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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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中間報告

今日は令嬢達と中間報告会だわ。

はぁ。

この結果を見て辛い思いにならなければいいけど。


仮にも婚約者が他の女性をチヤホヤしてるんだもん。

恋愛感情がなくても嫌だよね。

子供の頃からの繋がりや絆は?って思っちゃう。


もしアル様が他の女性を好きになったら私は耐えられないだろうな。


「アルベルト様!ここ教えて頂けます?」

「ああ、ここは先にここを計算して、この公式に当てはめると良い」

「ありがとうございます。よろしければ昼食がてら他の問題も教えて頂けませんか?」


少し離れた所でクリスティーヌ様とアル様が話している。

教室が静かなおかげで話が聞こえてしまう。

アル様は普通にクリスティーヌ様に接してるけど、クリスティーヌ様は目をキラキラさせてる。


モヤモヤする。

アル様なんて答えるんだろ。

今日は私と一緒に2人で食事をする日だけど。


「すまない。今日はセティーと2人で食事をする大事な日なんだ。 解らない問題は教員に聞いてくれ」


アル様はそう言うと私の方へ来て私の顔を見るなり口を開く。


「セティーどうしたんだ?まさか私がセティーとの大事な約束を破ると思ったのか?」

「えっいやそういうわけじゃないの。ただ食事はいつでも出来るし、そのもしかしたらって思っただけ」

「いつでもではないだろ。2人きりで食事をするのは週に1度だけなんだ。私はセティーとゆっくり食事が取れることが嬉しいと思っているがセティーはどう思っているんだ?」

「もちろん私だって嬉しいわ。みんなでお喋りしながら食べるのも好きだけど、アル様と2人での食事はその、特別だもの」


アル様と2人で食事をして以来週に1度こうして2人きりで食事を取る約束をした。

アル様が私との約束を優先してくれて嬉しい。

恥ずかしいけど、特別って言えたわ。

伝わると良いんだけど。


「良かった。ではその特別な時間を過ごしに行こう」


私はアル様にエスコートされて教室を出た。




「セティー、最近何か悩み事があるんじゃないか?」

「えっ?なんで?」

「普段より眉が下がっているし、心なしか元気がない気がする。例の女生徒に手を焼いているのは知っている。余程であれば私から学園に進言しよう」


もう、なんで分かっちゃうの?

気づいてくれたの嬉しいなぁ。


「ルビーさんの指導はこないだので最後にしたの。5度の指導報告書も提出した上でルビーさんに改善する意思が感じられないと報告もしたわ。だから私達が責任を負うことはあったとしても大事にはならないわ。ただ、ルビーさんが親しくしている男性達の素行調査を婚約者である御令嬢達に中間報告をする日なの」


今後学園内で正式にルビーさんと男性達を訴えて断罪することになるだろう。

そうなると生徒会も立ち会う必要があるので、アル様にもこれまでの経緯と素行調査の結果を話した。


「これは……。 酷いな」

「彼女達の気持ちを考えると辛くて。いくら政略結婚で割り切れてるとはいえ、幼い頃からの関係性や絆を傷つけられて平気なはずないわ。みんな貴族令嬢だから表に出さないだけで、本当は悲しいはずよ」

「そうだな」

「彼女達もルビーさんや男性達に注意したのよ。婚約者の男性より格下の家だから注意はしてもハッキリとした証拠がないと強く言えないと言っていたわ。それに、今回は1人の女性に対して4人の男性が群がっているから問題に出来るけど。男性にとって『浮気は男の甲斐性』本当ならそれくらい女性が目を瞑らないといけないのよね」


今回の事で自分に有利な条件で嫁げれば良いけど。

気まずくて辛い結婚になるわよね。

それに、結婚後も浮気される可能性だってあるし。


「浮気されていることなんて、知らずにいる事が幸せなのかも」

「セティー。男の甲斐性などただの言い訳だ。政略結婚だからと言って不貞を働いて良いはずはない。だから、今回のことは令嬢達が納得する形で決着出来るように我々が裏付けをしよう。より強い証拠さえあれば相手に対して要求も出来るからな」


アル様は落ち込む私の頭を撫でながら諭すように話す。


「そうね。こうして立ち向かうことにした彼女達の為にも頑張らなきゃ。彼女達の気持ちを共感しすぎたのか、私まで心配になっちゃった」

「そうか。 ん?心配?セティー!私はこの者達とは違うぞ!?断じて違う!」


アル様は持っていた調査書類を叩きながら力説する。


「ふふ、わかっているわ。アル様はそんな人じゃないもの」


こんなに誠実な人はいないわよ。

婚約者がアル様で私は幸せだわ。


「わかってくれているなら良かった。その、セティーはどうなんだ?成人してから夜会に参加することも増えただろう?好意的に映った者は居たか?」


それって、惹かれる男性が居たかってこと?

