学園へ
いよいよ、学園に行く日が来た。
バタバタと準備が忙しい。
と言っても、本当に忙しいのはメイドさんだけど。
あれから忙しさを理由にアル様に会っていない。
というか顔が見れなくて、会いに行けなかった。
思い出すだけで顔が熱い。
あれは、何だったんだろう?
あれかな?
学園祭とか体育祭で盛り上がってハグし合う感じかな?
確か、高校とか大学で男女のリア充グループがそうだった気がする。
男友達いなかったし、そんなリア充な人達と接したこと、なかったから、わからないけど。
そうか!
私は今まさに、リア充なんだ!
だって今は顔もスタイルも良い方だし、何たって貴族でお金持ち。
そして、ヴィやシャル様、それにアル様とはお友達だから、男友達がいる状態!
ということは、やっぱりあれはリア充達が、気分が高まってハグし合うものだよね。
ふぅ、アル様と顔を合わせる前に気づけて良かった。
アル様が私を好きかもなんて、とんだ勘違いだ。
それに、今日からヒロインも出てくる!
まさにゲームの本編!
気合いを入れないと!
間違ってもヒロインに嫉妬して我を忘れないように!
そしてチャンスがあればアル様にアピールをする!
……アピールの仕方はマリアに相談しよう。
恋愛経験ないし、どうしたら良いかわからない。
ゲームみたいに選択肢があれば良いのに。
「お嬢様、お時間です。ジェラルド様や旦那様達もお待ちです」
「わかりました」
メイドさんに言われ、私は玄関に向かう。
「セティー、制服似合ってるよ」
「ありがとうございます。お兄様」
制服はワンピースにジャケット。ワンピースの丈はロングで、ふわっと広がっている。
裾には刺繍が入り、可愛いデザインだと思う。
ちなみに男性はブレザー、ネクタイ、紐ネクタイ、蝶ネクタイのいずれかを選べて女子同様に刺繍が入っている。
そして男女共に中のシャツは自由。
だから派手なシャツをする人もいる。
私は少しフリルのついたシャツにした。
「セティーちゃん可愛いわぁ」
「ああ!セティー!私のセティー!可愛いよぉ!離れたくないよぉー!!」
お母様には褒められ、お父様には、しがみつくように抱きしめられる。
「お父様、お休みには戻ってきますから」
「それでも3年も離れるなんて!寂しいに決まってる!」
「あなたったら、しょうがないわねぇ」
お母様が呆れている。
「もう、そんなに寂しいなら、もう1人作りましょうか?」
「「「えっ!?」」」
2台の公爵家の馬車が走る。
私はお兄様と馬車に乗り学園へ向かう
後ろの馬車には私とお兄様付きの使用人の方々が乗っている。
「それにしても、母様には驚かされるね」
「ふふ、本当ですね。でもお母様の冗談のお陰で出発することが出来ました」
お母様の爆弾発言で固まっているお父様から脱出し、そのまま出発した。
「ふふ、案外冗談じゃないかもよ?夏休暇には弟か、妹がいたりして」
「まさかぁ。お母様も御年齢を重ねられてますし、いくらなんでも」
お母様は若く見えても、もうアラフォーですからね。
それにしても、ゲーム通りお兄様が教師になるなんて
「まぁ、それは置いといて、セティーと一緒に学園に行けるなんて嬉しいよ。本当は断るつもりだったんだけど、こないだの一件で心配になってね。やっぱりこの話を受けることにしたんだ」
あの一件ってやっぱりあれよね。
あぁ思い出しただけで顔が。
「セティー、兄様は怒ってるんだよ!アル様には特に気をつけるようにって前にも言ったのに」
「お兄様、きっとあれはパーティーで気持ちが高ぶってしまっただけですよ。何より成人の式でしたしね。」
私の返答にお兄様は呆れた顔をして、溜息をつく。
学園に着き、使用人の方々は荷物を寮に運び整えるために別れ、お兄様は他の職員と合流するため、別れることになった。
「それじゃあ、あまりその辺をウロつかないようにね。いいかい、ここには色んな人が居るんだから気をつけるんだよ!」
お兄様ったら心配症だなぁ。
「大丈夫ですよ。中庭を見に行ったら戻ってきます」
中庭でオープ二ングイベントがあるはず。
そこでヒロインがアル様と出会い、ゲームがスタートする。
私がそこへ行くのは危険だけど、ヒロインの顔を少しでも先に見て置きたいし、ヒロインに出会ったアル様の反応も気になる。
こっそりバレないように覗こう。
中庭に着くと、数人の女性の声がする。
声がする方へ行くと、1人の女性が複数の女性に囲まれている。
「成り上がりの癖に、この学園に来るなんて生意気なのよ!」
「なんで貴方のような人が私達と同じ校舎で学べるのよ! 身の程をわきまえて、庶民棟へ行きなさいよ!」
うわっ酷い。
いじめかな。
ヒロインもオープ二ングイベントで同じように初日からいじめにあってアル様に助けられるのよね。
責め立てられている女性の顔はフードで見えない。
どうしよう。
ヒロインはアル様に助けてもらえるけど、あの人は誰にも助けてもらえないよね。
助けなきゃ。
いじめに立ち向かうのは怖いけど、見て見ぬ振りは出来ないよね。
私は一応公爵令嬢だし、表立って仕返しとかされないだろうし、後はビシッと言えれば大丈夫なはず!
「貴方達!何をしているのですか!? 1人の女性に対して、寄ってたかって恥ずかしくはありませんの!?」
「はぁ?関係ない方は引っ込んでて下さい!」
怖っ!
反論された!
いや、ここは引けない。
頑張らなきゃ!
「関係なくありませんわ!私も今日からこの学園の生徒です!この学園は身分関係なく、勉学を学ぶためにあります。このようなこと、マルヴィン家の娘として見逃せませんわ!」
さらっと名乗ってやったわ!
これで引いてくれるかな。
私の正体が分かると女性達は青い顔をする。
「「「マルヴィン公爵家の御令嬢!?し、失礼しますわ!」」」
良かった。
引いてくれた。
私はいじめられていた女性の方へ向く。
「災難でしたね。入学式までに気持ちを落ち着かせて下さいませ。」
そう言って私は立ち去ろうとする。
「セティーさん!待って下さい!」
えっ?
私の名前しってるの?
私をさん付けで呼ぶなんて、1人しか知らない。
それに、この声聞き覚えがある。
女性はフードを取る。
フードの下から見事な銀髪が現れた。
「私です!エメリアです!」
えっ?
やっぱりエメリア!?
ていうか、その髪……。
銀髪ーーーー!!!?
やっとゲーム本編に辿りつけました。
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