからな!」

「んじゃ、期限は?」

「ん?」

「だから期限。いつまでに書き上げんのよ?」

「1週間!」

「無理。」

「じゃ、1ヶ月!」

「3ヶ月。」

「よ~し!3ヶ月だな! すんげ~の書いてやっからな!

心臓バクバクで、救〇飲みたくなるようなやつ書いてやる!」

なぜかCMが過ぎった。

「まぁ、せいぜい楽しみにしてるわよ。あ、今日ごはんウチね。」

「♪ おぅ!」

締めの会話が、一番重要だったりする。


千尋と我が家は、家族ぐるみの付き合いだ。

もっとも、オレの母さんは、オレが小さい頃に病死した。

なんとなく記憶がある。

やさしい人だった。

母さんが亡くなって、父さんが男手ひとつでオレを育ててくれた(くれている)。

でも、仕事が忙しく、帰りが遅かったり、長期の海外出張なんかもしょっちゅうだ。

そのため、千尋の父さん母さんが、オレのことを気にかけ世話を焼いてくれる。

飯なんかも当たり前のように一緒に食べさせてくれるし、千尋がうちで作ってくれたりもする。

オレも多少はできるようになったのだが、千尋には全く敵わない。


そんな一緒に育って来た様な千尋だが、あまりに身近過ぎて、気にも留めなかったことがある。(まー、わかったところで気に留めるつもりはないのだが。)

千尋は菜食顕微・・・? 。。。! 才色兼備のようだ。

確かに見た目そこそこ(学校の連中に言わせると、学内1、2を争う美人らしい)で、成績優秀。

勉強すれば、間違いなくトップ取れると思う。

誰とでも気兼ねなく話すし、裏表のない性格。

以前ふと、そんな千尋に『負けないことってなんだろう?』 と、考えたこともあるが、

オレは早々と白旗をあげることにした。


昔の話だが、千尋はオレの母さんの葬式で、ずっとそばで泣いてくれていた。

母さんが亡くなって、オレは悲しくて寂しかったのだが、千尋が泣いていることが、

とても辛かった。

「チーちゃん泣かないで。」

と、オレは言った気がする。

「ヒロくんは、チーが守るからね!」

泣きじゃくりながらも、千尋は言ってくれた。

はっきり覚えてる。


「何よ?、人の顔ボーっと見て。だらしない顔が、ますますだらしなくなってるわよ。」

千尋は気味悪そうにいう。

「うっせい!黙ってりゃオレだって、多少はイケメンに見えなくもないんだぞ!」

「黙ってればね。(笑)。」

ぐっ!? ヤなやつだ。。。

昔の思い出を大切に仕舞いつつ、『小説で見返してやる!』と、フワッと軽く、

心に決めてみた。


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