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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第2章
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前進

アル様が部屋に入ってきた私に気づいてソファから立ち上がる。


「セティー、さぁ座って。まず話をしてから食事をと思っていたが、大丈夫だったか?」

「大丈夫よあの、ありがとう。この部屋も特別なんでしょう?」


そう言って一緒にソファに座る。


「あぁ。本来なら私はここで食事や休憩をしなければならないらしいが、私としてはセティーと一緒に居たいから、自由にしていたんだ。本来使うべき部屋を使っているだけだから、気にすることはない」

「それなら良かった」

「それで?2人きりで話したいこととはなんだ?」


あぁ!

やっぱり面と向かって顔を見ると恥ずかしくなっちゃう!


恥ずかしさのあまり目を逸らしてしまう。


あぁ私の意気地なし!


「祭りの準備で忙しくて学園でも中々顔を合わせないなと思っていたが、祭りが終わっても顔を合わせないし、皆と一緒に食事をしても目を合わせようとしない。祭りでは普通だったが、やはり私のことが嫌いになったか?」

アル様が悲しそうな顔をする。


「違うわ!嫌いになんてなるはずがないわ!」

「では何故私を避けていたんだ?」


ゴクリ。

言わなきゃ。

言わなきゃ伝わらないわ。


「その、前にアル様がお城で私をだっ抱きしめたじゃない?」

「ああ」

「えっとその時アル様の唇がこめかみに触れたと思うんだけど」

「ああそうだな」


っ!肯定された!

やっぱり勘違いじゃなかったのね!


「その抱きしめられるのもそうだけど、こめかみにキッキスされてからね」

「すまない、嫌だったか?」

「嫌じゃなかったわ!嫌じゃなかったけど、その、恥ずかしくてアル様の顔を見れなかったの!お祭りの時だって、手首にキスで消毒だなんて反則だわ!変装のおかげで顔を見てられたけど。ああ、ドキドキし過ぎて無理だわ!」


後半かなりヤケになりじぶんでも何を言っているのかわからなかった。


もう全身が火照っているのが分かるわ。

なんかヤケになり過ぎて余計な事まで口走った気がするけど、アル様にひかれたらどうしよう!?


チラッとアル様の方を見ると、アル様の顔も心なしか赤かった。


「その、それは私の事を男性として意識してくれていると思っていいのか?」


かぁーっとさらに熱くなった。


マリア達の言った通りになったわ!

凄い!

でもアル様に改めて言われると恥ずかしぃ!


恥ずかしくて小さく頷くのが精一杯だった。


「っ!セティー、抱きしめてもいいか?」

「えっ!?」


良いか、悪いかのどちらかと言われると、もちろん良いけど。


勇気を出し、俯いていた顔を上げ、少し手を横に広げる。

「どっどうぞ?」

「っ!?」


アル様にギューっと強く抱きしめられる。


はぁぁぁ!

ドキドキしてるのバレてないかな!?

恋愛ゲージでいうと今どれくらいなの!?

抱きしめられてるのって良い方向なのよね!?


はっ!?

そうだ、お兄様と接するようにって決めたんだった!


何時もは抱きしめられているだけだけど、アル様の背に腕を回して見た。


わぁ!

自分の腕を相手の背に回すと、さらに距離が近い気がする!


しばらくお互い動かずにいたが、だんだんとアル様が抱きしめる腕の力を抜いてきた。


「ゴホン、しょっ食事にしようか」

「ええ、そっそうね」


なんだろ。

気恥ずかしい。

今こんな恥ずかしくて私これからアル様の気を引いて告白なんて出来るのかな!?


世の中のカップルって凄くない!?

この全てを乗り越えて恋人になるなんて!

前世でリア充爆発しろなんて思って悪かったわ!


「セティー、隣の部屋に食事を運んでもらうつもりだったんだが、よければここで食事にしないか?」

アル様にそう言われて隣の部屋を見ると長テーブルの両端に椅子がセットされていた。


ああそうか正式な食事形式だと相手が遠いのよね。

ソファの前にはローテーブルがあるし、お皿を持って食べることになるから、マナー的には悪いかもだけど、食事を取るには問題ないわ。


「えぇ、いいわよ」


運ばれて来た食事はいつも食堂で食べているランチセットだった。


うん、いつも通り美味しい!

私のはサラダ中心のヘルシー料理。

アル様のはお肉や揚げ物があるガッツリ系の料理。

流石、健康成人男子!


「いつも思うが、本当にそれだけで足りるのか?」

「ええ。足りるわよ。少しだけどお肉もあるし」

うぅ、バザーに出すお菓子の味見をしてたら太ったのよ!!

さっき抱きしめられたけどバレてないかしら!?


「そうは言っても、もう少し食べないと倒れてしまうぞ。倒れたばかりだろう?ほらこれを。1つでも良いから食べて」


アル様はそう言っって一口サイズのコロッケがいくつか入った皿を出してきた。


これ1つくらいなら良いかな?


私はそう思ってフオッークで揚げ物を取ろうとしたが、ハッと気づく。


お兄様とはこうしてソファでお菓子とかを食べる時、食べさせて貰うことが何度かあったわ。

よっよし、やってみよう!


