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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
214/235

女官選考②

「これより、それぞれ面談を行います」


貴族派の男爵令嬢は派閥関係なく、私を慕ってくれそうな上、しっかりと結果を残してくれたわ。

真面目な性格でスケジュール管理が上手そう。

同じ派閥の令嬢達も外交や社交能力に長けているわ。


まずは貴族派の男爵令嬢から。

「単刀直入に聞くわ。貴方は生家ではなく、私に忠誠を誓えますか?」

「私の家は貴族派ではありますが、力は強くなく、私は3番目の子。家への忠誠心はありません。お望みとあれば、今すぐにでも家とは絶縁致します」

「そこまでする必要はないわ。政治的に私の敵にならなければ良いの。貴方にはスケジュール管理など秘書的な役割をお願いしたいわ」

「有り難き光栄にございます。セレスティーヌ様に生涯お仕え致します」

「えぇよろしくお願いするわ」


他の令嬢達の面談も問題なく終え、残すはケイミー様のみとなったわ。


「貴方で最後ね。お掛けになって」

「…。お願い致しますわ」

「『あの中で最も高位貴族である私が、何故最後まで待たされなければならないのか』と思っているようね」

「っ!…そのそうな事は決して…「弁解はいいわ。不満を隠しきれないのは、淑女教育を十分に受けていないからかしら。それとも貴方の生来の性格かしらね」

「っ…」

「残念だけど貴方は採用なの」

「えっ。は?残念?」

「えぇ採用よ。残念ながら、縁故採用」

「っ!」


こんなハッキリと縁故採用だなんて言われると思っていなかったでしょうね。

苦虫を潰した様な顔をしているわ。


「こちらとしてはとても残念なの。貴方から忠誠を誓われても信用できない上に能力的に任せられる仕事はないのに」

「いくらなんでも失礼にも程がありますわ!」

「あら、なら自ら辞退してくれるかしら」

「っそれは…」

「こちらが貴方に求めるのは侯爵家の名前だけ。それ以外はいらない。貴方に実働は求めてないから、登城して来なくても良いわよ」

「そんな事を許されるはずがありませんわ!この事、皇太后陛下がお知りになったら…「皇太后陛下でしたら既に知っているわよ」

「えっ」


昨日皇太后陛下と王妃様との3人でお茶会があったの。

遠回しにケイミー様を採用する様圧を掛けられたから、うっかり試験結果を話してしまったの。

『この結果では採用は厳しいのですが…皇太后陛下の御親類ですし…名前だけの採用でしたら…』なんて、言ってあるのよ。


王妃様からの『なんて優しいのかしら。皇太后陛下の親類だからと気を使わなくて良いのですよ。政治バランスならもう1人、貴族派の方を採用すれば良いのですから。女官への給金は国民の血税から支払われるのですから、仕事が出来ない者へ渡されるなどあってはならない。そうですわよねぇ?皇太后陛下?』

という援護もあり、とーっても冷んやりとしたお茶会だったわ。


そしてお茶会の終わりに悩みに悩んだ結果、ケイミー様を書類上採用する事にすると皇太后陛下にお伝えしたの。


「頼みの綱の皇太后陛下はこの採用と貴方への処遇を黙認するそうよ」

「そんな…」

「登城されても今までと同じ行儀見習いの仕事しかないわ。まぁそれすらも爵位を笠に着て、他人に押し付けていたみたいだから、出来るかわからないけれど」

「何を根拠に仰いますの。私はきちんと仕事をしておりましたわ」

「メイド長からの評価と実際に見聞きした情報よ」

「実際に見聞きした…?」

「それについては機密があるので詳しくは教えないわ」


実際に見聞きしたのは、私じゃなくて、私についている影や護衛なんだけどね。


「最後に、使い物にならない貴方を、形だけでも採用してあげるのだから、邪魔はしないで。では下がってけっこうよ。明日から研修が始まるけど、出なくても良いわ」

「…失礼しますわ」


はぁ。

終わったわぁ。

仲良くする気のない人と話すの疲れるわ。

こんなに強気で相手を攻撃出来たのも昨日のお茶会のおかげ。

セッティングして、援護してくれた王妃様には感謝だわ。


翌日

彼女達が研修を受けている部屋をこっそり覗きにきたわ。

この部屋は2階から下の部屋が見える作りなのよ。


驚く事にケイミー様が居たのよ。

てっきり来ないものだと思っていたのに。


もしかして、実力で見返そうとしているのかしら?


