誕生
学年末。
このテストで来年のクラス分けと模範生が決まるのね。
今回も頑張ったけど、不安だわ。
廊下に結果が貼り出される。
1.
アルベルト・ヴェスタトール
シャルエラント・ハムダン・ビン・
モハメド・ラーシド・ナハラセス
3. マリア・エルランジェ
4.
セレスティーヌ・マルヴィン
エメリア・バルシエ
マリアとシャル様が上がった分、落ちちゃったよー!
「はぁ良かったぁ。私もセティーやエメリアのように模範生になりたいから頑張ったのよ」
「俺も国の為にも一度くらいは1番を取らなくてはと思ってな」
「ゔーん、悔しいです!」
「それにしても今回はハイレベルだったな」
アル様の言うとおり1位から4位まで点差10点もないし、総合点はいつも通りだけど。
こう順位が落ちると、やっぱり悔しいー!
「絶え間ない努力と類い稀な高貴さを認め新たな模範生とする」
やったぁー
模範生になれたわ!
学年末で順位を落としたから、無理かもと思っていたから嬉しいわぁ!
でも大事なのはこれからよね!
模範生になったからには成績も落とせないし、マナーや教養も、もっと厳しく見られるんだから。
「また今年は奨学金生の中からも、類い稀な成績を収めた者がいる。協議の結果、1年のリュカ君も新たな模範生に加えることとなった。奨学金生の中から模範生が出たことは大変喜ばしい。他の生徒の皆も研鑽に努めてほしい」
リュカも壇上に上がってきて模範生のブローチを付けてもらう。
リュカは庶民棟の方でずっと学年1位だし、先生達の手伝いもよくしてるって言ってたから選ばれることに疑問は抱かないけど、リュカは貴族じゃないから、私達以外の貴族の生徒から当たりが強くならないといいけど。
「セティー、模範生なんて凄いよ!今日はお祝いをしよう!」
「お兄様!ふふ、ありがとうございます」
お兄様と家に帰る途中で不安に思っていることを聞いてみる。
「あの、リュカはとても優秀な生徒で模範生に選ばれるのは当然と思いますが、彼と貴族の生徒達の間に摩擦が起きませんか?」
「元々彼を模範生にしようと案が上がったのは貴族と平民の学内での格差を減らすためだよ。大丈夫だよ、他の貴族の生徒が文句が言えないくらい、成績やポイントに大差がついてるから」
「そっそんなに差があるんですか?」
「そうだよ。テスト結果は貴族と平民分けて発表するけど、彼はアル様と並ぶくらい優秀だし、生活態度も大変真面目だからね」
アル様と同じくらいって凄すぎない!?
そもそも私達は英才教育されてるのに、それと並ぶって凄すぎよ!
「それに彼は家が商会のせいか、色々な人に対応することが出来るし大丈夫だよ」
「それは、そうですね」
とにかく、リュカは大丈夫そうね!
「あっあと、お兄様は臨時教師延長の件、どうされるんですか?」
来期から元々いた先生が戻ってくる。
ゲームのお兄様ルートはパラメーターが一定に達してないとお兄様は王宮の仕事に戻りFriend end となりゲームはここで終了する。
前世ではここで何度躓いたことか!
「本当は王宮の仕事との両立はそろそろ難しいし、断ろうと思ったんだけど。セティーがアル様に積極的になってるからね。心配だし延長の件は受けることにしたよ!」
あれ?
エメリアのことじゃなくて私?
もうシナリオ通りじゃないからなのかな?
「でもそれだとお兄様が大変じゃないですか?私なら心配いらないですよ」
お兄様が学園にいないのは寂しいけど、お兄様が無理して体を壊したら大変だし。
「流石に授業の資料を作ったりするのは大変だから助手を雇うことにするよ」
「助手の方を個人的に雇うんですか?」
「うん。 学園側には許可を貰ってるよ。王宮でも女性が活躍出来る職場が必要だと言われてるし、文官である私がまず率先して女性に仕事をと思ってね。とりあえず性別は問わずに募集してるよ」
「お兄様の助手なんて、応募が殺到しそうですね」
「ゔーん。一応学園を卒業した人を募集してるから大丈夫だと思うけど」
お兄様、自分の魅力を侮ってはいけませんよ。
はあ、真面目な女性だといいなぁ。
「セティーちゃん!ジル!お帰りなさーい!」
家に着いて早々、お母様が駆けてくる。
「「!?妊婦!!」」
お母様!?
あなた妊婦ですよね!?
しかもそろそろ生まれそうなのに!
「エッエレオノーラ!お願いだから大人しくしてくれ!」
「ちょっと早足になっただけよー」
「お母様、私とお話しましょう!椅子に座って、ゆっくり、お話しましょう!」
「あらーいいわねぇ。セティーちゃんには聞きたいこといっぱいあるのよ」
ホッ。
心臓に悪いわぁー。
普通の妊婦さんってこんなに動けないよね?
