恋のゆくえ
「フッフフーン♫」
お祖父様が鼻歌を歌っている。
「ごきげんですねお祖父様」
お兄様がお祖父様に話しかける。
「当然だ!可愛い孫達とこうして一緒に居れるからな!ウチの息子達や他の孫達と違ってジルはエレオノーラ似でゴツくないし、セティーは妖精のように可愛らしい!」
お祖父様…
「確かにお兄様はお母様似で、綺麗な顔立ちですけど、他の従兄弟のお従兄様達に失礼ですよ」
「イヤイヤ、ウチはゴツくて、むさ苦しい男共しか居ないんだ。そこに癒しを求めるのは当然。男子しか生まれない家系でエレオノーラが生まれただけでも奇跡だったが、まさかセティーが生まれるとは神には感謝しかないな!」
「それは私も同意見です!」
お兄様がお祖父様に同意する
「おお!ジルにはわかるか!もちろんエレオノーラに似た美男子なお前が生まれて嬉しいぞ!」
「ありがとうございます。」
あの、2人とも盛り上がってる所申し訳ないんですけど、ここ家じゃないから!
そう、ここは学園の一室。
親族だけではなく、アル様達も一緒だ。
「相変わらず、セティーは家族に愛されてるんだな」
とアル様が微笑ましそうに言う
「ここまでくると、凄いわね」
「過剰な愛とは紙一重だな」
「愛されてるのは良いことですよ」
「銀の騎士って優しいんだな!」
マリア、シャル様、エメリア、ヴィクトルが少し離れた所で話しているのが聞こえる。
ゔぅ恥ずかしいよー!
「おおそうじゃ!青年の手合わせもいいが、アルベルト様を鍛えねばならん!」
「えっ!?モルガン殿、何故ですか!?」
「セティーの婿殿になろうという男はこの手で鍛えねばならん! エレオノーラを嫁にくれと言ってきたエドガルドは、ワシから一本取ったからな。セティーの婿になるアルベルト様にも、これくらいは耐えてもらわんとな!」
お祖父様!なんてことを言い出すの!?
「お祖父様!辞めて下さい! アル様が怪我してしまうかもしれません」
「しかし、セティーを守れないような軟弱者に、セティーを嫁に出すわけにはいかん!」
「嫁って……たかだか婚約候補者というだけで、そんな迷惑かけられません!」
「なっ!?そんな薄い関係性なのか!今からでも遅くない!婚約候補者を降りてワシと一緒に領地でゆっくり暮らそう!」
お祖父様…
言ってることがお父様と一緒だわ
「そんなわけない!私もセティーを守れるようになりたい! モルガン殿、ご教授願う!」
とアル様が言う
「アル様、無理しないで。お祖父様は領地の軍の指揮官はまだ現役だし、剣術の稽古よりも辛いはずだわ!」
「いや、モルガン殿にセティーとの関係性が薄いと思われることの方が辛い」
アル様、それってそんなに私を親しい友人と思ってくれてるのね。
嬉しい。
「アル様、俺から手合わせしてもらうからね! モルガン殿、 さっそく鍛錬場に行きましょう」
とヴィクトルが剣を持ちながら元気よく言った。
「おお!威勢の良い青年だな。良いぞ!」
鍛錬場に移動し、さっそくヴィクトルとお祖父様が模擬試合をする。
ヴィクトルは速さで押すが流石はお祖父様!
歳を取ってもなお、衰えない力と技術でヴィクトルを圧倒する。
しばらくしてヴィクトルが負けを認める。
「参りました。流石は銀の騎士!貴重な体験でした!」
「うむ。中々筋が良いな。まだ荒削りではあるが鍛錬を積めばもっと強くなるだろう」
「はい!精進致します!」
ヴィクトルの目、キラキラしてるなぁ
「では、アルベルト様どこからでも掛かって来て良いですよ」
「ああ!」
勇ましく向かっていくアル様カッコいい!
しかしあっさり負けてしまった。
仕方ないことだよね
だってヴィクトルでさえ歯が立たないんだもん。
アル様も剣術の稽古をしているけど、他にも公務や勉強と忙しいから、稽古の時間はそんなに多くないし。
負けたアル様は拗ねた顔をしている。
「くそっ、情けない所を見せてしまった」
「そんなことないわ!勇ましく向かっていく姿はカッコよかったわ」
私の答えにアル様はホッとした表情をした
「そうか。それなら良かった。私も鍛錬が足りないな」
「ハハハまだまだ若い者には負けぞ!しかし、こんなにあっさり勝ってしまうとは。アル様、自衛の為にもなりますし、もう少し剣術の稽古をしてはいかがか」
「ああ、そうする」
「まぁ、逃げ出さずにワシに向かってきたことは評価しよう」
良かった。
少しは認めてもらえたようで。
その後はヴィクトルとアル様、ついでにシャル様とお兄様に稽古をつけてお祖父様は領地へと帰って行った。
それから数日
今日はエメリアがお菓子を焼いてくれると言うので、テラスでお昼を取る約束をしている。
まずいわ!
