王妃教育②
今日から王妃教育が始まる。
私はプリンセスラインの割とシンプルなデザインのドレスを着る。
学びに行くのに着飾り過ぎるとダメだよね。
でもあんまり地味だと王宮内での評判が悪くなるから難しいなぁ。
周りの反応で少しずつ変えていこう。
王宮に着くとすぐに部屋へ案内される。
部屋には厳しそうな先生が居た。
「おはようございます。お初にお目にかかります。セレスティーヌ・マルヴィンでございます。本日よりご指導を賜ります。よろしくお願い致します。」
私は挨拶をして淑女の礼をする。
「はい、私が今日から王妃教育を担当致します。さすが、マルヴィン家の令嬢ですね。礼と挨拶は完璧です」
あっ意外と優しいかも
「ありがとうございます。恐縮です」
それからクリスティーヌ様と一緒にお勉強をするが、思っていたより厳しい授業ではなかった。
ラノベとかに出てくる王妃教育のように血反吐を吐くような感じはなく、主に国の歴史や成り立ち、後は国賓の名前と顔、家系図、近隣諸国についてと、いわゆる歴史社会だった。
暗記系の分野だ。ただ覚える量は流石に多い。
自国の有力貴族の家系図を覚えるのも大変だから、他国のまでは覚えきれない。
しかもこの世界に写真なんてないから、絵がついてても、実際の本人に似てなくて覚えづらい。
とりあえず、王宮に関わってる人達から覚えよう。
私は午前の授業の後に王宮内を歩き、挨拶のついでに人の顔を覚えることにした。
午後からは午前の復習という名のテストを受ける。
すぐにテストだとは思わなかったなぁ。
抜き打ちテストって、いつ受けても嫌だな。
歴史とかは元々勉強してたし、少しは解けたと思うけど、どうだろう。
「セレスティーヌ様は80点です!正直、人物と家系図は難しいと思っていたので驚きました。王宮内の人物達はほとんど合ってます」
よかったぁー。
休憩時間費やした甲斐があった!
すると、クリスティーヌ様から睨まれ、クリスティーヌ様が声を上げる。
「私はどうですか!?」
「クリスティーヌ様は40点です。全体的にまだまだ覚えることが多そうですね」
「セレスティーヌ様より低いなんて!あなたズルをしたわね!でなければそんなに高い点数取れませんもの!」
えっ言い掛かりなんですけど!?
すると、先生の顔が強張る。
「クリスティーヌ様!そんなわけありせん!セレスティーヌ様もクリスティーヌ様と同じようにテストの存在を知りませんでした。それなのにどうやってズルをするのです!自分の不出来を棚に上げて人を蔑むとは何事ですか!?」
よかった。私がズルしてないってわかってくれてる。
その後も、先生に怒られたクリスティーヌ様はずっと私を睨んでいた。
1日の授業が終了し、アル様に挨拶して帰ることにする。
「あっセティー!授業終わったんだな」
私が返事をする前にクリスティーヌ様が話し出す。
「アルベルト様!私すっごく頑張りましたの!とても辛い授業でしたが、アルベルト様の為に頑張りましたの!それと、私のこともクリスとお呼び下さいと申しているのに。アルベルト様は照れていらっしゃるのね!」
クリスティーヌ様の目がハートになっている。
反対にアルベルト様はどんどん笑顔が消えていく。
「クリスティーヌ嬢ご苦労様です」
とアル様は簡素な返事をして、私に近づいてきた
「セティーは?セティーも疲れたかい?」
「覚えることが多くて、大変だけど大丈夫よ」
あっ敬語忘れた!
やばっ!クリスティーヌ様に聞かれたよね!
「ちょっとあなた!アルベルト様に対してなんて馴れ馴れしいのかしら!」
やっぱり!突っかかってくると思った!
「良いんだ!私がセティーにその様に接するように言っているんだ!」
アル様の言葉にクリスティーヌ様が驚く。
「なっ!?それでは、同じ候補者である私もその様にしますわ!」
「私がいつクリスティーヌ嬢にその様に接することを許した?辞めて頂こう」
アル様がきっぱり言う。
「セレスティーヌ様は良いなんてズルイですわ!同じ候補者なのですから、平等にしてくださいませ!セレスティーヌ様だけ愛称呼びもズルイですわ!」
まぁ、言い分はわかる。
それに対してアル様は淡々と話し出す。
「クリスティーヌ嬢とセティーは同じ人間ではない。今までの時間の中で、私とセティーが友好な関係を築いてきた結果だ。それに、同じ候補者でも優劣はある。セティーは第1候補であなたは第2候補だ」
えっ!そうなの!?
私達に優劣はないと思ってた!
クリスティーヌ様は顔赤くして怒り、出口に向かって歩きだす。
「気分がすぐれませんので、これで失礼致します!」
帰っちゃった…。
アル様と2人になったけど、なんて言うか、居た堪れなくて気まずい。
「あの、アル様?クリスティーヌ様を怒らせてしまったけど、大丈夫なのかな?」
私の質問に対してアル様は笑顔で答える。
「アルベールが抗議してきても私達は悪いことをしてないから大丈夫だ。今まで有力候補として、差別なく扱い、アルベール邸にも訪問している。そこで、私との関係性を築けなかっただけだ。」
「それなら、良かった。私が軽々しく返事をしたから、アル様に嫌な思いをさせることになって、ごめんなさい。」
私はホッとしつつ、アル様に謝る。
「セティーが謝ることなんてないから大丈夫だよ」
後日アルベール家から抗議が出されたが、アル様の言った通り、アルベール家の抗議は棄却された。




