深まる思い①
エルドside
リュカからドレスが仕上がったと連絡が来た。
予定通り、本当に2週間で仕上げてくれた。
「お越し頂きありがとうございます。さっそくドレスの確認をお願いします」
トルソーに着せられた3着のドレスを見る。
どれも母国のデザインの物で、国を出てまだ間も無いが、懐かしさを覚えた。
「どれも素晴らしいね」
「お気に召して頂きありがとうございます」
「本当に気に入ってもらわないといけないのは、セティー達だけどね。でもこの出来なら3人とも気に入ってくれると思うよ」
「お褒め頂きありがとうございます。デザイナーも喜びます」
リュカはドレスを箱に入れラッピングを手早く行う。
店主だというのに、こういった事も出来るのか。
「ん?その箱は?」
「あぁこちらですか」
リュカは箱を開けて中身を見せてくれる。
中にはマリアとエメリアのドレスと同じ色のアクセサリーが入っていた。
このアクセサリーもミーシアンの物だ。
「必要かと思いまして」
「そうだね。ミーシアンのドレスにはミーシアンのアクセサリーが無くてはね。そこまで気が回らなかった。ありがとう、助かるよ。セティーのドレスにも合うアクセサリーはあるかな?」
本当によく気が回るな。
セティーのドレスは白だから、アクセサリーの宝石は真珠かダイヤかな。
「はい。この2つのどちらかで如何でしょう?」
「これは真珠と…バイオレットサファイア。それにこれは、髪飾りじゃないか」
「はい。初めはドレスの色に合わせ、真珠を用意しましたが、セティー様は既にこの宝石と同じネックレスとピアスをお持ちでしたので、こちらも御用意しました」
「確かにセティーには、持ってきた献上品の中から、バイオレットサファイアのアクセサリーが下賜されたね」
「セティー様のことですから、ミーシアンとの友好と王家との仲を示す為、そちらを身につけられると思いまして」
「君は本当に凄い商人だね。そうだね、真珠も良いが、せっかく同じ宝石の髪飾りを用意してくれたんだ。こっちのバイオレットサファイアにしよう」
「ありがとうございます」
セティーがアクセサリーを下賜されたなんて、家の者以外は、親しい者しか居ないだろうに。
その親しい者の仲に入っている上に、そこで得た情報を確実に役立てている。
「ちなみに、このアクセサリーいつ買い付けたか聞いても良いかな?」
「ドレスをオーダーされた2日後です。オーダーされた日に、ミーシアンに滞在させている者に速達で手紙を出しましたので」
「ミーシアンに買い付けを行う者を配置していたのか。なるほど、それならこれ程の品を揃えられるというわけか」
「エルド様のお気に召す品の様で光栄です」
「セティーのはもちろん、3人に用意された石は最高級。それもこれ程の細工を行える職人は少ないからね。常に品薄なはずだよ」
「エルド様はアクセサリーにお詳しいのですね」
「詳しいという程ではないよ。 ただ自分の眼鏡をオーダーするのに、職人事情を知っているだけだよ」
「左様でしたか」
満足でリュカの店を出た。
「彼は父親とは別にミーシアンで取引している様ですね」
「そうだね。彼は三男だから商会は継げない。会計や店の経営については次男である兄が行っている様だし。家業に自分が有用である事を示さないといけないのだろう。自身で商人になるにも実績が必要だろうしね」
彼は商人として大成するだろう。
ガツガツとしない所が良い。
優しく、話しやすい雰囲気が、押し売感を無くしているのだろう。
あのアクセサリーは本来なら商人からグイグイと勧めるのが普通だのだが、私が気付かなかったら、セティー達本人に勧めていたのだろうな。
彼のおかげでより楽しみになったな。
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「本当にこれが、エルド様から贈られたドレスなの?」
「えぇ!そうです!お嬢様にピッタリなドレスですね!」
「こちらの髪飾りは王家から下賜されたアクセサリーにピッタリ合います」
「ドレスと合わせるとより素敵です!」
贈られてきたドレスも髪飾りも高価過ぎて驚いたわ。
この手触り…ミーシアンの最高級シルク…よね…。
やっぱりミーシアンのシルクは質が高いわ。
貴重で高価だから、結婚の時しか使えないじゃなかったかしら?
献上品の中にもシルクはあったけど、ドレスが1着仕立てられるかどうか、それもドレスのベースとなる部分のみ。
今目の前にあるような、全てシルクで仕立てたドレスなんて到底無理な量だったはずだわ。
私にミーシアンのシルクがフルに使われたドレスを贈って大丈夫なのかしら!?
