デート
「「「お嬢様、おはようございます」」」
「みんな、おはよう。今日も1日よろしくね」
「「「はい、よろしくお願いします」」」
「さっそくですが、全身のマッサージと入浴をしましょう!」
とカミラが張り切った感じで言う。
「えっ?朝からマッサージに入浴?」
朝からは要らなくない?
夜会に行くわけでもないし。
「今日は王太子様とお出掛けになる日ですよ!これは必要なことです!」
「そうですよ!これは必須事項です!」
エルとアンナにもそう言われて、私は大人しくマッサージを受けることにした。
「それじゃあお願いするわ」
「「「それでは早速!」」」
と3人は楽しそうに私をマッサージし、お風呂に入れ、丁寧に洗い上げる。
お風呂から上がった後も全身にクリームを塗られ、髪にも色々と付けられた。
頭から爪の先までピカピカに磨かれた。
それを3人は楽しそうに行なっている。
ウチのメイドは朝から元気だ。
「お嬢様、髪型はどうしましょうか」
「お嬢様、お洋服はこちらでよろしいですか」
「靴はどうしましょうか」
「うーん、髪はハーフアップで服はスカートが広がり過ぎない物を、靴もどこに行くかわからないのでヒールは低めでお願い」
「「「かしこまりました」」」
私は髪は所々編み込まれたハーフアップにアル様から貰ったレースのリボンを付ける。
服はスカートがプリーツになっているシフォンワンピース。アル様に貰ったムーンストーンの首飾りをつけ、ヒール低めの靴を履いて完成だ。
「おかしい所はないかしら?」
「「「完璧です!お嬢様!」」」
するとちょうどコンコンと部屋のドアをノックする音がする
返事をすると寮の玄関にアル様が来ていると知らせるものだった。
「アル様、おはよう。お待たせしました」
「おはようセティー。今日は遠乗りをしよう」
遠乗り!?
遠乗り=乗馬!?
馬はまだ授業で数回乗った程度だけど、とりあえずこの格好はまずいよね。
「ごめんなさい!ズボンに着替えてくるわ!もう少し待ってもらえないかしら」
そう言って私はダッシュで部屋に帰ろうとする。
「まっ待って!勘違いしてるようだが、セティーは私と一緒に馬に乗るんだ。横乗りならその格好で大丈夫だ」
「えっそうなの?てっきり2人それぞれ乗馬するんだと」
私の答えにアル様が呆れた顔をする。
「セティーはまだ遠乗りが出来るほど上手く馬に乗れないだろ。それに、それじゃあデートにならないじゃないか」
「デッデート!?」
そっか、これデートなんだ!
だからメイドの3人も張り切ってたのか。
あぁ、意識したら顔が熱いよー。
「なんだと思ってたんだ。 まったく、子供の頃とは違うんだ、少しくらい意識してくれてもいいだろ」
「ん?何か言った?」
なんか最期の方聞こえなかったけど、何か言っていたような
「なんでもない。行こうか」
「うっうん」
「紹介しよう、私の愛馬のセレインだ」
「うわぁ、綺麗な馬」
白馬だわ!
アル様に白馬!
似合い過ぎでしょ!!
あぁ!
馬の頭を撫でてるアル様!
絵になり過ぎて尊いわぁ!
私が悶えてると、セレインが顔を私に擦り寄せてきた。
「可愛い。よろしくね、セレイン」
「ふふ、セティーのこと気に入ったようだな」
「そうなの? 良かったわ!」
「では、そろそろ行こうか」
アル様がセレインに跨り、手を差し伸べる
「さぁ、捕まって!」
白馬に跨るアル様、カッコいい!
じゃなくて!
掴まないと!
アル様の手を握り、グイッと引っ張られセレインの背に横乗りさせてもらう。
「きゃっ!」
思ったより揺れるわ。
「ほら、ちゃんと私に捕まって」
アル様はそう言って私の腕を自分の腰に当てさせ、私の腰をグッと引き寄せる
ひぃ!
近いよ!!
ダンスなんかよりも断然近い!
触れているアル様の腰はガッシリしていて、線は細くてもやっぱり男性なんだと思わされる。
うぅ、どうしても意識しちゃうよー。
横向きだから赤くなった顔を見られずに済むかなぁ。
「さあ、少し飛ばすから本当にちゃんと捕まっててくれ」
セレインが走り出す。
自分で手綱を握っていないから少し怖い。
恥ずかしいとか言ってる場合じゃないな。
私はアル様にグッとしがみつく。
アッアル様の体温が!
キャー!!
