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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
222/235

深まる仲

エルド様を迎えに王宮に。

と言いたいところだけど、エルド様が我が家に来てくれたわ。


今日の格好は孤児院へ行くから、簡素的なワンピースだしこの格好で王宮に行くのは躊躇われる、来てもらえて良かったわ。


「セティー。今日はよろしく」

「エルド様。こちらこそよろしくお願いします」


エルド様も私同様、簡素的なシャツにズボンという格好だわ。

簡素的だからこそ、エルド様自身の美しさが引き立つわね。


「セティーそのワンピース、よく似合ってるいるよ。簡素的だからこそ、セティー自身の美しさがより引き立つね」

「あっありがとうございます。エルド様も素敵ですよ」

「ハハありがとう」


馬車で王都を回ってから孤児院へ向かうわ。

馬車の中はエルド様とエルド様の護衛、私とメイドの4人。


「活気があるんだな」

「あそこのお店は肉料理が素晴らしいですよ。逆にあちらは魚料理が美味しいですよ」

「それは食べるのが楽しみだね。あちらは何かな?」

「あれは下水道の処理する施設です」

「下水処理!出来たら、この目で見たいな」

「後日であれば視察は大丈夫だと思いますが。あの、事前に言っておきますが、あの施設は臭いが強い場所もあります」

「平気だよ。下水なのだから臭いがあるのは、当然だよ。それに、それを言っては、そこで働く者に失礼だ。街の衛生管理に繋がる需要な役目なのだから、敬意を持って接すると約束する」

「ありがとうございます!そうなのです!彼等には誇りを持ってこの仕事をしてほしいのです!」


良かった。

数年前に下水道と処理施設が完成し、街は前よりも綺麗になって、水質も上がったわ。

問題だったのは処理施設で働いてくれる人の確保。

悪臭があるのではと、中々人が集まらなかったのよ。

それこそ、路上生活者にやらせれば良いなんて意見もあったわ。

でもそれでは、この仕事は下賤の者がする事だと認識されてしまう。

汚水を浄化して川や海に流す。

国中を流れる川や海の衛生を、ひいては国の衛生を担う仕事。

前世で言えば、公共施設なのだから、ここで働く人は公務員なのよ。


だから給金を高くして人を集めたけど、定着してもらうために福利厚生を手厚くするようアルに進言したわ。

人が嫌がる仕事こそ、給金や手当が高くないとね。


「なる程。それて福利厚生というのは?」

「まず週休2日。それに加えて、年間で自身の都合で休む事が出来る権利が15日。施設の近くに寮もありますが、家庭がある人には住宅手当も出してます。手当は他に危険手当を出してます。そして年に一度、職員とその家族は国が所有する保養所を使う事が出来る権利です」


前世では一般的な物だけど、この世界では珍しいものばかり。

マルヴィン家では浸透しつつあるけどね。


「住宅手当に危険手当、聞きなれない言葉だね」

「仕事柄、職場の近くに住む必要があります。そうなると家賃が高額になってしまうので、その補助目的です。働く人は絶対に疫病に罹らないとは言えません。危険と隣り合わせ、仕事には細心の注意が必要ですから」

「なるほど。休日が多いのに、保養所が必要な理由は?」

「保養所で休む事が出来ればリフレッシュやストレス解消に繋がります。家族も含め使えれば家庭の円満にも繋がりますし、職員の満足度が上がります。職員の満足度が上がれば、この仕事へのイメージも上がります」

「なるほど良く考えられているんだな。この福利厚生というのは、この国では当たり前の事なのだろうか?」

「いえ、残念ながら、一般的なものではないです」


他の仕事もせめて週休2日制になれば良いけど。


「素晴らしい就労条件だ。そしてそれを実行出来る。セティーは凄いな」

「え?」

「この福利厚生というものを考えたのはセティーだろ?」

「えぇそうですけど、どうして?」

「昨日そちらのメイドが同じ様な事を言っていたからね」

「申し訳ございません。昨日ご案内する際に、少しお話をしてしまいました」

「別に機密というわけではないのだからかまわないわ」

「庭にいた者が明日の休日は何処へ行こうかと話をしていてね。マルヴィン家の屋敷の者は定期的な休日があるのかと聞いたら、セティーが屋敷の者達全員が週に決まった日数を休める様にしてくれたと言っていたんだ」

「そうでしたか。我が家で働く人は週休2日制です。生憎決まった曜日ではないのですが」

「お嬢様!何度もお話ししましたが、この様な高待遇の職場はありませんよ!私としては、仕事が休みであっても、お嬢様がパーティーに出られるなら支度に参加したいのですが」

