マナー講習
「お嬢様、イザベル夫人がお見えです」
ノックの音がして、メイドさんから呼びかけられる。
よし!頑張ろう。
自室から講義を受ける部屋へメイドを連れて移動する。
部屋の中には背が高く眼鏡をかけ、髪を頭の高い位置でまとめた女性が立っていた。
アルプスの少女に出てきた家政婦長より目つきが鋭い。
なんともキツイ印象だ。
「イザベル・アーロンです。これから私がセレスティーヌ様のマナー講師を致します」
意外にも笑顔で挨拶をしてくれた。
優しい人なのかもしれない。
「セレスティーヌ・マルヴィンです。よろしくお願い致します」と礼をしながら挨拶をする。
「はい、よろしくお願い致します。セレスティーヌ様、まず礼がなっておりませんね。姿勢が何より悪いです」
イキナリ指摘されたー。
厳しい。
「いいですかお嬢様、礼とは挨拶や感謝、敬意などを表す動作です。美しい礼にはそれだけ相手への気持ちが込められているものなのです。私が見本をお見せ致します」
それは完璧な淑女の礼だった。
素人の私が見ても自分の礼とはまるで違った。
「ではやってみてください」
お手本通りにやってみる。
これが中々に難しい。
足が痛くなり背筋も痛い。
このまましばらくキープしないといけないとは。
淑女も大変だな。
一日中淑女の礼を練習し、生まれたて子鹿のように足がガクガクになった。
「本日はここまでに致しましょう。他にも話し方や笑顔の作り方や食事のマナーなど、覚えて頂くことはたくさんあります」
マジか……。
「公爵様からは皇太子様のお披露目に間に合うようにと伺ってますので、先に礼や話し方など対人関係から進めていきましょう」
「えっ!?」
イザベル夫人の言葉に私は固まる。
「お嬢様はお忘れですか? 3ヶ月後に皇太子様のお披露目があります。デビュー前の家族令息・令嬢が参加される重要なパーティーですよ」
なんですとー!?