居るわけないじゃない!?

私はアル様一筋だもの!

だいたい、普段から攻略対象のイケメン達と過ごしてるのだから、一般男性に惹かれるわけないわ。


「ふふ。普段からアル様やお兄様達のような素敵な人達と過ごしてるのに、他の男性に惹かれる筈ないじゃない。逆にその質問をするのは私の方だわ」

「それこそある筈がないな」

アル様は当然だと言うように言い放ち、私達は互いにクスクス笑いだす。


良かった。

アル様の好みってゲームのエメリアなのよね。

裏表がなくて、何事にも一生懸命で一緒に居て癒されるような存在。

私とは全然違うのよ。

正直私も人間だし、裏表はあるわ。

公爵令嬢として対応してる時の私って自分でも冷たいと思うわ。

そうなると癒しキャラでもないのよね。

それに前世の記憶でアル様の好みを知っていても、長年の性格や考え方は中々変えられないわ。


この先何があるかは分からないけど、アル様の事が好きという気持ちは負けないわ。

私が努力しようと思う原動力はアル様への気持ち。

だからこそ、アル様と気持ちがすれ違いになることが怖い。



「ねぇアル様、私はこれから公爵令嬢として、アル様の婚約者として振る舞わないといけないわ。それはアル様に対してもよ。だからその、あの」

「セティーわかっている。私とてそうだ。公の場では私は王太子だ。婚約者であるセティーに厳しくしなければならないことだってある。公での言動全てが私の本心とは思わないでほしい」

アル様は私の手を握って切実な顔をする。


アル様……。

同じことを思ってたなんて。


「私、王妃教育で感情を殺す訓練を受けて、夜会でも王太子の婚約者として振舞うことで、お話に出てくる王子様に嫌われる婚約者になるんじゃないかって怖かったの」


「私達には、共に過ごしてきた思い出と積み重ねた絆がある。それに私のために、毅然と振舞ってくれる婚約者を嫌う筈がない」

「アル様、ありがとう。今日は弱音ばっかり言ってごめんね」

「学年が上がって生徒会や模範生としての仕事が増えた上に指導で休みが潰れてストレスが溜まっていたのだろう」


うっ確かにレオ君に会えないのはストレスだったけど。


「それに王妃教育もいよいよ大詰めだ。肉体的疲労に加え精神的にも疲労していたんだ。弱音を言いたくもなるだろ。その、なんだ婚約者なのだならこういう時こそ私に甘えてくれると嬉しい」

「アッアル様。アル様も疲れている時や弱音を言いたくなった時は私に甘えてほしいわ」

「ゔーん。あまりセティーにカッコ悪い所を見せたくはないのだが」

「えっだって、私だって、アル様の婚約者なんだし。 頼りないってことはわかってるけど、少しは役に立ちたいの」


「はぁ。セティーはわかってないな。 セティーが居るだけで私は癒されるし、頑張ろうと勇気付けられている」


アル様はまた私の頭をポンと撫でる。

うぅ。

そう言われるのは嬉しいけど、なんか上手くかわされた気がする。


「じゃあお互い悩み事は隠さないことにしまょう。これからたくさん悩んだり迷ったりすると思うけど、互いに相談して解決していきましょう」

「ああ、そうしよう(遠回しにプロポーズされた気分だ)」





「皆さん、お集まりですね。それでは中間報告を行いましょう」

「「「「お願い致します」」」」


私は令嬢達に報告書を見せる。


「残念ですが、皆さんの婚約者の方々はルビーさんとかなり親しくしているようですわ」


報告書の内容はルビーさんと男性が腕を組んで歩いている様子やルビーさんが男性の頬にキスをしている様子が書かれている。

他にも男性達がルビーさんにプレゼントを送っていることが書かれている。


ただ2人で会ってお話ししたりするだけならまだしも、このような触れ合いは御法度だわ。

令嬢達の方を見るとみんな手が震えていた。


そうだよね!?

やっぱり隠し通せないほど悲しいよね!

なんて言葉を掛ければいいのかな!?


「ふふ、ごめんなさい」

「私達我慢出来なくて」

「覚悟はしてましたのよ」

「でも、やっぱり。 こんなことって」


書類で顔が隠れているけど、令嬢達の声は震えている。


「皆さん!気持ちはわかりますが、落ち着いて」

「落ち着いていられませんわ!」

1人の令嬢が声を上げる。


そうだよね。

でも事実を受け止めないと前に進めないわ!