「お願いだからちゃんと休んでちょうだい。皆んな働き過ぎなのよ」

「セティーは良い主人だな」


後日、エルド様と下水処理施設を視察に行ったわ。

エルド様は技術とその運用、そして実際に働く人に仕事内容と働く環境について聞いていたわ。

視察を終えて「皆、仕事への士気がとても高い。良い職場の様だね」と言ってもらえたわ。


孤児院へ着くと、3人の子供が庭で泥団子を作って遊んでいたわ。


「セティー様だぁ!」

「わーい!」


私に気付いた子供達が駆け寄って来てくれたわ。


「久しぶりね。皆んな元気だった?」


私は膝を着いて、皆んなを抱きしめたわ。


「セティー様!あのね!私ね!」

「あっずるい!私が先に話すの!」

「じゅ•ん•ばん!フフ皆んな元気そうね。良かったわ」

「うん!皆んな元気だよ!」

「じゃあ皆んなの所へ行きましょう」

「「うん!」」


「セティー様、この人はだぁれ?」

「この方はエルド様よ。他の国の王子様なの」

「「王子様!!すごーい!!」」


「エルドだよ。よろしくね」


エルド様は子供達の目線までしゃがんで手を差し出したわ。


「わぁ!私はエミリー」

「私はアンっていうの!こっちの小さい子はトロワよ!」


子供達は嬉しそうにエルド様と握手するわ。


「あっエルド様。すいません」


子供達の手についていた泥がエルド様の手に付いてしまったわ。

私が汚れる事は構わないのだけど、エルド様はきっとそうじゃないはずよ。


「?何がかな?」

「お手に泥が…」

「これに謝っているなら気にしないでくれ。鍛錬の方がもっと汚れる。第一、セティーはもっと汚れてしまっているじゃないか」

「私は慣れてますから」

「それなら私も慣れているから気にしないで」


エルド様は優しく微笑んでくれたわ。


「ありがとうございます」


他の皆んなに挨拶を済ませ、私達は畑に向かったわ。

これから収穫と耕す作業があるのよ。


背の高い作物は小さい子達では届かないし、耕すには力がいる。

だからその作業は年長の子供か、私達の様な大人がやるの。


「セティーもこの作業をするの?」

「えぇ。皆んなに比べれば鍬の扱いは下手ですが、最初よりも板についてきたんですよ」

「私にも鍬を貸して。力作業は得意なんだ」


エルド様は近くにいた子に鍬を借り、一緒に畑を耕してくれたわ。

エルド様のおかげで予定よりも早く終わったわ。


「ありがとう!エルド王子様は王子なのに凄い!」

「お勉強の方が得意そうに見えるのに凄いね!」

「本当!こんな事してくれるの、セティー様の他にはアルベルト王子だけだったのに!」

「アルベルト殿が鍬を握ったのか!?」

「えぇ前に一緒に来た時に一度」


お付きの人や護衛の方に強く止められて、数分間だけどね。


そういえばエルド様の護衛は何も言わなかったし、むしろ一緒に耕してくれたわ。


「他に出来る事は無いかな?私も後ろに居るコイツも力仕事は得意なんだ」

「エルド様…人使いが荒いですよ。まぁやりますけど」


エルド様、護衛の人と旧知の仲みたいね。


「本当!それならあっちの畑作り手伝って!大きい石に岩もあって、進まなくて困ってるの!」

「わかった、任せて」


それから2時間、エルド様は畑作りを手伝ってくれたわ。


「エルド様、お疲れ様でした。ありがとうございます」

「役に立てた様なら良かった」


どうしよう。

エルド様凄く汚れてしまったわ。

ここで汚れるを落とせるけど、お湯じゃなくて、水浴びになるのよ。

着替えだってないし…。

我が家に寄ってもらおうかしら?

家に行けばお父様かお兄様の服があるし。


「エルド様、よれば我が家で汚れを落として下さい」

「いや、このまま馬車に乗っては、馬車の椅子を汚してしまう。裏の井戸で洗うから大丈夫だよ。着替えも持って来ているから」

「えっでも…」

「軍に所属しているから水浴びは慣れているよ。それに、セティーもここで洗っていくのだろう?」

「えぇ。そうですが…」

「じゃあお互いの綺麗になりに行こう。さぁ男の子達は私と洗いに行こう」

「では…お願いします。女の子は私と行きましょう」


「ねぇ王子、薪を使えば、お湯使えるよ」

「ありがとう平気だよ。この時期ならまだ水浴びも辛くないよ。冬は流石に辛いけど、皆んなだって耐えているだろう?」

「俺が小さい頃は凍えてたなぁ。今は冬でも少し冷たいぐらいの水で洗えるから楽だよ」

「セティー様が支援してくるおかげなんだって」

「そうか、セティーが」

「支援だけじゃないよ!仕事に就ける様に手伝ってくれる!」

「仕事に?」

「うん!仕事体験っていうのをやらせてくれるの!それで僕は来年成人したら工房に入れるんだよ!」

「体験でそれぞれの適性が見えるのか。(と簡単に言えるが、受け入れてくれる場を探すのも大変だろうに)さぁ洗えたら皆んなの所へ行こうか」


「エルド様、皆んなを洗ってくれた様で、ありがとうございます」

「大した事ではないよ。それよりセティー、そろそろ敬語はよしてほしいな。一緒に泥に塗れた仲じゃないか」

「ふふ、そうですね。いえ、そうね。ありがとう」


今日はエルド様の知らない一面を知れて、仲が深まった一日だったわ。

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