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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第2章
76/236

前進 (アルベルト視点)

アルベルトside


男子寮の談話室。

「はぁぁぁー」

アルベルトが窓の外を見ながら溜息をついている。


アルベルトの溜息を聞いて、シャルエラントが読んでいた本をパタンと閉じる。


「アル、溜息がうるさい」

「なんだと!?親友が悩んでいるというのに、薄情だな」

「悩みか。大方、セティーのことだろ?」

シャルエラントはニヤッと笑う。


「うっ!」

「祭りの準備で忙しいからとセティーに避けられていたが、祭りが終わっても避けられているから落ち込んでいるんだろ?」


うっ図星だ。


ヴィクトルも話に混ざる。

「あれ?でもお忍びデートは上手く行ったんじゃなかったの?」

「デートが上手く行ったからこそ、今避けられてることが謎なんだろ」

「うーん。なんでだろうね?アル様、なんかしちゃったんじゃないの?」


何かは、確かにしたが。


「俺が思うに、何かしたのは祭り前と、祭りの最中だな。で?何をした?言ってみろ」

「何故私がやらかした事が前提なんだ」

「それ以外に考えられないだろ」

「くっ!だが、私は前にヴィが言った通りに自分に正直に行動しただけだ!」


アルベルトの答えにヴィクトルがキョトンとした顔をする。


「前に俺がアル様はヴェスタトールの王子じゃなくて、アルベルト・ヴェスタトール個人の感情を優先して正直に行動したらってやつ?」

「ああ、そうだ」

「うん、確かに言ったよ。俺は恋愛とか詳しくないけど、アル様はどこかで、王子である自分の立場とか考えちゃってるんだよ。だから遠まわしで解り辛いっていうかさ。セティーのことが好きって気持ちは王子とか関係なく、アル様自身の気持ちなんだからさ、アル様自身が思った様にした方が良いって思って」

「ほぅ、恋愛に疎いヴィにしては、良いこと言うじゃないか。それで自分の欲望のままに行動してセティーに嫌われたということか」

「えっ!?欲望のままって……。アル様、セティーに何しちゃったの!?」

ヴィクトルの顔が青くなる。


「ちっ違う!!決して不埒な真似はしていない!それに嫌われたわけではない!」


シャルの奴!なんてこと言うんだ!


「じゃあ何しちゃったの? 」


言えば絶対に揶揄われるな。

それに他人に自分の恋愛行動を言うのは少し照れる。


「男が照れても気持ち悪いだけだぞ。さっさと白状しろ」

「くっ!その、少しキスを」


「なんだ、それだけか」

「えっ!?キス!?」

2人の反応は対称的だった。


「キスなんて挨拶みたいなものだろ。 」

「貴族が手にするのはあるけど、俺は恥ずかしくて出来ないなー。家族間でも最近は挨拶のキスもしてないよ」

「あんな可愛い妹が居るというのに、挨拶のキスをしないのか?」

「子供の頃はしてたけど、俺らは双子の同い年でもう大人だし、しないよ。って今はアル様とセティーの話だよ!アル様、まさか口にしたの!?」

ヴィクトルが自分の口を指差し、慌てて言う。


「ちっ違う、こめかみと手首だ!」

「どんな場面でしたかは聞かないが、それがアル自身の気持ちに正直な行動なんだろ?」

「ああ、そうだ。だがそれで嫌われてしまったら」

「まぁ、心配することはないだろ」

シャルは興味を無くしたのか再び本を開く。


「シャル!私は真剣に悩んでいるんだ!」


コンコン。

談話室をノックする音が聞こえる。


「失礼致します。こちらアルベルト王太子様宛てでございます」

「ああ、御苦労。確かに受け取った」


「シャル様、セティーとアル様は本当に大丈夫かな?」

「あの2人はお互いが知らないだけで、両思いなんだぞ。2人の事で心配するとしたら第3者が横槍を入れて来た時くらいだ」


「セティーからの手紙だ!2人で話そうと誘われた!」


「ほらな」

「本当だ」


ああ良かった。

これでセティーと話が出来る。

2人きりで話がしたいと言うので、王族専用の部屋で一緒に食事をすることにした。




セティーが部屋に入ってきた。

自分が座っていたソファに座らせ、向き合って顔を合わせるが目を逸らされてしまった。


ガーン。

まっまさか本当に嫌われてしまったのか。


「違うわ!嫌いになんてなるはずがないわ!」


良かった。

嫌われてはいないようだ。

だが、依然として目を合わせてくれない。


私を避けていた理由を聞くと、予想に反した答えが返ってきた。


「嫌じゃなかったわ!嫌じゃなかったけど、その恥ずかしくてアル様の顔を見れなかったの!お祭りの時だって、手首にキスで消毒だなんて反則だわ!変装のおかげで顔を見てられたけど。ああ、ドキドキし過ぎて無理だわ!」


なんだこの可愛さは!?

