社交界デビュー③
クリスティーヌ様のワインを持つ手が震えている。
「なんなのよ!私を無視して、セレスティーヌに声をかけるなんて。いいえ、セレスティーヌならともかく、マリアや他の令嬢に劣るだなんて!」
クリスティーヌ様がブツブツ何か言ってる。
大丈夫かな?
だんだんワインを持つ手の震えが強くなってきて、溢れそうだよ。
「あの、クリスティーヌ様?大丈夫ですか?」
私が声をかけるとクリスティーヌ様の顔がカッと赤くなる。
「何よ!同情なんていらないわ!ちょっと人気があるからって調子に乗らないでよ!」
クリスティーヌ様が叫び、ワインを持つ手を上げる
うわっワイン溢れちゃうよ。
それになんで怒ってんの?
「セティー、お待たせ」
そこに仕事の話をしていたお兄様が戻ってきた。
すると、近くに居た令嬢達が駆けてくる。
「「「「ジェラルド様!!!!」」」」
勢いよく令嬢達が寄ってくる。
私はお兄様に身を寄せてもらったが、クリスティーヌ様は何名かの令嬢とぶつかり、持っていたワインを頭から被ってしまった。
クリスティーヌ様の顔とドレスがワインによって赤く染まっていく。
「キャー!!!?」
パニックになったのかクリスティーヌ様はヨタヨタと動き、テーブルにあったチェーサーの水をひっくり返す。
顔のワインは水で流れたが、ドレスは全体的に赤く染まってしまった。
うわぁ悲惨。
これは大丈夫じゃないよね。
私とお兄様はハンカチを出してクリスティーヌ様に近づく。
「「クリスティーヌ様/嬢よろしければこちらを」」
クリスティーヌ様は無言で私達のハンカチを受け取るが、放心状態なのか動けずにいる。
騒ぎを聞きつたのか、1人の男性が来て、クリスティーヌ様を抱える。
「ウチの義妹が失礼しました。義妹もこのような状態なのでこれで失礼します」
あの人がクリスティーヌ様のお義兄様か。
そういえば、お義兄様が居るって聞いたことあったような。
すごいなぁ。
迷わず抱えるなんて。
自分のタキシードも汚れてしまうのに。
クリスティーヌ様が退場し、汚れたテーブルや床が片付けられ、パーティーが再開される。
周りは、さっきの騒ぎの話題で盛り上がっている。
うん、やっぱり社交界は怖いわ。
女の子があんなことになったのに心配することなく、笑いのネタにするなんて。
「セティーは大丈夫だったかい? 怪我はない?」
「お兄様に守ってもらったので大丈夫ですよ」
「それなら良かった。そろそろラストダンスの時間だね。また兄様と踊るかい?」
あっアル様にラストダンスにバルコニーに来るようにって言われたんだった。
「あっあの。私約束があるので行ってきます。会場の外には出ないので心配しないで下さい!」
私はお兄様にそういうと小走りで駆け出す。
「えっセティー!?どこいくの!?」
お兄様には悪いが、アル様との約束は守らないと。
私は中央のバルコニーの入り口に来た
他のバルコニーよりも大きく、サイドに大きなカーテンがついて、入り口には係りの人がいる。
「あの、私バルコニーに出たいのですが」
「セレスティーヌ様ですね。どうぞ」
「ありがとうございます」
バルコニーに来たが、誰もいない。
アル様がいると思っていたんだけど。
そろそろ、ラストダンスが始まる時間だ。
「セティー!危ないから端に寄ってくれ」
上からアル様の声がする。
言われた通りにバルコニーの端に寄ると、上からアル様が降ってきて、トンっと着地をする。
「よかった、来てくれたんだな。それに間に合ってよかった。」
「えっ今どこから??」
突然現れたアル様に私は軽く混乱する。
「ふふっ上の階から飛び降りたんだよ。これなら人目に付かずに、ここに来れると思ってね」
「えっ? 危ない!怪我したらどうするの?」
「実際飛び降りたが怪我はしてないだろう?」
アル様がケロッと笑っている。
そんな笑い事じゃないよ!
