ダミアンの頑張り②
誤字報告ありがとうございます。
大変助かっています。
ダミアンは模範生専用の温室を借り、そこにマリエットを呼び出した。
(ダンたら、どうしてこの温室に……人に聞かれたくないことでもあるのかしら?)
マリエットが温室に着いた数分後にダミアンが来た。
「マリー、すまない待たせてしまったな」
「私も今来た所よ。それよりお花届いたわ。いつもありがとう」
「いっいや、いつも同じ物で済まないな」
「そんな。私は嬉しいのだから気にしないでいいのよ」
マリエットは笑顔で答える。
「マリー、今回は花とは別にこれも受け取ってほしい」
「えっ?」
ダミアンはマリエットにラッピングされた小さな箱を渡す。
「ありがとう。ここで開けてもいいかしら?(ダンが私に物を贈るなんて。一体何かしら?)」
箱の中からは金の土台に黒い宝石がはめられた襟飾りだった。
黒い宝石の中央は金色の光を放ち金で縁取りをされた装飾には同じく金で出来た花がついていた。
「黒……」
贈り物を見たマリエットは目を開き固まる。
「きっ気に入らなかったか!?これでも俺なりに考えてデザインしたのだが」
「……」
マリエットは言葉なくポロポロと涙を流す。
「マッマリー!?済まない!やはり俺のセンスでは。これは無かったことにしてくれ!」
「!?ちっ違うわ!」
「そうなのか?」
「えぇ、もちろん。あの、ダンは自分の色を相手に贈る意味は知っているの?」
「それくらい、流石の俺でも知っている」
ダミアンの返事にマリエットは息を飲む。
(ということは、そういう意味で受け取ってもいいのね)
「嬉しい……。貴方の色を貰えるなんて思っていなかった。ずっと幼馴染、家の繋がりだけの婚約者でしかないのだと思っていたから」
「そんな事はない!」
「大事にされているのはわかっていたわ。でもそれはあくまで幼馴染だからだと思っていたの」
「すまない。俺の態度がそう思わせていたんだ」
「違うわ。私が関係が壊れるのを恐れていたせいだわ」
「いや俺の方こそ婚約者という立場に安心してしまっていた」
ダミアンは眉間に皺を寄せ苦い表情をする。
(どうしましょう。嬉しいのに上手く伝えられていないわ。ダンを困らせるつもりなんてないのに)
(マリーを困らせるつもりはないというのに。気の利いた言葉の一つも掛けてやれないとは)
2人の間に沈黙が流れる。
(このままでは、ダメだ)
沈黙を破ったのはダミアンだった。
「実は…その襟飾りは俺とお揃いなんだ」
「えっ!?」
驚くマリエットにダミアンは自分の制服の襟を掴みマリエットに見せる。
そこには黒色襟飾りがされていた。
「ダンがペア飾りを!?(そういうの苦手なはずなのに!?)」
「ここ数日ずっと令嬢達のペア飾りを見てただろう?その、殿下達に襟飾りが流行っていると聞いたんだ」
「気づいていたの!?(というか、ダンが流行を気にするなんて!)」
「ああ、それで殿下達に相談したこの襟飾りもヴィクトルさんの手を借りて作った。マリー、今回皆さんから指摘されて自分がダメな婚約者だと気づいた」
「そんなことないわ。ダンはずっと前から私にとって最良の婚約者よ。ダン、私は貴方のことを幼い頃からずっと……」
「マリー、それは俺から言わせてくれ」
ダミアンがマリエットの言葉を遮り、マリエットの手を取り、片膝を地面に着く。
「マリーいや、マリエット。君を幼い頃から好いていた。私、ダミアン・モンタニエは永遠にマリエット・ファビウスを愛することを誓う。どうかこの先手を取り合って一緒に歩んでほしい」
「はい…喜んで。私マリエット・ファビウスはこの先永遠にダミアン・モンタニエを愛し、支えになります」