恥ずかしくて顔が見れなかったなんて、可愛すぎるだろ!


意識してくれているということで良いんだよな。

前に聞けなかったことを聞いてみよう。


「その、それは私の事を男性として意識してくれていると思っていいのか?」

これでタダの友達だと言われたら、立ち直れない。


セティーから返事の言葉はなかったが、確かにセティーが俯いたままコクンと頷いた。


ああ!

やっと!やっと友達から異性として見られるようになった!

天使に祝福の笛を吹かれた気分だ。


抱きしめたい。


だが恥ずかしがらせて、また避けられたら嫌だな。

事前に言えば大丈夫か?



セティーが顔を上げ、自分の腕を横に広げる。

「どうぞ?」

「っ!」

可愛い!可愛い!


はぁ。

身長差があるから、座っていても目線を合わせると上目遣いになるというのに、そんな赤い顔で「どうぞ」なんて!

これで自分の言動が男心を刺激するということをわかっていないから恐ろしい。



そろそろ食事にせねば。

長テーブルでは遠いな。

そもそも、学食ランチを畏まって食べる必要ないんじゃないか?

何時もは皆とワイワイ話しながら食事をしているしな。

このままソファで食べた方がいいか。



運んできた食事を見て、セティーの食事の少なさに驚く。

以前よりも減ってないか?

またダイエットだろうか。

必要ないというのに。

しかし、女性にダイエットや美容に関して言うのは得策ではないと母上で経験済みだ。


だが、この間倒れたばかりだ。

少しは食べないと、また倒れてしまう。

この一口サイズのコロッケなら食べれるだろうか?


「アル様、あーん」

「えっ」


なんだ!?

なんで今日はこんなにも甘えてくるんだ!?


コロッケを食べたセティーは満面な笑顔を見せる。


うぅ、こっちを向いていたお陰で笑顔が目の前に。

手ずから食事を食べさせて、この笑顔が見れる。

まずいな。

ハマりそうだ。


お返しにとセティーも私に自分の食事を差し出す。


まっまさか、セティーから食べさせてもらえるとは。

少し戸惑ったが、素直に嬉しい。

顔を筋肉が緩むのがわかる。


ハッ!

いかん、いかん!セティーに緩んだ所だど見せられない!


その後表情を取り繕うのに必死になり、何も言えないまま食事を終えた。


なんだかお互い緊張してしまったようだ。

もう少しセティーを楽しませることが出来たら良かったんだが。

こういう時シャルやヴィの性格が羨ましい。


セティーを教室まで送っていこうと、ソファに座るセティーに手を貸すとセティーがふらつく。


危ない!

やはり無理をし過ぎなのでは!?

只でさえ学園と王妃教育で忙しいというのに、教会や孤児院への訪問に加え、最近では病院へ慰問に行っていると聞いている。

そこに祭りの準備が加わってまともに休んでいないだろうに。


救護室へ行くようにと勧めたが、大丈夫と断られた。


セティーは何時も大丈夫と言うが、大丈夫じゃないだろ!

ああ、なんでこんなに頑張り屋なんだ!


セティーが私の腕に手を添えて歩き始めるがやはりふらついている。


ああ、心配だ。

何時もは腕に軽く手を添えているだけだが、私に寄りかかって歩くセティーを支えようと、セティーの腰を自分の方へ引き寄せる。


教室に着いたらマリアとエメリアにセティーのことを頼もう。


人通りの多い廊下に出た所でセティーが周りを気にし始める。


ああそうか。

セティーとこうして学園内を歩くのは初めてだな。

私達は婚約者同士だ。

周りは注目するかもしれんが、とやかく言われることはない。

大方、私への評価を気にしているんだろう。

セティーは何時も他人の事ばかり心配する。

はぁ。

仕方ない。

セティーのことは私が心配するから良いとするか。


セティーを教室まで送り、マリアとエメリアにセティーを託し、自分の教室へと向かった。


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