しばらく走り目的地に着いたのかセレインのスピードが緩んだ
「セティー着いたぞ前を向いて見ろ」
「えっ?」
目の前には花畑が広がっていた。
「わぁ、綺麗!」
色取り取りの花畑と少し離れた所に泉が見える。
空の色とのコントラストが本当に綺麗だ。
「セティーは王宮の庭園が好きだから、ここを気にいると思ってな」
「すごく素敵!連れてきてくれてありがとう!」
私はパァと笑顔になり答える。
「あっああ、気に入ったようで良かった。少し歩こう」
セレインに水と餌をやり、木につなぐと私達は泉まで歩く
一面に広がる花畑は本当に綺麗だ。
泉も水が澄んでいて、底が見える。
足をつけたら涼しいかな?
今は夏だから、日本の夏ほどじゃないけど暑いのよね。
手を水の中に入れて見るけど、程よくひんやりしている。
私は靴を脱ぎ、スカートをたくし上げて足を水につける
「セッセティ!!何をしてるんだ!!」
「えっ?足を浸けたら涼しいと思って。アル様もどう?」
「だっだからって!まったく何を考えているんだ!」
アル様の顔は真っ赤になっている。
たしかに足を出すのは、はしたない事だけど、ふくらはぎの真ん中くらいしか見えてないし、平気でしょ。
「ああもう!他の男の前では絶対にするなよ!」
そう言ってアル様も靴を脱いでズボンの裾をまくって入ってくる。
「しないわ。こんなこと、他の方の前では出来ないわ。どう?気持ちいいでしょう?」
「確かに涼しくて気持ちいいな」
「ふふ、そうでしょう!中央は深くなってるのかしら」
私は泉の真ん中の方へ進む。
「セティー、危ないぞ」
「ふふ、大丈夫よ。キャッ!?」
アル様の言った通り、私は足を滑らせた。
「セティー!」
間一髪のところでアル様に支えられる。
「だから危ないと言っただろう」
「ごめんなさい」
「もう上がろう」
そう言ってアル様は先に上がり、荷物から敷物を取り出して近くに引いて、また泉に戻ってきた。
「足が汚れてしまうから、少し我慢してくれ」
突然アル様にお姫様抱っこされる
キャーー!!!
「アッアル様!?」
「危ないから大人しくしてくれ」
お姫様抱っこのまま運ばれ、敷物の上にそっと降ろされた。
アル様はまた泉の方へ行き、足を洗って靴を履いて私の靴を持って来てくれた。
「軽食を作って貰ったんだ。そろそろ昼にしよう」
アル様はそう言うと荷物からサンドイッチやフルーツを出した。
「わぁ、美味しそう。あっごめん。私何も用意してなくて」
私の荷物は貴重品とアル様へのプレゼントくらいで他に何も持ってきてない。
「行き先を知らせなかったんだ。準備できなくて当たり前だろう。さぁ、食べよう」
アル様の心遣いに甘えてご馳走になった。
流石一流シェフの作ったサンドイッチ!
パンも普通のとは違ったり、具が豊富でとても美味しかった。
うーん、なんか私ばっかりいい思いしてるような。
一応これもプレゼントなんだから私がアル様に何かしないと。
「アル様、遅くなったけど、プレゼントです」
「ありがとう!開けていいか?」
「ええ、どうぞ」
「っ!セティーありがとう!前に一緒に作ったガラス細工を思い出すな!」
「そうなの!あのガラス細工に似せて作ってもらったの。今度は2人の色を両方使ってみたのよ」
私がアル様に贈ったのは丸いガラス細工のペンダントだ。
前はお互い付けた色を交換したけど、このガラス細工にはアメジストとブルーグレーの2つの色が使われている
「ああ、2つの色が1つに溶け合っているようで綺麗だ。ありがとう。今着けていいか?」
「ええぜひ」
そう言ってアル様は自分の首にペンダントをつける。
「良く似合ってるわ」
「ありがとう!」
でもプレゼント渡すだけじゃあ、やっぱりダメよね
「アル様、私にしてほしいことないかしら? 今日は私ばかり楽しませてもらったから、何でもするわ!」
「っ!? セティー!前にも言ったが女性が何でもするなんて言うものじゃない!」
アル様が顔を赤くして怒る。
「ごっごめんなさい。でも何かしたかったから」
怒られちゃた。
私はシュンと凹む。
凹んだ私をみてアル様が敷物の上を指す。
「で、ではここに寝てくれないか?」
「はい、良いですよ!」
お願いされた!
私はパァっと顔を明るくさせて言われた通り敷物の上に寝転がる。
「っ!何の疑いもなく寝るんだな」
「だってアル様の頼みだもの」
それに、アル様は紳士だから。
「クソ、可愛すぎる」
ん?
なんか言った?
良く聞こえなかった。
「アル様、何か言った?」
「なんでもない!」
アル様がそう言うと、アル様は私の横に寝転がる。
「こうして、二人で寝転がるなんて中々出来ないだろ」
アル様がニコっと笑う。
キャー!!
近い!
近いよアル様!
今日は心臓が忙しすぎるよ!
