恋バナ
「それで?アル様と何があったの?」
「最近アル様を意識してたようですけど?」
マリアとエメリアと女子会で恋バナという名の尋問を受けている。
うぅ恥ずかしいよー。
「えっとその、最近、アル様からのスキンシップがね、えっと」
「あらキスでもされた?」
アリアが自分の唇に指を当て、サラッと言う。
マリアに言われて顔が赤くなる。
「ちっ違うわ!口じゃなくて、こめかみと手首よ!」
「ふふ、誰も口になんて言ってないわよ」
マリアがニヤッと笑う。
あぁ!嵌められたぁ!
「どんな場面でこめかみと手首にキスされたんですか?」
エメリアの言葉で、アル様とのやり取りを思い出しまた赤くなる。
「うぅ言わないとダメ?」
「無理には聞かないけど、セティーが悩んだままよ?」
「そうですね。セティーさんが嫌なら聞きませんけど、正確な情報がないと助言できません」
それ、遠回しに教えてって言ってるわよ。
「えっとこめかみの時は、アル様に私の存在が役に立ってるって言われて、嬉しくて私泣いちゃって。その抱きしめられて。これからも側に居てほしいって言われて、くっ唇がこめかみに!手首の時は、お祭りで暴漢に脅迫されてる時に手首を掴まれていたから、その、消毒だって言われて」
ああ!
恥ずかしくてしどろもどろだわ!
恋バナってこんなに難しいの!?
「それでセティーさんはどう思ったんですか?」
「えっ!?えっと恥ずかしいって思ったけど」
「恥ずかしいだけ?嬉しいとか、嫌な気持ちにならなかった?」
「ドキドキしすぎてよく覚えてないの。手首にされた時なんて、ハッキリとこの目で、自分の手首にアル様の唇が触れたのを見たせいか、ドキドキしすぎて意識を飛ばしちゃったの」
「それで最近アル様を意識しすぎてるのね」
「うん。アル様の顔を見ると思い出しちゃって。お祭りの時はアル様が変装してたから、何とか平気だったけど」
「でもこれは一歩前進ですね!」
「そうかしら?貴族だったら手にキスしたりするし、ハグは挨拶でも使われるでしょう?そりゃあ私だって、アル様に好かれてるかも、なんて思っちゃったけど、果たして本当にそうなのかわからないの!」
私の言葉にマリアとエメリアが口を開けてポカーンとした表情をする。
「鈍いと思ってたけど、これは流石に」
「でも少しは前進してますよ!」
マリアとエメリアがボソボソ話している。
なんだろぅ。
疎外感を感じて寂しいわぁ。
「セティーはアル様が気軽に女性に触れると思っているの?」
「そんなまさか!? そんなこと思ってないわ!アル様はそんな軽い人じゃないわ!」
「そうですよね!アル様は王族ですもん!立場ってものがありますから!あのシャル様だって女性に気軽に触れたりしませんから。そんな人が抱きしめたりキスをしてくるんでよ? どうしてだかわかりませんか?」
えっ?
どうして?
わっわからないわ!?
「「それは特別だからよ/です!」」
マリアとエメリアが口を揃えて言う。
少しして言われたことを脳が理解した。
「とっ特別!?そりゃあ友達としての特別とは言われたことあるけど、恋愛の意味で取っていいの?思い上がりではなくて!?」
「はぁ。だってそうでしょう?女性に気軽に触れたりしてはいけない人が自分にだけスキンシップを取ってくるのよ?」
「でっでも私達は友達……」
「本当にただの友達ならそんな過剰なスキンシップはしませんよ!まして、自分の婚約者になんて選んだりしませんから!」
「婚約は他になる人が……」
「「クリスティーヌ(様)が居たでしょ!」」
「クリスティーヌだけじゃないわ。他にも候補者がたくさん居たじゃない。一応だけど私も候補者だったし、友達を婚約者役にするなら私でも良かった筈よ。それこそ友達だもの、婚約はただの契約ってことで良かった筈だわ。それに、候補者から一人を決定するのに、アル様の承諾だって必要な筈よ」
「自分の結婚相手ですから、無関心ではないと思いますよ!」
「まして自国の貴族から選ぶわけだし、立場はアル様の方が上。いくら地位の高い娘でも、嫌なら幾らでも理由をつけて断れるでしょ!」
マリアとエメリアの話でだんだんと本当にそうなのかなって思ってきた。
「うぅー。思い上がってもいいのかしら? アル様が私の事を恋愛の意味で特別だと思ってくれているって」
「「もちろん」」
それって脈ありってことよね。
他の人から見た意見も聞いたわけだし、100%思い上がりってことはないよね!?
