深まる友情
「「おはよう。セティー!」」
うん、今日もハモってるな。
「マリア、ヴィクトル、おはよう」
あっ!
マリアとヴィクトルのシャツ、お揃いだ!
可愛い!
「マリアとヴィクトルのシャツ、お揃いなのね!可愛い!」
「ありがとう。お母様がせっかくだからって、用意してくれたのよ」
「大変だったんだよ。母様とマリアがピンクとか花柄とか可愛いのしか選ばないから。この薄黄色になってホッとしたよ。」
「だって可愛いでしょ?」
「一緒に着る俺のことも考えてよ」
「ふふ、本当に仲いいわね」
「「ところで、その方/子は?」」
あっそうだった。
エメリアのこと、放置してた。
「「セティーの知り合い?」」
「はじめまして。エメリア・バルリエです」
「前にバザーで知り合ったお友達よ!マリアには前に話したでしょう?」
「あなたが、セティーの言っていた子なの!?えっとはじめまして。私はマリア・エルランジェです」
「セティーの友達かぁ!俺はヴィクトル・エルランジェだよ。マリアとは双子なんだ。セティーの友達なら、俺とも友達だね。ヴィって呼んでね」
「はい、よろしくお願いします。マリア様、ヴィ様」
「様はいりませんよ。エメリアさん、私ともお友達になってください。」
「そうそう、様付けとか、そういうのいいから」
「はい。ではマリアさん、ヴィ君と呼ばせて下さい。私のこともエメリアで構いません」
こうしてエメリアは2人と友達になった。
入学式が終わり、それぞれが教室に行くため、振り分けを確認する。
クラスは、入試の成績と家柄順だ。
家柄が良くても、成績が悪いと上のクラスに入れない。
「あー、俺大丈夫かなぁ?俺だけ違うクラスだったらどうしよう。」
「それを言うと、私は皆さんと違うクラスでしょうね」
ヴィクトルとエメリアの顔が暗い。
ヴィクトルは成績が不安。
エメリアは家柄で心配しているようだ。
エメリアはヒロインだし、ヴィクトルも攻略対象者だから大丈夫でしょ!
「ほら、落ち込まないの!だから勉強しなさいって言ったじゃない。エメリアだって成績が10番以内なら問題なく上のクラスよ!」
マリアが2人を励ます。
「だってー」
「はい。」
2人がショボーンとしながら答える。
振り分け表の前に入試の順位表を見ると
1.アルベルト・ヴェスタトール
2.セレスティーヌ・マルヴィン
3.エメリア・バルリエ
4.マリア・エルランジェ
5.シャルエラント・ハムダン・ビン・モハメド・ラーシド・ナハラセス
2位!嬉しい!!
エメリアも3位!
まぁゲームだと本当は2位なんだけどね。
私が入ったから1つ順位が落ちたんだ。
エメリアより点数取れたんだ。
エメリアには申し訳ないけど、嬉しいなぁ。
マリアも4位だし、シャル様なんて他国の試験なのに5位って凄すぎる
「エメリア3位よ!一緒のクラスだわ!」
「そんな、私が3位だなんて、嘘みたいです!でもこれで皆さんと一緒のクラスに入れますね」
「いいなぁ。俺、不安なんだけど」
「ヴィクトル、違うクラスでも遊びに行くから」
「待って!まだ違うクラスと決まったわけじゃないから!」
ふふ、まぁ同じクラスなんだけどね。
そうして振り分け表を見ると、案の定みんな同じクラスだった。
「やったー!よかったぁ。1人だけ違うクラスだと思ったよ!」
「もう、ヴィったら。私までヒヤヒヤしたわ」
なにはともあれ、皆同じクラスなので一緒にクラスへ向かう。
教室に入るとアル様とシャル様がすでに座っていた。
「あっやっと来た。こっちだぞ」
とシャル様が手招きする。
「ん? 知らない女性だな。皆の知り合いか?」
「エメリア・バルリエと申します。」
「ほう、君が入試3位に入ったエメリア嬢か。頭が良いだけでなく、こんなに美しいとは。私はシャルエラント・ハムダン・ビン・モハメド・ラーシド・ナハラセス。ナハラセス国の第1王子だ」
「はい、シャルエラント様。よろしくお願いします」
「ああ、女性3人は友人なのか?」
「私とエメリアは前からの友人で、マリアとは先程友人になりました」
「セティーの友人か。それならば俺とも是非親しくしてほしい。シャルと呼んでくれ」
「えっ?あっはい。シャル様。」
あっという間に攻略対象者と知り合ったな。
さすがヒロイン。
それから2カ月が経った。
特になにも起きないなぁ。
最初こそ、私達と一緒に居るエメリアを見て、ヒソヒソ言っていたけど、最近はそれもない。
まぁ、エメリアは勉強頑張ってるし、ゲームと違ってマナーもある程度できるし。
それに、この2ヶ月奉仕活動に精を出しているため、マリアによると『銀の乙女』の通り名がついたらしい。
まぁ『銀の乙女』って言われるのはゲーム通りだし、エメリアはゲーム通り努力家だから周りが認め始めてるのかも。
そう思って、私は油断していた。
選択授業の時間。
私やマリアとは違う科目を選択していたエメリアは、入学して初めて1人になる。
「それじゃ、私達はこっちだから、また後でね」
「はい、セティーさん、マリアさんまた後で」
お互いのクラスへ向かうため、別れる。
私とマリアは隣に座り、授業開始を待つ。
クラス内を見ると、庶民クラスの人ばかりだった。
この学園は基本的に貴族の学校だけど、一部の成績優秀な庶民も特待生で通うことができる。
そして、庶民の方々は普段の授業は庶民棟で受け、選択授業だけこちらの校舎に来る。
私達が選択しているの外国貿易について。
将来、商人になりたい庶民の人が多く選択しているが、貴族も少ないわけじゃない。
少なくとも、あと数人はいるはず。
あれ?