「ふう、風が気持ちいいな」
「そうね、でもなんだか眠くなっちゃうわね」
「眠っても誰にも怒られないから、眠っても大丈夫だぞ」
「ふふ、でもそれだと、なんだかもったいないわ」
せっかくアル様と居るのに寝たらもったいないよね。
しかし、しばらく会話をしていたが私は睡魔に勝てず寝てしまった
「セティー、セティーそろそろ起きてくれ」
「ん?あれ?私寝てた?」
「ふふ、ぐっすりだったな」
あぁ!
寝ちゃうなんて!
ていうか寝顔見られた!?
私どんな顔して寝てるんだろう!?
無意識の顔なんて、絶対変な顔だよね!?
私の慌ててる様子を見てアル様が笑う。
「ふふ、可愛い寝顔だったぞ」
「っ!?」
アル様の言葉に私の顔はカァーと赤くなる。
「さて、行きたい所があるんだが、いいか?」
「ええ、大丈夫よ」
そうしてセレインに乗り、小高い山の見晴らし台に来た。
「ここは私のお気に入りの場所なんだ。ここから王都が一望出来る」
アル様の言う通り、下を見ると王都が一望出来た。ちょうど夕日に照らされていて綺麗だ。
「あまり身を乗り出すと危ないぞ」
「ごめんなさい、あまりに綺麗だったから」
「気に入ったなら良かった。セティー、大事な話がある」
アル様が真剣な顔をする。
話しってなんだろう?
真剣な顔をしてるから真面目な話しだろうな
「ええ、話しって何かしら?」
「ああ、実はな正式な決定と発表はまだ先になるがクリスティーヌ嬢が婚約候補から外れることになる」
「えっ!?」
クリスティーヌ様が!?
「王妃教育や学園での成績に加えて、振る舞いも相応しくないからな。それに、クリスティーヌ嬢のお父上である、カジミーユ侯がクリスティーヌ嬢を、私の妃に推さなくなったことが影響しているようだ。貴族院の筆頭であり、財務大臣であるお父上の推薦がなくなり、クリスティーヌ嬢への反対意見が上がるようになったからな」
そうなの?
お父様からの推薦ってそんなに影響大きいんだ。
アル様は溜息をついてさらに続ける。
「カジミーユ侯もこれ以上は、自分と御子息の為にならないと思ったらしい。これまで迷惑を掛けたと謝られたよ。クリスティーヌ嬢は学園にいる間に矯正出来なければ、それなりの処遇が待っているだろうな」
うわぁ。
ゲームのセレスティーヌみたいだなぁ。
それにしても、自業自得だけど自分のお父様にも応援されないって可哀想だな。
アル様は真剣な顔をして私の方をジッと見る。
「私の婚約や結婚は、政治的な兼ね合いが多くて、本人同士の意志とは関係なく決まってしまう。私は政治的に決められたものではなく、本人の意思が大事だと思う。セティー!これからも私の婚約者で居てくれるか?」
「もちろんです。これからもよろしくお願い致します」
もちろんアル様の婚約者で居たいに決まっている。
私も周りに反対されないように頑張らなくちゃ!
アル様だって今更婚約者が1人も居なくなったら困るよね。
そういえば、アル様はエメリアのことどう思ってるんだろう。
「そうか!ありがとう!これからも、よろしく頼む!」
私の言葉にアル様が笑顔になる。
最近では良く見るようになった素の笑顔だ。
あぁ、やっぱりこの笑顔が一番好きだなぁ。
「アル様はエメリアのことは、どう思ってるのかしら?」
「は?エメリア?なんでこの会話の流れで彼女が出てくるんだ?」
「いえ、エメリアは可愛くて、心優しい子でしょう?だから、どうなのかなっと?」
「彼女は確かに優秀で心優しいと思う。大事な友人だ。彼女なら将来、王宮でも身分の壁など乗り越えて、実力で私の近くまで上がってくるだろうしな」
うーん?
アル様のエメリアへの好感度がイマイチわからない。
「それだけ?可愛いなぁとか、恋愛的感情はないの?」
「ハッ!?恋愛!?なんでそうなる!?」
アル様が困惑な表情をする。
「だって、あんなに可愛いのだから、好きになってもおかしくないでしょう?」
私の言葉にアル様の纏う雰囲気が黒くなっていく。
「セティー、本気で言っているのか? 冗談だとしてもそろそろ怒るぞ」
「っ!じょ冗談よ!ちょっと気になっただけよ」
やばい怒らせた。
エメリアはアル様ルートに入ってないのかな?
それなら安心なんだけど。
何せシナリオと変わってきてるから、誰のルートに向かっているんだか、入ってるのか、わからないから注意が必要だ。
「セティー、もう一度言っておくがエメリアは私にとって友人だ」
「はっはい」
その後私達は再びセレインに乗って学園に帰った。
中々更新出来ずにすいません。
ブックマークしてくださっている方々ありがとうございます。
これからもダラダラと続きますがよろしくお願い致します。




