メイドの仕事
あれから数日して、オーダーしたシャツが届いた。
今日はみんなでお揃いのシャツを着ようと話していたので、メイドさんに用意してもらい、着替えを行う。
そして、髪を整えてもらう。
せっかくだからマリアとエメリアと髪型もお揃いにしようと言われ、編み込みのハーフアップにしてもらう。
髪飾りとしてアル様に頂いたリボンを使う。
「お嬢様、嬉しそうですね!」
「えぇ!お友達とお揃いのシャツを着て、お揃いの髪型なんて、なんだか楽しいわ!」
「すごくお似合いですよ!」
「ふふ、青春ですね」
「今日も学園生活を楽しんてくださいませ」
メイドさんの3人が微笑ましいという感じに笑っている。
「エル、アンナ、カミラ、ありがとう!」
私付きのメイドさんは3人。
茶髪でスレンダーな美人がエル。
黒髪の一見クールそうな美人がアンナ。
赤茶色の髪で可愛いという感じのカミラ。
みんな屋敷から連れて来たメイドさんだ。
私と一緒に学園に来るなんて、慣れない所で自由に動けないし、少人数で仕事をするからお休みも取りづらいはず。
それなのに私と一緒に行くと、多くのメイドさん達が立候補してくれた。
連れて行ける人数は爵位によって決まっている。
公爵・侯爵家は5人まで。
ただ自立するための学園なので、最大数の従者を連れて行くのは良しとされていないという、暗黙の了解になっているらしい。
貴族というのは、厄介なモノで、ハッキリとは口に出さない。
ということで、一緒に学園に行ってもらう方を3人に絞り、3人でシフトのような交代制にした。お休みと勤務を回してもらっている。
でも学園に来て3ヶ月になるけど、3人がちゃんと休めているか疑問だ。
今日だって朝は誰かしらお休みなハズなのに3人共いる。
もしかして休みなく働かないと仕事が終わらないのかな?
私の部屋の掃除、洗濯、それにお茶を入れたり、お風呂の準備と何かと仕事はある。
お休みがないなんて、とんだブラックな職場だ。
「あの?みんなちゃんとお休み取れてる? 忙しかったら、人数増やしましょうか?」
私がとやかく言われるだけだし、後2人増やそうかな。
「「「いえ、大丈夫です!」」」
「本当に? 無理しなくて良いのよ。3人がお休みを取っている様子もないし。私と一緒に来たから、無理させてるんじゃないかと思って」
「お嬢様!私達なら大丈夫です!」
「そうですよ!むしろお屋敷より楽しく働いてます!」
「お嬢様のお世話が楽しくて、つい休みを忘れてしまうだけです!」
えっ?みんなワーカーホリック?
いつか倒れるよ。
「それなら良いけど、ちゃんとお休みを取って心と体をリフレッシュしないと」
私がそう言うと、3人は感動したように手を組みこちらを見てくる。
「そんなことを言うなんて、お嬢様はお優しいです」
「そうですよねー。他の所なんてすごく大変ですもんね。」
「そうですよね、それこそ寝る暇を惜しんで仕事をしていることもあるんですから」
えっこの仕事ってそんなにブラックなの!?
「お嬢様、他の令嬢達は、朝と夕の食事は食堂ではお取りになりません。その分私達のようなメイドや従者がご用意しています。」
「それだけじゃありませんよ。より目立つようにと、シャツに刺繍を入れたり、身支度にも時間を掛けたりしています」
「その点お嬢様は、お食事は食堂でお取りになりますし、身支度もほとんど御自分でされますから。食材の買い出しや、食器洗いなどの業務がないので助かっています」
と3人からメイドの裏話を聞かされた。
学園の食堂は一日中、誰でも使えるようになっている。
そのため色んな人が利用する。
子息・令嬢だけでなく、どうしても食事時間が遅くなる教師や他の職員。
後は庶民棟の人達も利用する。
他の貴族の人は食堂を利用しないことが多いらしい。
まぁお昼はしょうがなく食堂を使っているようだけど。
それで朝と夕は他の貴族の方達に会わないんだ。
食堂の食事美味しいのに、もったいない。
ウチは3人だけど、他は2人か1人で仕事をしてるから大変たろうなぁ。
「だから、私達の不満といえば1つくらいですね」
とカミラがいい、アンナとエルが慌てる
「「カミラ!?なんてこと言うのよ!?」」
がーん。
不満あるんだ。
いやでも、不満のない職場なんてないか。
「だって!お嬢様ったら身支度は御自分でされてしまうでしょう?お嬢様をもっと磨きたいじゃない!」
あれ?
私のせい?
「それはそうだけど、不満だなんて誤解があるわ!もっとお嬢様を美しくしたいという願望よ!」
「そうよ、不満ではないわ。お嬢様の身支度が手伝えなくて物足りないだけよ」
「現状に満足できないから不満って言っただけよー。せっかくお嬢様付きになれたんだもの、お嬢様を自分の手で磨き上げたいなんて思うのは当然よ!」
えっとー?
私が悪いのかな?
「あの?どうすればいいのかしら?」
「「「もっと磨かせて下さい!!!」」」
3人は一斉に声を上げる
うん、ウチのメイドさん達はワーカーホリックだわ。
「それで、みんな満足なの?」
「「「はい!!!」」」
「じゃあ明日からお願いするわ。その代わりきちんとお休みを取ってね」
「「「わかりました、お任せ下さい!」」」
職場の不満を解消するのも、雇用側の務めだけど、仕事増えて嬉しいだなんて、ワーカーホリックすぎるわ。
今度何か差し入れしよう。
私は朝食を取りに、食堂に向かう。
食堂に行くとお兄様が居た。
「お兄様、おはようございます」
「おはよう、セティー」
お兄様もお揃いのシャツを着ている。
私達は朝食を取りながら話をする。
「ふふ、お揃いなんて子供の頃以来だね。」
「そうですね。なんだか楽しい気分になります」
「そうだね、気分が上がるね。でも、私までお揃いでいいのかな?」
「もちろんです!お兄様は元々みんなと親しい関係ですもの!」
「ふふ、ありがとう。そういえばエメリア嬢は学園に慣れたかな? 貴族になって間もないのに、貴族達に囲まれて生活するなんて大変だよね」
「あれからとやかく言ってくる人は居ないようです。やっとエメリアの素晴らしさに気づいたのでしょう」
「それなら良かった。確かに、こないだの小テストの点数も良かったしね。彼女は覚えが早いと教員の中でも評判だよ」
「ふふ、当然です!エメリアは努力しているもの」
自分のことのように嬉しいなぁ。
エメリアの評判が上がればもう大丈夫よね。
評判といえば、こないだの誘拐事件の噂は聞かないなぁ。
令嬢が、誘拐されたと言ったら貞操を疑われて、憐れみしかないよね。
アル様やみんなが動いてくれたのかな?
みんなありがとう!




