話し合い
週末、王宮の応接室。
「すまない。待たせてしまったな」
アルベルトが応接室のドアを開けると
「アル、遅いぞ」
「アル様、会議おつかれー」
「今日はお時間ありがとうこざいます」
「早速だけど、話を始めましょう」
シャルエラント、ヴィクトル、エメリア、マリアが椅子に座っていた。
「いや待て、私に話があるのはエメリアだけではなかったのか?どうしてマリアやヴィにシャルまで居るんだ?」
「私もエメリアと同じ内容でアル様に話があるから同行させてもらったのヴィは付き添いよ。女性だけでアル様の所を訪ねるわけには行かなかったから」
「そう!俺は付き添い!」
「そうか。で?シャルはなぜだ?」
「俺は面白そうだと思ったからだ」
「シャル様! 私達は今から真剣な話をするんだから!」
「そうですよ!それとこの話は絶対に他言しないで下さいね! ヴィ君もです!」
「うん、わかった!」
「ああ、わかった。わざわざ学園から離れて場を設けるくらいだ。よほどのことなんだろう」
「では早速。アル様!セティーさんと恋人同士じゃないってどういうことですか!?」
「は!?どういうことと聞かれてもだな」
突然の質問に焦るアルベルト
「婚約までしといて恋人じゃないなんて!こないだの社交界で、セティーさんがアル様との間にあるのは友情だって言ってましたが、アル様はセティーさんのことどう思ってるんですか!?」
「何!?友情だと!?わっ私は、セティーのことを好いている(なぜ皆の前でこんな告白をしなければならないんだ!?)」
「それが聞けてホッとしました(マリアさんがお互いの片思いだって言っていたのは本当ですね)」
エメリアは表情を和らげる。
「エメリア私の言った通りでしょう?」
「はい」
「アル様、私も今まで2人を見守ってきて、アル様に協力してきたつもりよ。でも未だに2人の関係が進展していないのはどういうことなの?」
「なんだ、まだ告白してなかったのか?アルはヘタレだなぁ」
シャルエラントはやれやれと言ったポーズをする。
「ちっ違う!前に父上から王太子である自分から告白してはセティーが本心で答えることができないと言われていて。私だって今までセティーを振り向かせる努力はした!」
「そうだとしてもセティーは鈍感なのよ!もっと積極的に攻めないと!」
「マリア、恋愛に攻撃って必要なの?」
「ヴィは黙って!」
「はっはい」
ショボーンとなるヴィクトル。
「セティーさんって自己評価が低いです。本当は誰からも好かれる人なのに、そんなことないって思ってるんです!」
「そうよ!アル様が優しくて、友人だから自分を気にかけてくれているだけって思ってるんだから!アル様が自分のこと好きなのかもなんて思ってないのよ!」
「!?しっしかし、前にデートした時に、私の婚約者で居てくれるかと問たらすぐに私の婚約者であり続けると言ってくれたんだ!」
「それでなんでセティーは友情なんて言ってるんだ? その後セティーからなんて言われたんだ?」
今度はシャルエラントがアルベルトに質問をする。
「その後は……。エメリアのことをどう思っているか聞かれたな」
「えっ?私ですか?(なんでそこで私が出てくるんですか!?)」
「それ、セティーにちゃんと伝わってないだろ」
「「「たしかに」」」
アルベルトは皆の言葉に項垂れる。
「なっ何故だ!?何故こうも思いが伝わらないんだ!はっ!マリアとエメリアはセティーが私のことをどう思っているのか知っているか?本当にただの友人としか見られていないのか?」
「「自分で確かめて下さい」」
「なっ!?」
「セティーもアル様のことが好きだとして、他人の口から言われて嬉しいですか?」
「そうですよ!仮にただのお友達だとして、それでアル様の気持ちは変わっちゃうんですか?」
「ゔぐっ」
「全く。アルとセティーは思い合う番だと思っていたが、違うと言うなら、俺がセティーを貰ってしまうぞ?」
「はっ!?シャル、冗談はよせ」
「冗談ではないぞ。初めて会った時から俺はセティーを好いている。セティーなら金や権力ではなく、ただの俺を見てくれる。そう思ったんだ。それと、相手を思いやる大切さに気づかされた。だが、大事な親友の婚約者だ。その親友の婚約者を奪いたいと思うほど、良識が欠けているわけではないからな。セティーに俺の思いを言った所で、困らせるだけだと思っていたが、違うなら本気でセティーを口説きに行くぞ?」
「なっ!?」
「だから本気でセティーを口説いて恋人になれ。そうでなければ、俺は諦めがつかんぞ(それにどう見ても2人は両思いだろ。さっさとくっ付いてくれ)」
「シャル……。」
「セティーを幸せにしてくれ。マリアとエメリアもそれが言いたかったんだろう?」
「「もちろんよ!/です!」」
「もし、セティーがこの婚約が嫌になったら全力で助けるわ!」
「そうです!王家に楯突いてでも私達はセティーさんの味方なんです!」