ここは私がしっかりしないと!


「「「「ふふふ。 アハハハハ」」」」


令嬢達はいきなり笑い出した。


えっなに?

ショック過ぎておかしくなっちゃった!?


「取り乱してごめんなさい」

「でもおかしくって」

「こうも期待通りの結果が出るなんて!」

「これで断罪できますわ!」


え?


「あの?皆さんはこの結果にショックを受けているんじゃないんですか?」


「そんなわけありませんわ」

「元より私達の間に愛なんてありませんもの」

「家のため仕方なくこの婚姻を受け入れただけですもの」

「というか前から上から目線の物言いに腹が立ってましたの」


令嬢達は皆笑顔だ。


えぇー!?

そうなの!?

私の心配はなんて要らなかったのね。


「セレスティーヌ様!」

「はい、なんでしょう?」


「「「「私達、正式に婚約者とルビーさんを訴えます!」」」」

令嬢達は声を揃えて言う。


「つきましては、このルビーさんへのプレゼントをもっと詳しく調べられませんか?」

「もし、必要以上に散財しているようでしたら、そこも彼らの弱みになると思います!」

「最近ギャンブルを覚えたと聞きましたわ!そこも調査をお願い致します!」

「領地の運営についてもお願致します! 確か領地の一部を任されているはずです!」


「わかりました。ただ学園内以外の調査は私的に人を雇う必要があります。それなりにお金が掛かりますよ?」


学園が行ってくれるのは学園内で起きている出来事だけだし。

学園内で訴えることが出来るのも学園内で起きたことだけ。

それ以上は本当の裁判になるわ。

まぁ弱みにはなるよね。

特にプレゼントなんてルビーさん関連だし。


「費用なら心配しないで下さい」

「私達4人で出せますわ」

「実は両親にも打ち明けているんです」

「初めは婚約者を引き留められない私のせいだと言われましたが、お母様は協力してくれるようです」


「そうなのですか?」

「はい。それにこの報告書を見せればお父様だって協力してくれるはずです」

「そうですか。それなら徹底的に調べましょう」

「「「「はい!」」」」


「それと、ここ最近でルビーさんや婚約者の方々と接触はありますか?」

「ついこないだ 『ルビーを除け者にするな』 と言われました」

「私は 『ルビーだけお茶会に誘わないなんて、なんて嫌な女なんだ』 と言われましたわ」


なっ!?


「なんて言い分なのかしら。きちんと対応出来ました?」

「その場では知らぬ存ぜぬで流しましたわ」

「私もそれなら学園に正式に訴えればよろしいと言いました」

「それが一番ですね。実際そのような事はないのでしょう?」


私の質問に令嬢達の顔は渋る。

えっ?

本当なの?


「確かにルビーさんはクラスでも浮いてますし、女生徒だけの授業でペアを作る際は必ず余ってしまうんです」

「お茶会も一度はお誘いしましたが、つまらなそうにして居ましたし、お礼の手紙もないのでそれからは誘っておりません。きっと他の方も同じだと思いますわ」


なんだ。

除け者にしてないじゃない。


「それなら大丈夫ですよ。万が一向こうからそのような訴えがあってもきちんと返答出来ますよ」

「流石セレスティーヌ様です」

「頼もしいですわ!」

「むしろ名誉毀損だと反撃しましょう。後は決して1人にならないで下さい。出来るだけ大人数で行動して下さい。この4人以外で行動している時こそ、アリバイがある時間なのです」

「どういう事ですか?」

「先程の婚約者からの訴えはルビーさんが男性にそう話しているから起こったことでしょう。この攻撃は私達に効かなかったと分かれば次の行動に出るはずです。私の想像ですが、自作自演で何かしてくるかもしれません」


ざまぁ系ヒロインは確か自分で自分の物を壊したりしてたわ。


「確かにあり得ますわ」

「他にも私物は何度も確認する必要がありますよね」

「知らない内にルビーさんの物を入れられる可能性がありますわ」

「気をつけませんと。こちらが有利な立場でなければ訴えることが出来ませんわ!」


「ですから細心の注意を払って下さい。私物はなるべく少なくして自分の物と他人の物が分かるようにして下さい。休み時間は教員の所を訪ねるのも良いかもしれません。教員なら立派な証言者ですし」


念には念を入れた方がいいわ。

まぁこんな事起こらない方が良いに決まってるけど。

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