仲違い(舞台裏)
時は少し遡り、セレスティーヌが王宮の客室を出て行った時。
「どうしよう!?セティー、勘違いしたんじゃないかしら!?」
「お幸せにって言ってましたよね!?」
アリアとエメリアは慌てふためく。
「もう!どうしてアル様は会議に行っちゃったのよー!」
「そう怒るなマリア。会議よりも婚約者の女性を追いかけたとなれば、アルは女に現を抜かしていると言われ、セティーも立場が悪くなる」
「大丈夫だよ!明日学園で会うんだし、その時に誤解を解けばいいよ!」
シャルエラントとヴィクトルが発言する。
「ヴィ君の言う通り、明日1番に誤解を解きましょう!」
「えぇ、そうね。でもなんて説明すれば良いのかしら?セティーに告白する練習をしてたなんて言えないわ!」
「そうですよね。どうしましょう!?」
「言い訳は俺が考えておこう。大丈夫だ、すぐ誤解は解ける」
「そうだよ。ケンカしたわけじゃないし、いつも通りの仲良しに戻るよ」
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翌日学園にて
「セティーが来てないわ!」
「どうしましょう!?」
「セティーが学校に来ないなんて考えてなかったよ!」
マリア、エメリア、ヴィクトルがセレスティーヌが登校してこないことに慌て出す。
「俺達に会いたくないのかもな」
シャルエラントの言葉に一同が青ざめる。
「いっいや待て、もしかしたら体調が優れないのかもしれない!」
「もしセティーの体調が優れないなら、婚約者である、アルに一報あるだろ。昨日の状況はアルがエメリアに告白し、それを我々が見守るというものだ。正式な婚約者になったばかりだと言うのに、なんの相談もなく自分の友人に愛を囁き、それを友人一同が見守るなど裏切り行為だろ」
「ゔっ!」
シャルエラントに突っ込まれアルベルトは反論できない。
「その裏切りって俺達もだよね」
「「そっそんな!?」」
「ここで論争しても仕方ない。セティーに直接会いに行く」
アルベルトが教室を出ようとする。
「あっアル様、おはようございます」
「!?ジル!?」
「もうすぐ授業のお時間ですよ?どちらへ?」
「セティーの所へ行こうとしていた。学園に来てないんだが、何かしらないか?」
「へぇー。セティーの所へですか」
「皆さん、セレスティーヌは体調不良のため午前の授業をお休みします。 午後の授業には出ますので心配しないで下さい」
ジェラルドは教室の生徒全員に向けて言い放つ。
「セティーの容体はどうなんだ!?具合が悪いなら今日は1日休みにしてもいいと思うが」
アルベルトはセレスティーヌが体調不良と聞いて慌て出す。
「アル様、セティーのことでお昼休みにお時間を頂けますか?」
ジェラルドの目は笑っていなかった。
「ああ、わかった。それよりセティーは」
「セティーなら大丈夫ですよ。それでは授業が始まりますので私はこれで」
そう言ってジェラルドは去っていく。
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昼休み
アルベルトはジェラルドに訓練場へ呼び出された。
「なぜ訓練場なんだ?話なら教室でも出来るだろ」
「アル様、剣をお取り下さい。昨日も今朝もセティーは泣いていました!原因はアル様です!大事な大事な妹が辛い目に遭わされて、冷静では居られません!アル様に決闘を申し込みます!」
ジェラルドがアルベルトに剣を向ける。
「待っまてくれ!それには理由があるんだ!えっとマリアとエメリアがだな……」
「問答無用です!」
ジェラルドが剣を振り下ろしそれをアルベルトが受け止めてる。
「セティーはどんなことでも頑張る子なんです!王妃教育だって誰のために頑張ってると思ってるんですか!?」
「私だってセティーは努力家だと思っている!」
「だったら何故、セティーを悲しませるんですか!?セティーのことなんだと思ってるんですか!?」
「わっ私はセティーのことを好いている!セティーを悲しませたりなんかしない!」
アルベルトはジェラルドの剣を受け流しながら答える。
「っ!現実、悲しませてるんですよ!女の子は嫁ぐ家に、夫に尽くすことが求められる。故にセティーはこんなにアル様に尽くしているというのに!」
ジェラルドがさらに攻撃を続ける。
「おお!ジルは文官だと思っていたが武官も出来るのか」
「ジルさんは元々強いよ!銀の騎士の孫だし、剣術大会では注目されてたんだよ!」
シャルエラント、ヴィクトルがジェラルドの剣術に感心する。
「ああ、どうしよう!私がエメリアで告白の練習をしようなんて言ったばかりに!」
「いえ、私も止めなかったので私にも罪はあります!」
マリアとエメリアは顔を青くして震えている。
「とっとにかく止めないと。 ヴィ!お願い!ジル様を止めて!」
マリアはヴィクトルに懇願する。
「えっ!?」
「確かにジルの剣を止められるのはヴィしかいないな。そろそろ、アルもキツそうだ。ヴィ、俺からも頼む」