ゲームで言うとゲージが少し上がったってことよね!?
うっ嬉しいぃ!!
「悩みは解決した?」
「うん!2人ともありがとう!」
「あっでもセティーさんが最近アル様を避けてるのは問題だと思います!」
「ゔっ!そっそうよね。でも恥ずかしくて」
「それは直接アル様に言ってみれば?アル様も最近セティーに避けられてるって思ってるみたいだし」
「えっ!?」
「嫌われてしまったかなって落ち込んでましたよ」
「ウソっ!?どっどうしよう!?」
「だから直接アル様に、色々あって恥ずかしくて顔が見れなかったって言えばいいわよ。遠回しに意識してますって伝えられるし、一石二鳥よ!」
「そっそんな恋愛テクニックがあるなんて!?」
「恋は駆け引きって言いますし、これくらい普通ですよ!」
そうなの!?
2人とも凄いわ!
そうだ!
あの事も相談してみよう。
「あの私もね、アル様の気を引きたくて一応考えてたんだけど、お兄様に接するようにしてみようかと思うんだけど、どっどうかしら?」
2人が凄い形相になる。
うっやっぱりダメかな?
本当にやるとしたら、かなり恥ずかしいんだけど、これでアル様が私を意識してくれるなら、頑張るんだけど。
また2人がボソボソと話し始める。
「ジル先生に接するようにって、あの甘々な言動ですよね!?」
「ブラコン、シスコン兄妹だもの。その辺の恋人達より甘々だけど。それをアル様にやるとしたら、かなりの攻撃だわ」
「アル様ノックアウトされるんじゃないですか!?」
「でも分かりやすい攻撃の方がアル様にとってもいいかも!」
「たっ確かに!アル様だって、セティーさんが自分に好意があるってわかったら、もっと自信持ってアタック出来ますしね!」
2人はクルッと私の方へ向き直し、さっきの形相とは真逆の笑顔で口を開く。
「「すっごくいい作戦だと思うわ/います!」」
「ほっ本当に?馴れ馴れしすぎないかしら?」
「大丈夫よ!アル様から、こめかみと手首にキスしてきたんだから平気よ!」
「そうですよ!男性は女性心が分からないんですから、分かりやすく好意を示した方が良いですよ!」
「そっか。2人が賛成してくれるなら自信が持てるわ!2人とも本当にありがとう!さっそくだけど、アル様にお話をする時間を貰う事にするわ!マリア、エメリア、私頑張るわね!」
「「ええ!」」
アル様に手紙を書き、お昼を2人で食べることになった。
場所は学園のある一室。
王族の人だけが使える特別な部屋らしい。
アル様は普段私達と一緒に食堂やテラスを使ってるから、こんな部屋があるなんて知らなかった。
ゲームでも出てこなかったし。
えっと食事はいつもの食堂のメニューを運んでくれるって話しだから何も持たないで来たけど、大丈夫かな?
王族が使う部屋だけあって扉の前には見張りがいる。
ああ、私が他の誰にも聞かれたくないからって手紙に書いたばかりに、この人達に要らない仕事が増えてしまったわ。
「セレスティーヌ・マルヴィンです。お通し願えますか?」
「家紋を拝見させて頂きます」
そう言われて家紋の入った学生証を見せる。
うん、やっぱり警備はちゃんとしてるわね。
「ありがとうございます。どうぞ、お入り下さい」
中は豪華な作りで窓一つないのにとても明るい部屋だった。
そしてソファに座るアル様が居た。