教師に質問をしていたら遅れてしまったわ!
私は急ぎ歩きで中庭を突っ切っていると言い争う声が聞こえた
「生まれなんて関係ありません!努力したからこそ、その人の実力となって結果に繋がるのです!」
「うるさい!女は引っ込んでろよ!」
エメリアとヴィクトルが複数の男性に取り囲まれているのが見える。
「エメリアに突っかかるなよ!俺とお前達の問題だろ! 騎士を目指すなら口ではなく実力で示せよ!」
「なんだと!偉そうに!」
こないだの人達だわ!
またヴィクトルの悪口を言っていたのね
「何をしているのかしら?」
「「セティー(さん)!!」」
「「「セレスティーヌ嬢!?」」」
「剣術大会でも、自分の実力不足を棚に上げて、ヴィクトルの悪口を言っていたのを聞いてましたが、まだ悪口を言っていたのですね。」
私の言葉に男性達は慌てだす。
「違います!実際にヴィクトルが調子に乗っているからで」
「そうですよ!いつもエメリア嬢やセレスティーヌ嬢達に囲まれているし」
「マリア嬢へのアピールも邪魔してくるし」
ん?1人はマリアに気があるのね。
うん、ヴィクトルの判断は正しいわ。
私もこの人がマリアの相手だなんて嫌だもの。
「私達が誰と居ようと貴方達には関係ありませんわ。まぁ少なくとも、貴方達のように努力する人を陰で悪く言うような人は嫌ですけど」
「「「うっ」」」
「2人とも行きましょう。こんな人達に構っている時間が勿体無いわ。それにあまり酷いようだと、学園側に通報しましょう。騎士団への入団条件の1つは誠実であること。きっとこの方達は入団の資格を失うわ」
「えっ!?」
「当然でしょう?あっ貴方は現騎士団長の御子息ですけど、この件に関しては私も証言しますから。特別扱いはないと思いますよ。むしろ現騎士団長の御子息がこのような方でガッカリしました。」
私の言葉に男性は顔を青くする。
「クッ!ヴィクトル、悪かった。」
それだけ言って男性達は去っていった。
「セティーさんありがとうございます!」
「いいわよ。というか、エメリアがなぜ巻き込まれてたの?」
「剣の鍛錬をしてたらエメリアが来て、お菓子を試食させてくれたんだ!」
「そしたらあの人達が来て、ヴィ君の事を悪く言い始めたので、思わず反論してしまったんです」
「そうだったのね」
「エメリア、反論してくれてありがとう。でも俺は気にしてないから、次からは口出しちゃダメだよ。危ないからね。セティーもだよ」
「私は事実を言っただけよ」
まぁ一応公爵令嬢だし、仕返しなんてされないでしょ。
「そうですよ!あんな風に人の事を悪く言うなんて!ヴィ君は大切な友達だから。あんな風に言われるなんて悔しいです!」
「ありがとう。エメリアは優しいね。でも本当に気にしてないんだ」
「どうしてです?」
エメリアがヴィクトルに聞く
「前にも父様のことで、色々言われたんだけどさ。セティーのお陰で吹っ切れたんだよ!父様とも仲直り出来たしね!」
「そうだったんですか!流石セティーさんです!」
「うん!セティーは凄いよね!」
2人が素敵な笑顔を向けてくる。
「私は大したことしてないわ。それより早くテラスに行きましょう」
テラスに向かうと既に皆んなが揃っていた。
「遅いぞ、何をしていたんだ」
とシャル様から指摘される
「ごめんなさい。ちょっと色々あって」
ヴィクトルのことは黙っていた方がいいかな。
「俺が騎士団長子息達に絡まれて、エメリアとセティーを巻き込んじゃったんだ」
「「「「なんだって!?」」」」
「「セティー!怪我はないか!?」」
とアル様とお兄様に心配される
「騎士団長子息って、またあの人達なのね!セティーもエメリアもごめんなさい!巻き込まれて大変だったでしょう!?」
とマリアには謝罪される。
「それは大変だったな。こないだの剣術大会で睨んできた奴らだろ?」
とシャル様が言う
「私もエメリアも大丈夫ですよ。少し反論しただけですし」
私はみんなを安心させるように言った。
「悪口以外は特に実害がないから気にしてないけど、セティーが言ったことが効くかもしれないね」
「そうですね!セティーさん、カッコよかったです!」
げっ!2人とも言わないでよ!
