お披露目会①
ついに、パーティーの日がやってきた。
鏡に映る自分の姿を確認する。
自分のアメジストの瞳に合わせたラベンダー色のプリンセスラインのドレス。
ウエスト部分に、大きめのリボンがあり、ドレスの裾には、綺麗な刺繍がされていて可愛い。
髪は編み込みのハーフアップ。
編み込みの部分には、小さい花の髪飾りがあちこちに付いている。
うん!
自分で言うのもなんだが、可愛いじゃないか!
これなら悪い印象はないだろう。
公爵家の馬車に乗り王宮へ向かう。
一緒に行くのはお兄様とお母様だ。
父は宰相の仕事があるのですでに王宮にいる。
「セティー、緊張してるのかい?大丈夫だよ!会場では兄様がちゃんとエスコートするから!」
「ありがとうございます。お兄様」
うーん。
我が兄ながらカッコイイな。
正装姿はさながら王子様だ。
アルベルト様に会うことが、緊張してないと言えば嘘になる。
だか、それ以外にも不安要素がある。
家族以外の貴族に会うのはこれが初めてなのだ。
ゲーム内での貴族というのは、陰湿な人が多い。
社交界は嘘と見栄で塗り固められている。
まだ私は子供だが、なにせ我が家は公爵家なのだ。
どうしたって注目されるし、値踏みされるだろう。
もしかしたら以前のセレスティーヌの性格が噂されているかもしれない。
不安だ。
それに他の貴族の子供達に囲まれたら対応出来る自信がない。
そんな情けない姿は公爵家の人間として見せてはいけないだろう。
絶対にお兄様の隣を離れないようにしよう。
そう決心し、気合いを入れた所で王宮に着いた。
案内人に連れられ会場に着く。
「マルヴィン公爵家、御到着です」
いよいよだ。
私達が一歩会場内に入ると周りの視線が集まり、ざわついていく。
なに!?
なんかヒソヒソされてる!?
やっぱり、セレスティーヌの悪さが知られてて、悪口言われてるのかな?
うつむきたくなる気持ちを抑えて、イザベル夫人に習った通りに笑顔を作り前を向く。
私は見た目は子供でも中身は大人だ。
こんな事に負けてはいけない。
しばらくして、やっと周りを見る余裕が出てきた。
庭園を眺めてみる。
色鮮やかな花。
それと綺麗に整えられた草木と芝のコントラスト。
中央には大きな噴水も置かれ、少し離れた所には東屋も見える。
ベルサイユとかに出てきそうな庭園だなぁ。
行ったことないけど。
外国に旅行に来たみたいで、気持ちが上がるなぁ。
次に周りにいる貴族の子供達が目に入った。
あれ?
男の子はお兄様と同じような正装服だけど、女の子の格好がみんな派手じゃない?
セレスティーヌのボツにしたドレスではないけど、みんな飾りが盛り盛りだ。
私の格好、地味かな?
みんな、アルベルト様や他の貴族にアピールするために気合い入ってるだけなのかな?
今日の目的はアルベルト様に悪い印象を与えないことだけど、印象にすら残らないかも。
地味って思われたらヤダなぁ。
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「見て、マルヴィン公爵家の方々よ」
「相変わらず公爵夫人の美しさは少しも陰らないわね」
「御子息も立派になられて」
「御子息の隣にいる令嬢が、あのセレスティーヌ嬢か!」
「まぁ、なんて可愛らしいのでしょう」
「着ているドレスも可愛らしい。花の髪飾りも庭園の花々と合ってますわ」
「庭園に舞い降りた花の妖精のよう」
「宰相殿が溺愛しているのも納得だな」
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周りがザワつく中、
国王夫妻と王子であるアルベルト様の入場が告げられる。
私は不安と期待が入り混じる、心臓の鼓動が奏でる音を聞きながら待った。