「ヴィ君、お願いします!」
マリアに続きシャルエラント、エメリアもヴィクトルに懇願する。
「わっわかったよ!とりあえずジルさんの動きを止めるよ!」
ヴィクトルは自分の剣を抜きジェラルドとアルベルトの間に割って入り、ジェラルドの剣を受け止め、そのままジェラルドの剣を弾き飛ばす。
「ヴィクトル!?」
「ジルさんごめん!セティーを悲しませたのは俺達にも原因があるんだ!」
「ジル様!そもそも私が悪いんです!アル様とセティーの関係が中々進展しないからと私が余計なことを!」
「俺やエメリアもその場に居たから、我々も同罪だ」
「でも誓ってセティーさんを悲しませようとはしてないんです!」
「はぁ。みんな落ち着いてワケを話してほしいんだけど」
「かくかくしかじかで、そういうわけなんです」
マリアが代表してジェラルドに説明をする。
「はぁ。事情はわかったけど、セティーが悲しんでいたのは事実だから早めに解決してね」
「はい!必ず誤解を解きます!」
「セティーさんが学園に来たらすぐにでも説明します!」
「うん。アル様、誤解とはいえ剣を振るったこと謝ります」
「いっいや良いんだ。驚いたが私が誤解されるようなことをしたのが悪い」
「ではセティーを迎えに行くから、みんなは昼食を食べに行ってね(とは言ってもみんなとは顔を合わせづらいだろうから、廊下側の席を取っておいてあげよう)」
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セレスティーヌが教室に入り、アルベルトと目が合うがセレスティーヌは顔をそらしてしまう。
「(かっ顔をそらされた!?)」
アルベルトはショックを受ける。
「今日はいつものシャツではないんだな。可愛らしいのも似合うな」
「昨日のことが影響してるのかしら?」
「俺らとお揃いは嫌ってこと?」
「昨日の今日ですし、仕方ないですけど、そうだとしたら悲しいです。髪飾りも違いますし」
「っ!」
アルベルトはエメリアの言葉でセレスティーヌが自分が贈った髪飾りをつけていないことに気がついた。
「(今まで服装に合わせ髪飾りを変えることはあったが学園ではいつも使っていてくれていたのに)」
「次の選択授業でセティーを捕まえるわ!」
「最後の授業ですし、そのまま教室で説明して誤解を解きましょう!」
「じゃあ俺達は終わり次第そちらに向かうとしよう」
だがしかし、マリアとエメリアは授業前にセレスティーヌに話しかけることが出来なかった。
「(ああどうしよう!授業の後にセティーを捕まえられなければ、今日の内に誤解が解けないわ!セティーと仲違いするなんて嫌!)」
「(セティーさん。セティーさんもリュカも他の女性と楽しそう。本当だったら4人で授業を受けている筈なのに)」
マリアとエメリアは表情が暗いまま、授業を受ける。
「セティーさん!!」
「セティー、話を聞いて!」
「エメリア、貴方がライバルでも、私は諦めるなんて出来ないの。だっだから、私は2人を祝福出来ないわ!」
((やっぱり誤解してる!))
「あっあのセティーさん、誤解なんです!」
「昨日のあれはワケがあるのよ!」
「ワケ?ワケって何?それにエメリアがアル様に大事な話があるって言ってたじゃない!?」
(ワケはシャル様が考えておくって言ってくれたから何も考えてなかったわ!)
(セティーさんを大切にしてほしいという話は言っても大丈夫だと思いますけど、昨日のあの場面に至った経緯は話せません!)
「おぉセティー、2人からちゃと説明されたか?」
「シャル様!?」
「アルとヴィクトルは教官に呼ばれているから後で来るぞ。ん?なんだこの雰囲気は?なんだ、まだ2人とも言ってなかったのか?昨日のアレは罰ゲームというだけだというのに」
「罰ゲーム!?」
シャルエラントのおかげで誤解が解け、セレスティーヌとアルベルトは話をするため中庭のベンチに座る。
そんな二人を茂みの向こうから覗きをする一行。
「誤解が解けてよかったです!」
「本当ね。でもシャル様、よくあんな話し思いつきましたね」
「一国の王子たる者、あれくらいの方便は当然だ」
「ねぇそれより、覗きなんて辞めた方が良いんじゃないかな?」
「ヴィったら何を言っているのよ!今こそ昨日の練習の成果を出す時なのよ!」
「そうですよ!アル様には頑張ってもらわないと!」
「確かにな。ここでセティーの気持ちを聞き出すくらいはしてほしいものだ」
「でもここからじゃあよく聞こえないよ」
「うーん。それもそうですね」
「アル様たら、手を握ったり抱きしめるくらいのことすれば良いのに」
「今のアルにそれは無理だろ」
そんなこんなで、セレスティーヌは話の途中で寝てしまい、アルベルトはセレスティーヌを抱え寮に運んでいく。
「いつになったら、セティーと恋人になれるんだ」
((((まったくだ!))))
新年度おめでとうございます。
3月は一度しか更新出来ず、申し訳ありません。