争い事に口出ししたって言ったらお兄様やアル様に怒られるわ
「セティーが何かしたのか?」
アル様が冷たい表情で2人に聞く。
「セティーがあまり酷いと学園側に通報するって言ったんだよ。騎士団の入団条件の誠実さがないって脅したんだよ。」
「私達がヴィ君と一緒に居るのも気に入らないようでしたけど、セティーさんがキッパリ、裏で人を悪く言う人達は嫌って言ったんです!スカッとしました!」
2人はシレッと私が言った事をみんなに言う。
「セティー、前にも言ったが、正しい行いは良い事だが危ない!」
「そうだよ。逆恨みされたらどうするの」
「ごめんなさい」
やっぱりアル様とお兄様に怒られてしまった。
「それにしても、私達がいつも一緒に居るのが気に入らないって、くだらない理由よね」
マリアが呆れて、溜め息をつく
「そうでもないだろ。マリアとエメリアは人気が高い。しかも決まった相手が居ないんだからな。狙っている男は多いぞ。セティーだってアルが居るから、高嶺の花な存在だが、近づきたいと思っている奴は多いぞ」
とシャル様に言われた。
マリアとエメリア、やっぱり人気があるのね。
まぁエメリアはヒロインだし、こんなに可愛いもんね。
マリアだって可愛いし、身分が高いのに高圧的ではないし、礼儀作法はもちろん社交界にも詳しくて完璧な淑女だもんね。
でも私が高嶺の花なんて、アル様のお陰ね。
「そんな私が人気だなんて恐れ多いです」
「エメリアは可愛いもの。私は身分が高いってだけよ」
「そんなことないですよ!完璧な淑女と言われるマリアさんだからこそ、人気なんですよ!」
「ありがとう。まぁお陰げで余計なお見合いの話が来て困るけどね。エメリアも気をつけてね。貴族は政略結婚が当たり前だし、女性は家の決めた結婚には逆らえないもの」
マリアにお見合いの話が来てるって前も言ってたよね。
今のところお見合い自体受けてないみたいだけど、大変よね。
「はい。私も出来れば恋愛結婚がしたいです。あっでも私は元庶民ですし、身分も男爵位ですし、政略結婚の話しなんてこないですよ!」
「そんなことないわ!身分関係なくエメリアをお嫁さんにしたいと思う方は居るはずよ!」
エメリアの可愛さがあれば身分なんて関係ないわ!
「そうよ!だから気をつけなないと!」
「はっはい!」
「でも、エメリアは恋愛結婚が良いだなんて、好きな人でもいるの?」
マリア!
ナイスな質問だわ!
これで誰のルートなのかわかるかも!
マリアの質問にエメリアは顔を真っ赤にしている。
これは、誰かいるのね!
「えっと、それは、えーっとひっ秘密です!」
「えっ!? そんな!」
そんな!教えてよー!
するとマリアが
「まぁ男性陣が居る前だしね。今度女子会をしましょう。その時教えてね」
と言った。
「ひっ秘密ですー!」
「ハハ女子会か、俺も参加したいな」
「シャル様、ダメですよ。女子会なんだから男子禁制です」
「そこをなんとか頼むよ。マリア」
「ダメです。そんなことより折角エメリアがお菓子を作ってくれたんですから食べましょう」
あっそうだった。
エメリアのお菓子忘れてた
「どれも美味しそう!」
「お口に合えば良いんですけど」
エメリアがそれぞれにお菓子の入った袋を配る。
「ん?この菓子にはジンジャーが入ってるのか!美味いな!」
「私も甘いのはあまり得意ではなかったけど、これはちょうどいい甘さだよ」
シャル様とお兄様が笑顔でお菓子を食べる。
どうやら1人1人お菓子の種類が違うらしい。
「はい!シャル様の国では香辛料をよく料理に使うと聞いていたので気に入っていただけるかと思いまして。ジェラルド様もセティーさんから甘いものはあまり得意ではないと聞いて居たので、甘さ控え目に作りました。」
「おぉ!相手の好みに合わせるなんて、なんて心のこもったお菓子なんだ」
「本当に凄いね。素晴らしい気配りだよ。ありがとう。」
「いえいえ、喜んで頂けて嬉しいです!」
「前にセティーに心のこもった物の素晴らしさを教えられたが、料理も同じだな。相手を思って作られた物は格別に美味しい」
シャル様は感心したように言った。
「はい、喜んで頂けるように心を込めました!」
「ハハそうか。また良かったら作ってくれないか」
「はい!」
シャル様とエメリアいい感じだわ。
「ん?1つ余ってるいるがそれは?」
アル様がエメリアの横にある袋にきづき、訪ねる。
「あっこれは後でリュカに渡す分です。試験に向けて夜も勉強するって言っていたから夜食の代わりになればって思って」
「そうか、そろそろ試験だからな。一生懸命頑張っているんだな」
「はい!そうなんです!リュカは頑張り屋さんなんです!」
エメリアがパァっと笑顔で答える。
「ところでみんな試験の準備は大丈夫?分からない所があったら聞いてね」
お兄様の言葉にヴィクトルが青い顔をする
「ジルさん! 俺ほとんどの教科やばい!」
えっヴィクトルまじか。
「私が担当の科目なら教えれるよ。ヴィクトルのような生徒の為に講習会を開こうと思ってるんだ」
「俺それ参加する!後の教科はマリア、よろしく!」
「はぁ、仕方ないわね。ヴィだけ違うクラスになるのも嫌だし、教えるわ」
「ありがとう!」
そんな感じでお昼休みが終わった。
エメリアの好きな相手も気になるけど、私も試験に集中しなきゃ
更新がだいぶ空いてしまい申し訳ありません。