私はアル様の方を向き、目を閉じて口を開ける。

「アル様、あーん」

「えっ」


沈黙が流れる。


はっ外したぁー!!!

どっどうしよ!?

なんちゃってって惚けた方が良いのかな!?

あぁー。

穴があったら入りたいって、こういう事ね。


「あっああ、熱いから気をつけてたべるんだぞ」

そう言ってアル様は私の口に一口サイズのコロッケを入れてくれた。


よっよかったぁー。

目を開けるのが怖いけど。


口に入れられたコロッケを噛むと私は目を見開いた。


んー!

クリームコロッケだぁ!

美味しい!!


「ふふ、美味しい!」

「っ!そっそうか、良かったな」

「えぇ、あっアル様もこれ1つ食べる?」

「あっああ、頂こう」

「はい、どうぞ」

私はそう言ってサーモンのカルパッチョをフォークで刺してアル様の口元に運ぶ。


アル様はギョッとした表情をする。


しっしまった!

コロッケの美味しさにやられてつい調子に乗ってしまったわ!

出してしまったこの手をどうしたらいいの!?


どうしたら良いのか分からず、フォークを持つ手が震えそうになる。

ああもう!

やっぱり辞めとけばよかったぁ。

こんな恥ずかしいマネして、気を引くんじゃなくて、ひかれたりしたら、最悪。

なんだか泣きそうだわ。


手を引っ込めようとした時、アル様が私の腕をグイッと自分の方へ引いた。

そしてパクっとフォークに刺さったカルパッチョを食べた。


「うん、美味いな」

「そっそうでしょう。 ソースが最高よね」

「あっああ。 そうだな」


その後は黙々と食べ続けて食事が終了した。


はぁぁぁ。

体が熱いわ。

ドキドキし過ぎて、逆上せたみたいになってるわ。


なんとなくお互い黙り続けてるけど、やっぱりやり過ぎだったかな?


「そろそろ、行こうか。セティーは次の時間は自習だったな」

「えぇ、選択教科の先生がお休みだから教室で自習になっているわ。アル様は経済学の授業よね」


次の時間が自習で良かった。

こんな状態じゃあ授業に集中出来ないもの。


「今度の授業で行う『10年後の世界情勢と経済について』の討論準備だから、私の方も自習みたいなものだ。教室まで送っていこう」

「ありがとう。 相変わらず 難しそうな授業ね」

「だが大臣や官僚達と普段から話しているようなことだから、特別難しいことはない。むしろ学生という事で思うままに発言出来て楽しい」


アル様は普段から未来を見据えているのね。

流石だわ。


ソファから立ち上がる際にアル様が手を出してくれた。


逆上せたみたいになってるせいか、ちょっとフワフワするわ。


「セティー!ふらついているぞ!気分が悪いのか?」

「だっ大丈夫よ!」

ドキドキし過ぎて逆上せてるだけです!


「セティーはいつも大丈夫と言うが、無理し過ぎてるんじゃないのか?救護室へ行った方がいい」

「大丈夫よ!体はどこも悪くないし、どうせ次は自習だから平気よ!」

「はぁ。わかった。 その代わり、辛かったら必ず救護室に行くんだ。いいな!」

「えぇ、約束するわ」

「私の腕に捕まってくれ、教室までエスコートさせてくれ」

「あっありがとう」


アル様と学園内で腕を組んで歩くなんて!

注目されそう。

でも、ふらついているのは本当だし、大勢の前で転ぶよりはマシよね。


アル様の腕にいつもの様にそっと手を添える。


あっ!


本当にふらついているせいか、アル様の方へ寄り掛かってしまった。


「ごっごめんなさい」

「大丈夫だ。 そのまましっかりと私の腕を掴んでいてくれ」

アル様がそう言う私の腰を自分の方へ引き寄せた。


あわわわ。

こんな密着して歩くなんて!!


しばらく歩くと他の学生達が歩いている廊下に出た。


はっ恥ずかしいぃ。

なんかチラチラ見られてるし!


はっ!ダメよ!

アル様は私のことを心配して、こうしてくれてるんだから恥ずかしいなんて思っちゃダメよ!


なんとか教室に着いた。


はぁ、教室が凄く遠く感じたわ!


「セティー、アル様に送ってもらったのね」

「席はいつもの所を取ってありますよ!」


教室に入るとマリアとエメリアがきてくれた。


マリア〜!!

エメリア〜!!

私頑張ったよぉー!!


「マリア、エメリア。セティーは少し体調が悪いようなんだ。だが、セティーが大丈夫と言うから救護室には行かずに教室に来た。少しでも辛そうに見えたら救護室に連れて行ってほしい」

「あら、セティーったら無理したらダメよ?アル様、わかったわ!セティーのことちゃんと見てるから!」

「私達に任せて下さい!」

「ああ、セティーのこと、よろしく頼む」


そう言ってアル様は自分の教室へ行った。


「セティー、具合本当に悪いの?」

「体が少し火照ってる様ですけど?」

「具合は悪くないわ。ただ、その。ドキドキし過ぎて逆上せたみたいになってるだけなの」


私の答えに心配そうにしていた2人の表情が、ニヤニヤと笑っている表情に変わる。


「「何があったか詳しく聞かせてね/下さいね!」」

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