お金よりも気持ち
顔の火照りを落ち着かせるけど中々落ち着かない。
こういう時はあそこに行こう。
ここはいつ来ても本当に綺麗だなぁ。
私は庭園に来て、花を眺めていた。
つい、こないだまで咲いていた花が終わり、新しい花咲いていた。
私が花を眺めていると後ろから突然声がする
「花の妖精かと思ったらセティーか」
「えっ?シャル様?どうしてこちらに?」
「俺も花を見に来たんだ。俺の国は砂漠が多くて花が咲いている所は少ないからな。そしたらセティーが居て、まさか妖精が出てきたと思った」
妖精ってやっぱり口が上手い人だなぁ。
「ここの庭園は本当に素晴らしいですからね」
「ああ、見事だ」
「突然だか、セティーは宝石は欲しいか?」
「えっ?突然どうしました?」
なんだろう?
宝石はそんなに欲しくないけど。
「女性は美しい物が好きだが、価値があるものが一番だろ?俺の国は宝石の採掘が栄えているんだ。だから、君の瞳と同じアメジストを贈ろう」
「えっ?頂く理由がありません。」
「美しい人に宝石を贈るのは普通だろう?」
いや、今日あったばかりの人にそんな高価な物貰えないよ。
「ただの宝石では面白くないなら花の形に加工して贈るとしよう。その方が価値があるからな」
「いえ、頂く理由になりませんし、そのような高価な物は頂けません。それに、贈り物に値段は関係ありませんわ」
「なぜだ?今まで出会った女達は皆喜んでいたし、むしろ強請ってきたぞ。何より人は高価な物が好きだろう?」
「いいえ、贈り主の気持ちこそが大切です。自分のために選んでくれて時間やその時の気持ちこそ価値があります」
私の言葉にシャル様が信じられないような顔をする。
「そんなわけないだろう、価値の低い物を貰って喜ぶ奴はいない」
「そうでしょうか?川辺の綺麗な石や四つ葉のクローバーをもらいましたが嬉しかったですよ。私のために一生懸命探してくれたんだと思いました」
「そんな物誰に貰ったんだ?」
「孤児院の子供達です」
「孤児院か。それならば仕方ないが、本当にそんな物で嬉しいのか?」
「もちろんです!孤児院の子供達はお金を稼ぐために一日働きます。あの子達にとって時間は大切なのです。その時間を使って私に贈る物を考えて、探してくれたことが何よりも嬉しいです。」
「そうか、セティーは優しいのだな」
「そんなことはありません。」
「いいや、少なくとも俺はそんな金のかかっていない物をもらって喜ぶような者を見たことがない。地位や金を持っているか、持っていないかで人の価値を決める者ばかりだからな」
シャル様は少し寂しそうな顔をする。
お金が全ての世界かぁ。
少し寂しいな。
「私にとってもお金はもちろん大切です。ですが、それだけでは人は生きていけません。お金だけが人の価値を決める物ではありません。私にとって、信頼出来る人達が大切なのです。信頼出来る友や家族はお金よりも、なによりも大切です。ですから、お友達のシャル様は私にとっては大切な人です。たとえ、どこに居ようと、どんな身分でも大切な方ですよ」
その時突然強い風が吹いて、花びらが舞う
わぁ、綺麗!
幻想的だなぁ。
「本当に月のように美しく清らかで、笑顔は太陽のような人だ」
「えっ?何かおっしゃいましたか?」
シャル様が何か言っていた気がするけど、聞き取れなかった
「いいや、俺の国でも、セティーのような人が居れば良いと思っただけだ。」
シャル様が微笑まれる。
「たくさん居ると思いますよ。私は特別ではありませんから」
「ハハ、アルが言っていたように、本当に自分のことがわかってないな」
えっ?
アル様からどんな風に聞いてるの!?
「あっあの、アル様は私のことをなんと?」
「気になるか? だが、男同士の秘密だ」
シャル様がニヤッと笑う。
そんなぁ。
余計気になる。
「さて、セティー、改めてよろしく頼む。私も君のことを信頼しているよ。私にとって大切な人だ」
シャル様にジッと見つめられる。
人の価値はお金じゃないって伝わったかな?
「はい、よろしくお願いします」
「さっきの話を蒸し返すようだが、親愛の証に何か贈りたい。価値よりも、セティーのことを思って用意するから受け取ってくれないか?」
うーん?
結局何か頂くことになるなぁ。
でも、宝石とか高価な物でなければ良いけど。
私も何か渡した方がいいかな?
「あまり高価な物でなければ。私も何かシャル様に贈りますね。」
「そうか! 良かった! 心のこもった贈り物か、今から心が躍るな」
うーん、あまり期待されても困るな。
後日シャル様から、シャル様の国の、花の種を頂いた。
この国にはない珍しく花。
大切に育てよう。
私は色々悩んだ結果、ストールにシャル様の国の紋章に孔雀の刺繍をして渡した。
「シャル様ありがとうございます。大切に育てます」
「本当は、咲いている花を贈りたかったが、運んでる内に枯れてしまうからな。花が咲いたら見せてくれ。」
「はい!わかりました」
「セティーもありがとう。見事な物だな。こんなに素晴らしい刺繍、本当にセティーがしたのか?」
「はい、気に入って頂けたなら光栄です」
「もちろん気に入った!一針ずつ私のために縫ってくれたのだな。うん、心のこもった贈り物とはいい物だな。」
シャル様が今までで一番素敵な笑顔をする。
わぁ、全力で微笑まれると色気がすごいな。
「わかって頂けたようで、嬉しいです」
話をしていると、アル様が来た。
「シャル、何を手にしているんだ?」
「セティーが刺繍をしたストールだ!素晴らしい刺繍だろう?」
「刺繍は素晴らしいが、なぜシャルが持っているんだ?」
シャル様がドヤ顔で答える
「セティーから俺への贈り物だ!いいだろう!セティーの心がこもっているんだ!」
「なっ!?なんだと!私だってもらったことないのに!!」
アル様の言葉にシャル様がフフーンと笑う。
アル様ー。
お誕生日とかにはちゃんとプレゼント渡してますよー。
確かに自分で刺繍した物は贈ったことないけど。
というか作ったけど、贈る勇気がなかった。
「私だってセティーが縫った物が欲しい」
欲しいの?
じゃあ贈っていいのね!
「あっあのアル様。実は今までに、ハンカチに刺繍をしたんだけど、渡せなくて。良ければ貰ってくれる?」
私の言葉にアル様がパァッと笑顔になる。
「もちろんだ! 今までの全て貰おう!」