上の階から飛び降りるとか危なすぎる。
「セティー、心配してくれるのは嬉しいが、こうでもしないと、セティーと会う時間が取れない。一生に一度の成人の日を一緒に過ごしたかったんだ。」
「っ!もう、次からは危ないことしないでね」
アル様!
それは反則だよぉ!
怒ってたのに、怒れなくなったよ。
会場から音楽が流れてくる。
ラストダンスの時間だ。
アル様は私の手を取り、片膝を立て跪く。
「姫、どうか私とダンスを踊って下さいませんか?」
キャー!!
かっこよすぎる!!
ゲームで見たスチル絵よりずっとずっと素敵!!!
私はカァーと顔を赤くし、答える。
「喜んでお受け致します。アルベルト王子」
「良かった。それじゃ踊ろうか。」
「はい。」
私はアル様にリードされながらダンスを踊る。
あぁ、わかっていたけど近いよぉ。
さっきのやり取りでまだ顔が熱いし、心臓が鳴りすぎて苦しい。
「そういえば、ネクタイピンありがとう。とても気に入っているよ」
そう言われ、アル様の胸元を見るとネクタイに私が贈ったピンがされていた。
あぁ嬉しい!
「良かった!付けてくれてるなんて、すごく嬉しい!」
私は笑顔でアル様の顔を見上げながら気持ちを伝える
アル様の顔が、少し赤くなり照れたような顔になる。
「っ!セティーこそ、髪飾り使ってくれてるんだね。似合ってる!」
「ありがとう。それに、アル様とダンスを踊れると思っていなかったから、嬉しい」
「そうか。でも、ジルやヴィだけでなく、シャルとも踊るなんて、他に踊った男性はいるか?」
シャル様、やっぱり勝手にパーティーに出たこと、バレてますよ。
「他の方とは踊っていないわ。シャル様には他の方に誘われて困っていた所を助けてもらったの」
「仕方ないことだけど、まさかシャルが出てくるとは思わなかった。後で叱らないと」
シャル様、怒られるのは決定のようです。
「そうだ、セティーの誕生日パーティーの時はエスコートさせてほしい。」
「えっ良いの?」
私はぱあっと笑顔になる。
「あぁ、学園に入れば私は学生だしね。それにセティーの誕生日パーティーは王宮のとは違って公式な記録に残らないから大丈夫だ」
「じゃあまたアル様と踊れるのね。嬉しい!」
私がそう言うと音楽が止んだ。
どうやらラストダンスが終わったようだ。
これで、夢の時間は終わりかな。
まだ、胸が高鳴ってる。
終わるのが寂しいなぁ。
そう思っているとアル様に腰をぐっと引き寄せられ、抱きしめられる。
「えっアッアル様?」
キャー!!!
アル様に抱き締められてる!?
やばい、もう心臓が持たない!
こういう時ってどうすればいいの!?
私が慌ててるとアル様の手が顎に掛かり、上を向けさせられ、アル様と目が合う。
アル様の顔が近づいてくる。
もう何も考えられないよ。
バン!!
勢いよくバルコニーのドアが開き、ドアの方を見ると冷たい空気を纏ったお兄様が居た。
「アル様、ウチの大事な、嫁入り前の妹に、何をしてるんですか?」
お兄様!
あんな怒ってるお兄様初めて見た!
「ジル!いや、これはそのぉ」
「ウチのセティーをお返し下さい」
私はアル様の所からお兄様の所へグイッと寄せられる
「あっあのお兄様?」
「さぁセティー、帰ろうか。ここには野獣が居るからね。さっさと帰ろう」
「えっ?」
私は強制的にお兄様と帰宅することになった
やっとデビューの話が終わりました。
アルベルトや他のキャラ視点書こうか迷い中です
※テラスをバルコニーに変更しました




