階段落とし
誤字報告ありがとうございます。
助かります。
「偽物ってどういうことよ!アンタ達説明しなさいよ!」
ルビーさんが男子生徒達に詰め寄る。
「本気でもないお前なんかに本物の宝石なんて贈るわけないだろ」
「それでも庶民街で扱われている物より上質なはずだ」
「見極められないお前が悪いだろ」
「偽物の令嬢には偽物がお似合いだよ」
男子生徒達の言葉にルビーさんは顔を真っ赤にして怒る。
「やはりルビーさんはそれらが偽物だと知らなかったのですね」
「知ってたらあんな風に見せびらかすような振る舞いはしないはずですわ」
「あんた達知ってたの!?」
「「「「ええ気付いてましたわ」」」」
やっぱり周りは気付いてたのね。
良く出来た品だけど、貴族として教育を受けていた私達にはすぐわかるわよね。
「知ってて教えないなんて!」
「あら友人でもない他人にそんな事で話しかけたくもありませんわ」
「同じ学年の方達は皆知ってますわ。貴方はそれを教えてくれるお友達がいないだけですわ」
「あの、皆さん。ルビーさんからの慰謝料ですが、彼女は平民であり、商いの術もない庶民です。どうでしょう、彼女の支払い能力を考え慰謝料を減額するというのは」
私の言葉に令嬢達は一瞬渋い顔をする。
当たり前だよね。
散々嫌な事言われて、傷つけられたんだから。
でも金貨800枚なんて一生掛かっても無理なんじゃないかな。
「癪ですが彼女の奇行のおかげで婚約破棄できましたわ」
「散々嫌な言葉を吐かれましたが、皆が彼女のことを嘲笑っていることを知っていましたので辛くはありませんでしたし」
令嬢達は溜息をついてポツリ、ポツリ話し始める。
「貴族ではない彼女は今後一切関わることのない方ですし、早く支払いを終了させてもらって関係を断ちたいですし」
「何も一生借金で苦しめる気はありませんわ。噂が本当であれば帰る家もないでしょうし」
「馬鹿にしないでよ!なんでアンタ達にまで見下されないといけないのよ!アンタ達はルビーに婚約者を取られた可哀想な女なのよ!それにルビーは貴族なるのよ!爺さんが子爵になるんだから!」
ルビーさん!
プライドが高いのもいい加減にしなさいよ!
もう、知らないからって許される問題じゃないわよ。
「ふふふ。セレスティーヌ様、減額は致しませんわ。その方がこの人も思い知ると思いますわ」
ああやっぱり?
そうなっちゃうよねー。
他の令嬢も同じ意見みたい。
「皆さん、ちょっとお待ち下さいな!ルビーさん!お嬢様が子爵になられると仰ってましたがそれはローウェル元騎士爵のことですか?」
「そうよ!そこの女達と同位爵になるのよ!あっ半分は男爵位か。アンタ達覚えておきなさいよ!ルビーを馬鹿にしたこと後悔させてやるんだから!」
「はぁ。ローウェル様なら既に子爵位に陞爵しています。現在はセレバート子爵家の開祖にして現当主様です」
「あら!もうなってるのね!じゃあルビーはセレバート子爵令嬢じゃない!ルビーのこと庶民だって言ったこと取り消しなさいよ!」
「はぁー。貴方が陞爵したことを知らないか疑問に思いませんか?」
「ふん!爺さんとは親しくしてないんだから仕方ないじゃない。家に居た時も顔を合わせてないんだし」
「貴方が陞爵したことを知らないのは、貴方がセレバート子爵様と親類関係ではないからです」
「そんなの知ってるわ。血の繋がりはないもの」
「そういうことではありません。血の繋がりだけではなく、書類状でも他人なのですよ!」
「はぁ!?そんなはずないわよ!だって母さんがパパと結婚して私はセレバートの籍に入ったわ!」
「貴方の義父親はセレバート子爵様の籍から抜かれてますよ。大方手続きを家令に任せてろくに確認もしなかったのでしょう」
「なっ!?そんなはずないじゃない!」
ルビーさんが私の方へ詰め寄ってくる。
うぅ、ちょっと怖い。
私が怖がっているとアル様がスッと私を庇うように私の前に来てくれた。