「ハハ。本当にセティーは皆に愛されているな。最悪そうなったら俺の国にこい。喜んで受け入れよう」
シャルエラントはニカっと笑う。
「そうならないよう努力する。セティーを必ず幸せにしてみせる」
「「お願いします」」
「それでこそ俺の親友だ」
「所でヴィはどうなんだ?」
「えっ?俺!?」
「セティーのことどう思っているんだ?」
「えっ!?シャル様!?」
ヴィクトルはシャルエラントの質問に困惑する。
「まさか、ヴィまでセティーのことを好いているんじゃないだろうな?」
「アル様!?そんなわけないじゃん!セティーは俺にとっては恩人だよ!セティーのお陰で父様と仲違いしなかったし、周りの声も気にならなくなったし。それにさ、俺の後ろに隠れてばかりだったマリアが、こんなに強い女性になったのもセティーのお陰だから。俺はセティーに感謝しかないよ!だいたい子供の時にセティーと仲良くなりたいから家に行かせろって言ったのアル様じゃん!友人の好きな人、好きになったりしないよ!(流石の俺だってアル様がセティーのこと本気で好きなの知ってるよ!セティーが拐われた後、剣術の稽古増やしてたし、セティーのために強くなろうとしてるの知ってるんだよ!)」
「そっそうか」
アルベルトはホッとした表情をする。
「で?今後どうしていくんだ?このままじゃセティーは一生気づかないぞ」
「そこなのよね。デートだってしてるし、贈り物だってしてるのに」
「アル様の瞳の色のアクセサリーだって頂いてるんですけどね」
「あっそれ!俺未だに意味わかんないんだよねー」
「そうだった。セティーもヴィも意味を知らないんだった」
「知らないんですか!?自分の色の物を相手に贈ることは好意を示していることなんですよ!」
「へーそうなんだ。でもそれ、セティーも知らないんじゃない?」
「「「「はぁー」」」」
「セティーは男女の色恋について知らなさすぎではないか?」
「セティーさんのお父様もジル先生も過保護ですからねぇ」
「それにしたって。ロマンス小説にだってこういうのは出てくるのよ?」
「そうだ!セティーに改めて指輪を贈ろうと思うんだが、どう思う?」
「婚約式で贈った指輪があるのに?」
「あれは王家に嫁ぐ女性に代々受け継がれてきた物で私からではない」
「そうなんですか。でもきっとここでまた金とブルーグレーを使ってもセティーさんは気づきませんよね」
「そうなのよねー。あっ!ペアリングにしてはどう?」
「ペアリング?」
「海外の文化なんだけど、そちらでは恋人の証しに男性もお揃いの指輪をはめるそうよ!」
「ペアのアクセサリーなんて素敵です!」
「そうでしょ!これならいくら鈍いセティーも少しは意識するはずよ!」
「わかった。そうしよう」
「後はデザインと渡すシチュエーションね!」
「アル様は使いたい宝石や色はありますか?」
「2人ともするなら私の金とセティーの白銀を使いたい」
「良いわね!それと裏にメッセージを刻印するのはどう?」
「ほう?そんなことも出来るのか。面白いな。」
「その案も採用しよう」
「後はシチュエーションかぁ。普通に渡すのじゃダメなの?」
「ダメに決まってるじゃない!セティーを意識させる言葉と共に贈らないと!アル様!練習しましょう!」
「練習!?ここでか!?(皆の前でそんな恥ずかしいこと出来るわけないだろ)」
「はい!エメリアをセティーだと思ってやってみて下さい!私は監督をします(アル様がセティーの前でヘタレなのが悪いんですよ)」
「はい、ほらエメリアの手を取って下さい!」
「ゔっしっ仕方ない。『セティー、婚約の証しにこの指輪を君に贈ろう 』」
「ストップです!アル様、王太子モードは辞めて下さい。セティーに王太子の義務でしてると思われますよ」
「なっ!?皆の前で素の状態で出来るわけないだろ!?」
「だがセティーの前では緊張してしまうんだろう? ここで慣れろ」
「王太子の時のアル様と素の本当のアル様って結構わかりやすいもんね」
「アル様、頑張りましょう!」
「あぁ、わかった。では 『これからはただの友人では嫌なんだ。どうか私の思いを受け取ってくれ』 どうだ?」
「及第点って所ですね。エメリアはどう感じた?」
「もう少し攻めた言葉にしても良いかと思います。告白出来ないのはわかってますけど、セティーさんが自分にとってどんな存在なのかくらい言っても良いと思います」
「女性は中々鋭いな」
「女の人って怖いね」
とシャルエラントとヴィクトルが呟く。
「セティーが私にとってどんな存在か。『君の笑った顔が好きだ。これからも私の隣で笑っていてほしい。私にとってかけがえのない唯一無二の存在…「アル様、王妃教育が終わったので挨拶に来たわ!」
「「「「「えっ?」」」」」
ようやくここまで話が進みました。
多少無理矢理感ありますが、今後もどうぞよろしくお願いします。