それに、このアクセサリーに髪飾り…エルド様の瞳の色なのよね。
元々下賜されたアクセサリーを使うつもりだったけど、髪にはパールとブルーグレーの宝石を使おうと思っていたのよ。
それなら、アルの機嫌も保てるかもしれないから。
だけど、せっかく頂いたからには使わないと。
でもそうなると全身エルド様から頂いた品を身につける事になってしまうわ。
アルの婚約者としてそれはどうなのかと思う所はあるけど、他国の王子から友好の証でもらった物を無下にするわけにはいかないわよね。
うん。
今回だけ。
今回だけは頂いた品を使わせてもらって、次回はアルの色が入ったドレスを着よう。
パーティー当時。
王宮のパーティーにアルと参加する為、王宮の部屋を借りて支度をしたわ。
そしてアルが部屋に迎えに来てくれているのだけど…。
私を見たアルは目を見張り、何も言わないままその場に立ち尽くしているわ。
周りにいるメイド達もこの空気にハラハラとしている様子だわ。
「えっと…アル様?」
「あぁすまない。それがエルド殿から贈られたドレスか。よく似合っているよ。それと…ピアスとネックレスは良いとして、この髪飾りは?」
「あっこの髪飾りもエルド様から頂いた品なの」
「そうなのか…。それにしても、髪飾りまでバイオレットサファイアか…」
「その、全身エルド様から頂いた品ばかりになってしまったから、ほらブレスレットはアル様がプレゼントしてくれた物にしたの」
私の言葉にアルはハッとした表情をしたわ。
「すまない。気を使わせてしまったな。セティーがエルド殿の色のアクセサリーを身につけているのがどうもな。セティー自身が用意した物なら構わないが、これはエルド殿からの贈り物だからな」
やっぱり嫉妬されていたのね。
まぁ今の私の装いだと良い気持ちには
ならないわよね。
うん。
部屋の空気もまだ重いわ。
「今度のパーティーではブルーグレーのドレスとアクセサリーを身につけるわ」
「そうだな。そうしてくれると嬉しい。もちろん、そのドレスとアクセサリーは私がセティーに贈りたい」
「前にももらった物があるわ」
「私が贈りたいんだ。良いだろう?」
「ありがとう。じゃあ今度のパーティーでは、私は全身アル様に贈られた物を身につけられるのね」
「あぁ。全身私の色に染まってもらう」
部屋の空気が軽くなり、周りのメイド達もホッとした表情をしているわ。
アルの腕を取って、会場に向かうわ。
「セティー。今日は私と3回は踊ってもらう。今日のところはそれで良しとしよう」
「良いわよ。アル様となら何回でも」
それでアルの機嫌が良くなるならな、何度でも踊るわ。
会場に入場すると、会場中の注目を集めたわ。
アルと入場しているから、注目されるのはいつもの事だけど、今日はそれだけじゃないわね。
私の装いに驚いているのね。
マリアとエメリアも注目されただろうなぁ。
あっ2人ともいたわ。
マリアとエメリアの横にはヴィクトルとエルド様が居るわ。
エルド様はこちらを見ているけど、何処か遠くを見ているような感じだわ。
故郷が懐かしんでいるのかしら?
いつも通りアルとファーストダンスを踊ったわ。
そして次の曲もそのままアルと踊って、3曲目の音楽が始まる。
普段だったら3曲目が始まる前に私達は離れ、他の人と踊ったり、挨拶に行ったりするのだけど、今日はこのまま3曲目もアルと踊るわ。
3度目のダンスとなると周りから歓声が上がるわ。
2回以上踊るのは婚約者か結婚相手。
だから2回踊る人は居るけど、3回踊る人は中々居ないわ。
だから歓声が上がったのね。
3回目のダンスが終わって、少し息が上がったわ。
「ありがとうセティー。少し飲み物を飲んで休もう」
「えぇ賛成だわ。ソファに座って休みましょう」
飲み物を貰いアルと2人でソファに座って休んでいるとマリア達が来てくれたわ。
「アル様、セティー。ダンスお疲れ様」
「いつもより多く踊っていたので驚きました」
2人が着ているドレスも素敵だわ。
でもやっぱりミーシアンのシルクは私だけなのね。
「セティーさんドレス良くお似合いですよ!」
「ありがとう。エルド様のおかげね。2人もとても素敵よ」
「ねぇセティー。このドレスの生地ってミーシアンのシルクよね…」
「エルド様にそうだと言われたわけじゃないけど、絶対にそうだと思うわ」
「セティーにそんな貴重なシルクを…。アクセサリーも自身の瞳の色だし…」
やっぱり、マリアもそこ引っ掛かるわよね。
「やぁセティー。ドレス、着てくれてありがとう。良く似合っているよ」
「エルド様!この様な貴重な生地のドレス、ありがとうございます」
「あぁ。その生地の礼ならリュカに。彼がそのシルクを仕入れるツテを持っていたんだ。だが残念ながら、3人のドレスを仕立てる程の生地は無くてね。それでこの国時期王太子妃であるセティーのドレスに使わせてもらったんだ」
「そうだったの。ありがとう。このドレスとっても着心地が良いわ」
「それは良かった。さらに言うなら、髪飾りはバイオレットサファイアの他に真珠を薦めてくれてね。このネックレスとピアスを身に付けてくれるだろうと思ったからこちらを選んだよ」
「そうだったの」
良かった。
そうよね。
変な勘ぐりをしちゃう所だったわ。
「そう言うわけで、アルベルト殿。贈ったドレスとアクセサリーに他意はないので、私がセティーにダンスを申し込んでも問題ないだろうか」
「セティーは先ほどの私とのダンスで疲れているのだが。それにもう少し休んだら、私と挨拶周りをしなければならない」
一瞬アルとエルド様の間に冷たい空気が流れたような…。
「えっとエルド様。ダンスは挨拶周りが終わったらで良ければ、お願いしたいわ」
「それは良かった。もし疲れていれば無理にとは言わないから遠慮なく言ってほしい」
「えぇありがとう」
それからアルとの挨拶周りがひと段落して、エルド様が再度ダンスを誘ってくれて一曲踊る事にしたわ。




