王妃教育①
お父様の話だと王妃教育が始まるのは12歳からということだ。
その間に何回か顔合わせがあるらしい。
すぐに始まるのではなくて、良かった。
それまでに必要そうな知識を叩きこまないと!
公爵令嬢として、何よりアル様の友人として悪い成績は残せない!
それから勉強の合間にお母様にお茶会に連れて行かれたり、王宮で顔合わせに呼ばれたりして2年が過ぎた。
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あっという間に12歳になった。
今日は王宮に呼ばれている。
王妃教育が始まる前の顔合わせらしい。
もう何度か顔合わせをしてるので、慣れてはいる。
ただ、今日からマリアが居ない。
マリアのお父様が外務大臣に昇進し、仕事も落ち着いてきたということで、マリアはついに候補者を降りた。
マリアと一緒なら王妃教育も心強かったんだけどなぁ。
でもマリアはアル様の婚約者という立場に興味ないし、仕方ないか。
ふと、自分のことを考える。
ファンの気持ちが大きいかもだけど、やっぱりアル様が好きだと思う。
だんだんゲームのアル様に外見が近づいてきて、会うと心臓が落ち着かない。
このまま、アル様と仲良くしたいと思ってる。
けど、婚約者になりたいかと言われると、わからない。
破滅エンドはやっぱり怖い。
婚約者になれば、アル様に嫌われる未来が来るんじゃないかと不安になる。
ただ今私が降りれば、クリスティーヌ様がアル様の婚約者になってしまう。
なんとなく、アル様の隣にクリスティーヌ様が並ぶのは納得出来ない。
ヒロインも嫌だけど、クリスティーヌ様はもっと嫌だ。
8歳の顔合わせから度々顔を合わせているけど、良い印象が全くない。
あの人だけは嫌だと心から思う。
だから、破滅エンドが怖くても、今は婚約候補として頑張ってクリスティーヌ様のライバルになることを選んだ。
そんな気持ちを胸に、王宮へ向かう。
王宮に着くとアル様が出迎えてくれた。
「セティーよく来てくれたね」
「アル様、お出迎えありがとうございます」
このまま、クリスティーヌ様も待つのかな?
「では行こうか」
「クリスティーヌ様はもうお着きなのですか?」
「いいや、まだだよ? 先に行っていようか」
「ここで、出迎えなくて良いのですか?」
私だけお出迎えって後が怖いなぁ。
「いいんじゃないかな。出迎えるのはメイド達の仕事だし。それよりセティー、敬語になってる」
「あっ!で、でもここ王宮ですし」
「だからこそだ。セティーは私の婚約者で仲も良いんだから大丈夫だよ」
本当に良いんだろうか。
でもアル様と仲良くしたい。
「う、うん。わかったわ。」
「うん!それで良い!」
その後すぐにクリスティーヌ様が到着し、現国王夫妻に挨拶し、明日から開始される王妃教育について説明を受ける。
予定が終わり、アル様は公務があるので解散になる。
「ちょっと!あなた!私が来る前にアルベルト様と一緒に居たってどういうことですの!?」
帰り際クリスティーヌ様に捕まった。
「私が少し早く着いたので、案内していただいただけですよ」
「まぁ、図々しいわ。さすが女狐の娘ね!」
なっ!?
女狐ってお母様のこと!?
許せない!
「女狐とは?私は人間ですが?クリスティーヌ様は視力が下がってしまったようですわ。お大事にしてくださいませ」
嫌味には嫌味で返そう。
「ふん、女狐は女狐よ!私のお母様は昔、思い人をあなたの母親に取られたのよ!だから絶対私はあなたなんかに負けませんわ!」
あっお茶会で聞いた話しか!
「ふふっお父様はお母様に一目惚れしてからずっとお母様に一途ですから。他の女性が入る隙はありませんもの、仕方ないですわ。でも、クリスティーヌ様のお母様はアルベール侯爵様との縁がありましたでしょう? アルベール夫妻の仲が良ければ、昔の恋心なんて、気にしないのではなくて?」
直訳すると、アンタの親、仲悪いの?って聞いてみた。
私も嫌味が上手くなったなぁ。
あんまり言うと完全に悪役だから気をつけなきゃだけど。
「うっうるさいですわ!そんなのあなたに関係ありません!」
クリスティーヌ様は顔を真っ赤にして叫ぶ
「とにかく!あなたなんかに負けませんわ!」
そう言って叫び、馬車に乗り込んでいく。
私も負けたくないから頑張ろう!
帰ったら予習だ!
やっと12歳…
先は長いです……