「聞いた通りだ。君の母親との婚姻、君との養子縁組の前に分籍の手続きがされ、セレバート子爵子息は書類上は他人となっている。一応息子ということで家から追い出す事はしなかったようだが、君の義父も母親も既に邸宅を出ている」
「母さん達を追い出したっていうの!?あのジジイ!」
「いや、君の母親は君の犯した問題の責任を問われないように逃げたようだ。義父はギャンブルの借金が払えず、強制労働に行った」
「は!?」
寝耳に水といったような顔してるわ。
当たり前か。
だれもルビーさんに教えてあげなかったんだから。
「だから、ルビーさんが貴族にはなれませんし、それどころか、この学園に在籍することも難しいのです。幸い学園は入学の際に行った下調べが不十分で、入学を認めた学園側にも非があるとし、学費さえ納めれば在籍が出来ます。この学園を卒業出来れば職に就くことだって出来るかもしれません。令嬢達には慰謝料を減額して頂き、支払い開始を卒業後にして頂けるよう交渉するつもりでした」
「「「「セレスティーヌ様…」」」」
「セレスティーヌ様がそこまで彼女の今後を憂いているなんて」
「なんてお優しいのでしょう」
「セレスティーヌ様のお優しさに心がうたれましたわ」
「私、セレスティーヌの希望に添いますわ」
1人が私の提案に頷いたら他の令嬢も同じく同意してくれたわ。
良かった。
「減額や支払い等はまた日を改めて法制省を通してお願いします」
「はい、そのようにしましょう」
「ルビーさん、学費についてですが、学費は学園内で仕事をするれば大丈夫ですよ」
トイレ掃除や花壇の手入れに食器洗い。
働き場は幾らでもあるし、庶民棟の生徒達も生活費の為に働く人もいるわ。
ルビーさんは学費を稼がないとだから休み返上で働き続ける必要があるけど。
「……」
ルビーさんは放心している感じだけど大丈夫かな?
私達は部屋を出る。
このまま裁判は終了しお開きになり、男子生徒達は父親によって連れて行かれた。
ルビーさんだけが中々動こうとしない。
本当に大丈夫かな?
「セティー、これ以上の深入りはダメだ。これからの事は彼女自身が決めなくてはいけない」
アル様にそう諭され、私はルビーさんの事をを考えないようにした。
そうよね。
彼女自身が決めて変わらなければいけないのよね。
「セティー様」
「ダミアン様、マリー様こんな所でどうされたのですか?」
廊下の途中でマリー様に声を掛けられた。
休日なのにこんな所に居るなんてどうしたのかしら?
「先程問題の男子生徒と、そのお父様方とすれ違いましたわ。無事に裁判が終了したようですね。おつかれ様です」
「ありがとうございます」
「ダン、皆さんと先を歩いてもらっていいかしら?セティー様にお話があるの」
「それはいいがあまり距離を開けるなよ」
「ええわかってるわ」
「じゃあアル様も先に行っててもらえるかしら」
「ああわかった」
私はマリー様ゆっくり歩きながら話をする。
「セティー様、改めておつかれ様です。そしてありがとうございました。セティー様が用意して下さった記録のおかげで接近禁止令が取れましたわ!これで彼女が学園に残っても安心です!」
「いえいえ大したことではありませんよ」
「それでも私が調べて残していた記録だけでは足りませんでしたから、助かりました」
「ふふ。元々困ったら協力する約束でしたもの。マリー様こそ男子生徒達の家に釘を指して頂いたようでありがとうございます」
廊下を進み階段前まで来た。
アル様達は長い階段を降りて階段の踊り場にいるのが見える。
マリー様に手を握られ向かい合う。
「私の突然のお願いを聞いて頂いてありがとうございます。それ以外も皆さんのおかげでダンと恋人になれましたわ。私今とても幸せです」
「2人が結ばれて本当に良かった。令嬢達もこれから新しい道へ進み幸せになるはずです。本当に良かった」
ドンッ!!
え?
急な衝撃と共に体が宙に投げ出される。
「アンタ達のせいよ!!」
落ちていく中で怒りを露わにしたルビーさんの顔を視界の端に捉えた。