私達は校舎からまっすぐこのクラスに来たけど、他の貴族には会わなかったわ。
どうして?
私は不安になり、エメリアの顔が浮かぶ。
まずい!
私がもしいじめっ子なら、今は絶好のチャンス!
エメリアが危ないわ!
「マリア、ごめん!ちょっと行ってくるわ!」
「えっ!?セティーどうしたの? もうすぐ始まるわよ!?」
私はマリアの話を聞かずにクラスを飛び出し、エメリアの教室に向かう。
案の定エメリアがいない。
私は近くの生徒に聞いてみた。
「ねぇ、あなた。エメリア・バルリエを知らない?」
「えっ?数人の女性達と出て行きましたよ」
やっぱり!予感は当たったわ!
「ありがとう!どこに向かったか、わかるかしら?」
「さあ?教室を出て左に行ったのは見ましたけど」
「ありがとう!」
教室を出て左に行けばすぐ校舎裏だわ!
きっとそこに居るはず!
「あなた生意気なのよ!」
「元庶民の癖に王太子様達と同じクラスだなんて!」
「セレスティーヌ様と仲良しだなんて、許せないわ! あの方は特別なのよ!」
「何が銀の乙女よ!そんなの、セレスティーヌ様の劣化版でしょう!調子に乗らないでよ!」
校舎裏に着くと、案の定、エメリアが複数の令嬢に囲まれ、責め立てられていた。
「私があの方達と同じクラスになれたのは、努力した結果です。私はセレスティーヌ様の劣化版でも、同じように称されたことを誇りに思います。貴族になってからわずか数年の私に、生まれながらの貴族である貴方の成績が劣るのは貴方の怠慢です。選民意識は御立派ですが、実力もないのに民の血税で暮らす気分はいかがですか?恥ずかしくはありませんか? それとも、令嬢だからそれで許されるのですか? 私は将来この国のために仕え、この国に役立つ人間になります。あなた達とは生き方も考え方も違います!」
とエメリアが淡々と令嬢達に言い放つ。
エメリア! かっこいい!!
「「「「何ですって!!」」」」
令嬢達の顔は真っ赤になり、目を吊り上げて怒っている。
すると、先頭の令嬢の手が上がる
まずい!!
私はとっさにエメリアの前に出る。
バシーン!!
令嬢の手は私の頬に直撃する
いっったーい!!
ものすごく痛い!
「セッセレスティーヌ様!?」
私を叩いた令嬢が明らかに怯えている
「あなた達!自分のしていることがわかっているのですか? なんの権限があってエメリアを貶めているのです!?」
私はかなり強い口調で怒る
「セレスティーヌ様、この方があまりに礼儀がなっていないので、私達が注意をしていただけです。」
令嬢の1人が発言する。
はぁ? 何嘘言ってるの?
「その言葉に嘘偽りがないと、それぞれの家名に誓えますか?」
「「「「はい、誓います」」」」
令嬢達に自分の達の言葉を家名に誓わせる。
「では、皆さんは貴族失格ですね。私はあなた達の発言を聞いていました。家名に対して嘘の誓いを立てたことを、私が証言致します。今から学園長の所へ赴き、 あなた達の退学を求めましょう」
私が淡々と言うと令嬢達が青ざめる。
「お待ち下さい!本当にこの方の礼儀が」
「では、いったいどこが、礼儀がないと言うのかしら? 具体的に言ってみて下さい。」
「セレスティーヌ様達と親しくしてますわ!彼女は男爵、それも元庶民ですわ!」
それって特にないってことだよね。
もう、イラッとするわ!
「私と彼女は以前からのお友達です。それに、この学園においては身分など関係ありません。なぜ私のお友達が、あなた達のような関係ない人に、私と仲良くしていると言うだけで、責め立てられるのでしょう? エメリアの言った通りですわ。他者を軽んじることしか出来ない方々ですのね。それに、家名に嘘の誓いを立てるなんて、お家から破門されたいのかしら? あなた達のような学も、生きる術も知らない者が、身分を失えばどうなるか考えられませんのね。私個人としましては、あなた達とは、今後一切の関わりを持ちたくありません。どうぞ、二度と私の前に現れないでくださいませ。」
そう言ってエメリアを連れて、その場を去る。
「セティーさん!頬が腫れてます!救護室へ行きましょう!」
「えぇそうね。エメリアごめんなさい。私と居るせいで返って責められるなんて」
全然守れてない。
むしろ迷惑になってしまった。
「こんなの、想像の範囲です!私だって逆の立場なら嫉妬します。でも、あの方達に言った通り、何言われても負け犬の遠吠えにしか聞こえません。私自身が力をつけていれば問題ありません!」
エメリア!なんて強いの!
「私将来、王宮の官僚試験を受けようと思っています。せっかく貴族になったんだもの、利用しなくちゃ損ですから。元庶民は強いんですよ。だから、そんな顔しないで下さい。」
そうエメリアに言われて、私は自分が泣きそうになっていることに気がついた。
守るつもりが、逆に励まされるなんて。
「ごめんなさい。エメリアが私と居るのが嫌になったらどうしようって思ったの」
「あり得ません!どんなに身分の差があろうとも、近くにいます!身分の差なんて乗り越えていきます!」
エメリアはまっすぐ私を見る。
あぁ、本当にこの子は気高い。
逆境にだって負けずに努力出来る強い子なんだ。
「エメリア、ありがとう。大好きよ」
「はい!私も大好きです!」