お腹に約8kgの重さがあるのに、お母様はなんであんなに元気なのよ。
「ふふふ。セティーちゃんたら少しは成長したじゃない!」
アル様との出来事を根掘り葉掘り聞かれ、物凄くニマニマした笑顔をされた。
ゔぅ恥ずかしい。
でもこれでお母様が大人しくなってくれるなら。
「さてと!そろそろ晩餐にしましょう!今日はセティーちゃんが模範生になったことをお祝いしなくちゃね!」
「はい、ありがとうございます!」
「セティー、おめでとう!さすが私の娘!」
「ありがとうございます」
「ジルもセティーちゃんも、あんなに小さかったのに立派な大人になったわぁ」
和やかに談笑しながら晩餐を頂く。
「あら?」
「母様、どうしました?」
「エレオノーラどうした?お腹の子が動いたのかい?」
お母様がお腹に手を当てて首を傾げる。
「うーん…。生まれるかも」
「「「えっ!?」」」
「ふふふ、今日はなんだか変だなぁって思ってたのよー」
お母様!
何を呑気な!
慌ててお母様を寝室に運び、産婆や医師を呼ぶ。
お母様がベッドに入ってからすぐに陣痛が始まり、産婆やメイドさん達がバタバタと動き、私達は部屋から出された。
何かしてなきゃ落ちつかないけど、出来る事ってないのよね。
「あぁー!エレオノーラ!大丈夫かな!?どうしよう!」
お父様は軽くパニックになっている。
「父様!3人目なんですから、少しは落ち着いて下さい!セティー、私達はここで母様と赤ん坊の無事を願おう」
「はっはい!」
なんか自分よりパニックになっているお父様を見て逆に落ち着けたかも。
それでも、心配なものは心配。
だってここは日本じゃないもの。
医療の発達は比べ物にならないくらい低い。
もちろん出産時の生存率も。
この世界での出産は命懸けよ。
私達は貴族だから、すぐに産婆を呼べるし、お抱えの医師や出産を手伝ってくれるメイドさんが居て、恵まれた環境だけど、リスクが無いわけじゃない。
ましてお母様は高齢出産。
心配だわ。
「△#%€☆♪○ △#%€☆♪○」
祈っていると隣でお父様がよくわからない呪文を唱え始め、何かを祈る動作をし始めた。
「お父様は何を?」
「よくわからないけど、何処かの国の神に祈ってるらしいよ。女の子が欲しくて片っ端から神に祈っていたらしいけど、この神に祈ったらセティーが生まれたんだって」
えー。
一国の宰相が他国の神を頼っていいのかな?
祈り続けること数時間。
「オギャー!オギャー!」
生まれた!
部屋からメイドさん達がバタバタと出てくる。
「赤ん坊は!?エレオノーラは無事なのか!?」
「旦那様、落ち着いて下さい。今医師が診ておりますから」
しばらくして部屋に入る許可が出た。
「エレオノーラ!大丈夫なのか?」
「エドったら大丈夫よ。それより、貴方の子よ。ジルとセティーちゃんも見てあげて」
「ああぁ!なんて可愛いんだ!」
私と同じ白銀の髪。
薄っすら目が開いて翡翠の瞳が見え、顔立ちはお兄様に似ている!
「「セティーに/お兄様に 似てる!」」
「セティーに似てるんだよ。ほら、この白銀の髪にこの愛らしい顔なんてそっくりだよ」
「いえいえ、見て下さい。この翡翠の瞳にこの綺麗なお顔立ちはお兄様似です!」
「ああ、セティーとエレオノーラやジルに似てるなんて!神よ!ありがとう!」
「ふふふ。みんなもうデレデレね!」
「はあ、なんて可愛いんだ!名前を考えないと!この可愛い子にピッタリな可愛い名前を!」
「ん?エドったら勘違いしてない?」
「ん?勘違い?この子は可愛い、おんな…」
「「おめでとうございます。可愛らしくて、元気な男の子です」」
お父様の言葉に産婆と医師が言葉を被せる。
「男の子ー!!?」
あっやっぱり男の子だった。
そんな気がしてたのよ。
「父様、男の子でもセティー似の子ですよ。良かったじゃないですか」
「そうですよお父様、お兄様似の綺麗な子ですよ!」
「ふふふ、ジル似なら私と同じ系統の顔立ちに育つわね。セティーちゃん似ならきっと性格も良い子になるわね」
「あっああ、そうだな!願い通り可愛い子が産まれてきた。エレオノーラ、ありがとう」
本当に無事に産まれてきてくれてありがとう。
あぁ、可愛いわぁ。
お姉ちゃんだよー!
これからよろしくね!