「貴方方は行儀見習いの中で官僚試験を受け、合格しておりますが、今一度自身の知識量を知るためテストを行います」


5人はそれぞれ離れた場所に置かれたテーブルに座りテストを受けているわ。

官僚試験合格したなら解けるはず。

一昨年の試験内容と同じだし。


私の女官になる為に試験に合格後も勉強に励んでいたと聞いていたし、皆んなスラスラと解いているわ。

ケイミー様を除いて…。


「テストを回収します。採点はこの場で行いますので、その場でお待ち下さい」


ケイミー様以外の女性達は交流をしているわね。

良かった、貴族派の女性も馴染めているみたいね。


「皆んな身につけてくれたのね」


女性達は、白銀にアメジストがあしらわれた髪飾りやブローチを身につけているわ。

私の女官だという証に彼女達に贈ったのよ。


ケイミー様には渡さなかったわ。

私が信頼する女官ではないから。


こんな風にあからさまに区別するのは、こちらも良い気がしないのだけど、自身の努力で女官という役割を得た方とコネを使った人。

ちゃんと区別しないと、努力した人に悪いわ。

真面目にやった人が損をしてはいけないもの。



テストの結果が出るみたいね。


「結果を張り出します」

「っ…」


ケイミー様はテスト結果が振るわなかったようね。

どうやら官僚試験に合格する水準に届いていないみたい。


あれ?

たしかケイミー様が官僚試験を受けたのって一昨年よね?

今受けたテスト内容、2度目よね?

高得点が取れるはずなのに、どうして…。


まさか、一昨年の官僚試験に皇太后陛下の力が加わっていたりして…。

流石に…まさかよね…。


「一昨年の官僚試験と同じ内容でしたので、流石に皆さん高得点ですね」

「私は去年試験を受けたばかりでしたので、勉強した内容がまだ頭に残っていて良かったです」

「私達は3年前に受けましたの。その後も勉学に励んで良かったですわ」


今日の試験内容を受けた事あるのってケイミー様だけなのね。

研修を担当してくれる先生が呆れた様な顔をしているわ。


「貴方はこの後少しお話があります」

「はっはい…」


そろそろ登場しないとね。

私は拍手をしながら立ち上がって、下に居る皆に向かって話しかけたわ。


「テストご苦労様。皆優秀で嬉しいわ。皆を選んだ私の目に狂いは無かったようね」


「有り難きお言葉です」

「セレスティーヌ様。ありがとうございます」

「このブローチに恥じないよう精進致します」

「私を選んで下さった事、決して後悔はさせませんわ」


皆んな反応が良いわね。


「貴方達4人には期待しています。よく励んで下さいね」


そう4人。

ケイミーさんを除いた4人。


退室したら研修の先生から声を掛けられたわ。


「研修後にケイミー様とお話をしようと思います。御同席されますか?」

「そうですね。ご一緒させて頂きます」


与えられている部屋で書類に目を通して過ごす。

そろそろ隣国の王太子妃への贈り物を手配をしないと。

あそこの王太子妃は特に薔薇がお好きだから、薔薇に関する物が良いわね。

こうして他国の王子妃達と交流を持つのも私の仕事。

彼女達女官が手伝ってくれたら、楽になるわ。


「セレスティーヌ様。お時間です」

「ありがとうございます」


先生と共に入った部屋には顔色を悪くしたケイミー様が座っていたわ。


「セレスティーヌ様!?」

「今日は登城されるとは思いもしなかったわ」

「……。私が来てはいけないという事は無いはずですわ」

「そうね。来てはいけないという事はないわ。ただ実力で見返すつもりなのかと思ったのだけど、このような結果で不思議で仕方ないわ」


私はテスト後の研修結果に目を通す。

及第点に届かない出来だわ。

彼女、本当に行儀見習いで登城していたのかしら?