立ち上がったダミアンは繋いでいた手に力を入れマリエットを自分の方へ引き寄せ、マリエットを抱きしめる。
「あぁ、良かった。マリー、受け入れてくれてありがとう」
「私の方こそ。ありがとう、ダン。今とっても幸せだわ」
温室に日が差し込み、暖かい光が抱き合う2人を祝福する様に照らしていた。
「えっと、その、私達は恋人ということで良いのよね」
「もっもちろんだ」
ダミアンとマリエットの2人は顔を赤くしながら抱擁を解く。
「あの、それじゃあこれからは、甘えても良いかしら?」
「もちろんだ。今までの分も頼ってくれ」
「じゃあさっそく。この襟飾り着けてくれないかしら?」
「ああ、わかった」
ダミアンはマリエットから襟飾りを受け取り、マリエットの襟に着けようと近づく。
(!?ちっ近いな。抱きしめた時も思ったが良い匂いがする)
(はぁぁ。抱きしめられた時と違ってダンの顔が近いわ)
((胸の鼓動が……))
「着けたぞ」
「ありがとう。どうかしら。似合っているかしら?」
「ああ、似合っている。だが、殿下達が言っていたようにもっと装飾を入れた方がもっと似合っていたかもな」
「あら?それじゃあダンとお揃いにならないわ。それにこの石はブラックスターサファイアでしょう?ふふ、金の光が黒に包まれてる。まるんで私がダンに包まれてるみたい。嬉しい…」
「!?(可愛すぎないか!?)」
「あの、後もう一つ我儘を言うなら腕を組んでも良いかしら?」
「腕を?」
「エスコートを受けるような場所じゃないのはわかっているわ。エスコートと関係なく、腕を組んで歩いてみたいの。ダンは人前でそう言う事は嫌いだと思うから、もちろん人の居ない所で」
「確かに人前では嫌だが、人が居ない所ならそれくらい大丈夫だ」
「嬉しい!ありがとう!ダンも私にしてほしい事があったら遠慮なく言って大丈夫よ」
「俺は十分マリーに色々してもらっていると思うが」
「もっとよ。私はダンを頼りにしてるけど、ダンも私を頼ってほしいの。何か思いついたら言ってほしいわ」
「ああ、わかった」
「そうだ、マリーに一つ頼み事がある」
「何かしら?」
「このまま殿下達に報告しに行ってもいいか?」
「恥ずかしい気もするけど、お世話になったものね。良いわよ、行きましょう」
そうして2人は腕を組んで温室を出た。
学園のサロンにアルベルトやセレスティーヌ達が集まっていた。
「「「マリー様!おめでとうございます!」」」
セレスティーヌ、マリア、エメリアの3人はマリエットを囲んでキャッキャと騒いでいる。
「ダン!おめでとう!上手くいって良かったね!」
「ヴィクトルさん色々ありがとうございました。殿下達にも相談に乗って頂きありがとうございました」
「嫌、俺とアルは特に何もしてない。それにしても良い石を選んだな」
「これもヴィクトルさんが勧めてくれたおかげです」
「2人の絆が強く結ばれたのは喜ばしいことだな。ダンも珍しく笑っているしな」
「えっ?」
「ああ、アルの言う通りだな。無表情が多いダミアンが珍しく笑っている」
「それだけ幸せを感じているんだろ」
「そうですね、幸せだと思います」
「凄いよ!あのダンが惚気てるよ!」
男性陣も2人に祝福し、皆で2人の恋人成立を祝う。
祝いの最中シャルエラントがアルベルトに近づき耳元で囁く。
「あっさりダミアンに先を越されたな」
「ゔぐっ!」
「全く。これでは俺かヴィのどちらかが相手を見つける方が先かもな」
「ゔるさい。私達だって進展している」
「まぁ、お互い頑張らねばな」
第一号カップルはダミアンとマリエットです。
まだルビーの事もあるのでこの2人には頑張って貰います。