行儀見習いを行っていれば身につくスキルが身についていないようだわ。

他人に仕事を押し付けていたとはいえ、行儀は習ってきたはずなのに…。


「一昨年の合格は家の力かしら?」

「しっ知りませんわ」

「家の力では無く実力だと言うには、結果が伴っていないわね」

「一昨年の事ですので、忘れてしまっただけですわ」

「そう。では今後の話をしましょう。今の貴方では他の方と一緒に学ぶのは難しいと思うの」

「っ…。」


「実際テスト後の研修でも他の方の足を引っ張っていました」


先生もため息をついてから残念そうに言ったわ。


「私は精一杯やってますわ。伯爵夫人である貴方にとやかく言われたくありませんわ」

「黙りなさい。この方は数年前まで王妃様の女官をされていた立派なお方よ」

「…。そもそも彼女達が煽ってきたのですわ。セレスティーヌ様が差別されるから」

「皆に贈った飾りの事かしら。当然でしょう?彼女達は実力で私に選ばれたの。私からの信頼の証しであり、私の女官の証し。コネの貴方と区別しないと彼女達に悪いわ」

「そんな…」


「やはりコネだったのですね。古狸も困ったものです」


先生は溜息を付いて、呆れた顔をしたわ。

古狸って皇太后陛下の事よね。

きっと王妃様の女官時代に色々と迷惑を被ったのね。


「セレスティーヌ様、この方をどう教育しようか話し合う予定でしたがその必要はないかと思います」

「そうね。元々肩書きだけ与えて登城せずにいてくれるだけで良かったのよ。この方は元々頭数に数えていないから、業務には支障は出ないと思うわ。やはり女官としての素質が無いと言って家に帰ってもらおうかしら」


ケイミー様は私と先生のやり取りをプルプルと震えながら聞いているわ。


「それでは私の立場がありませんわ!」

「元々立場なんてありはしないではありませんか。甘い汁を啜ってきた者の子供は、これだからいけませんね。自分への評価が甘くて」

「なっ!?」


先生の馬鹿にした様な言葉に驚いているわ。

侯爵令嬢だし、皇太后陛下の親類だからこんな事言われた事でしょうね。


「貴方の家の者への評判は最悪ですよ。上のお兄様も仕事が出来ないようですし、兄妹揃っ試験に不正をしたのでしょうか」

「いっ言いがかりですわ!」

「では調査しましょう。本来なら貴方と貴方のお兄様の試験の答案は保管されているはずよ。誰かの手が加わって紛失されていない限り。まぁ紛失が明らかになったら大問題だけど」

「セレスティーヌ様、調査は私にお任せ下さい」

「えぇお願いします」


調査の結果、案の定ケイミー様とケイミー様のお兄様の答案用紙は紛失されていたわ。


これは事が大きくなるわね。

王妃様は嬉々として、皇太后陛下の生家出身者を排除出来るとして事を大きくする気でいるわ。


「昨日ねぇ。真っ赤になった古狸が来たのぉ」

「えっ皇太后陛下が!?大丈夫でしたか!?」


絶対御立腹よね。



「面白かったわよぉ。セティーちゃんにも見せたかったわぁ」

「そう…でしたか」


面白かったと言える王妃様、本当に凄いわ。


「そうだ明日は研修お休みでしょー?せっかくあの子がいる事だしぃお茶会をしましょー!」

「良いですね。では明日伺いますね」


翌日、王妃様、先生と中庭でお茶会をする。

先生は王妃様の女官だっただけあって王妃様と馬が合うようで会話が弾んだわ。

楽しくお茶会をしているとメイドや王妃様の女官達が慌ただしくし始めたわ。


「何かあったようですね」

「セティーちゃん座ってて大丈夫よぉ。きっと古狸が来たのよぉ」


その言葉通り皇太后陛下がやってきたわ。


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